うつ病について

うつ病ってどんな病気 ?

 うつ病とは、大野裕著の "「うつ」を治す" ( PHP 新書)によれば、

 気分が沈みこんで何かをする気力がなくなったり、周りのことに興味が持てなくなって人生が味気なく感じられるようになったりして、日常生活に支障が出てくるようになった状態。

をうつ病と定義しているようです。自分に当てはめてみると、確かにうなずける話ではあります。僕は映画を観るのが大好きなのですが、映画を観たいという気力がなくなっていましたし(それでも無理して観ていましたけれど。) 時々洗濯や掃除、炊事といったことが億劫でしょうがなくなりました。人生が味気なく感じられなくなってはいなかったようですが、とにかく体のエネルギーが無くなっている気はしていました。好きなロックアーティストの佐野元春のライブに行くのですら、行くときは億劫さがあった位です。実際行ってしまってコンサートを楽しみ始めると症状は一時的に改善されるのですが、後はエネルギーを余計消耗していたように思います。

 

何故うつ病は発病するのか、またその割合とは

 では、うつ病は何故発病するのでしょうか。一般的に多いのは外因的ストレス(たとえば職場異動や昇進、業務負担の増加、人間関係の悩みなど)が挙げられますが、別の病気と連動して発病することもあります。例えばガンの治療をしてそれが良好に向かっているときに発病をしてしまったりということもよくあることのようです。もちろん、更年期障害と連動して発病する場合もありますし、特に要因が存在しないのにもかかわらず発病する人もいます。また、季節性うつ病といって、特に北欧に多いようですが冬季の期間日光に当たることが極端に少なくなるために発病する場合もあります。つまり、うつ病を発病する原因ははっきりしていない、というのが今の医療の結論のようです。もちろん、研究者たちは色々研究を続けているようですが今のところ、うつ病発病のメカニズムは解明されていないといえます。ただ脳の機能に障害が発生しているというところまでは判明しているようです。

 また性別による差としては、女性のほうが男性に比べうつ病を発病する確率が高くなっています。その確率はおおよそ 2 倍です。これは前掲書によれば、

 女性が社会的に不利な立場におかれることが多かったり、社会的な支援がなく孤独な立場になりやすくなったりするなど社会心理的な要因が影響していると考えられる。

ことと、

 エストロゲンを初めとする性ホルモンの変化が強く影響していること。

がその要因のようです。女性の生理機能が男性に比べうつ病を発病しやすい要因であることに加え、社会的に不利な立場になりやすいことが確率の上昇を呼んでいるようです。

 どちらにしましても、うつ病は誰にでも発病する可能性のある病気ですからうつ病にかかったからと言って必要以上に自分を責めないようにしてください。うつ病になりますとどうしても自分を責めるようになりますので。

 うつ病の患者の人口に占める割合は、さまざまな資料によって多少異なっているのですが、おおよそ 10 人に 1 人はうつ病の症状を発病しているのではないかといわれています。何故正確な数値が出てこないかというと、うつ病を発病しているのにもかかわらず本人が気づかずに通院していないためや、うつ病であることは認識しているものの、精神科に通院することに抵抗感を感じきちんとした治療を受けていない人たちがかなり多くいるのではないかと思われるためです。

 

うつ病に特有の症状

 うつ病を発病するとさまざまな症状が現れてきますが、うつ・気分障害協会編の "「うつ」からの社会復帰ガイド" (岩波アクティブ新書)によれば身体的症状と、精神的症状の両面で以下のような症状が表れてきます。

  • 身体的症状
  • 睡眠障害(不眠、または睡眠過多)
  • 倦怠感・易疲労感
  • 便秘などの便通異常
  • 胃腸症状(食欲低下)・味覚を楽しめない
  • 性欲減退・月経異常
  • 頭痛・肩こり・肩腕症候群
  • 発汗・のぼせ・筋肉痛

などの症状が表れてきます。

  • 精神的症状
  • 何もしたくなくなる
  • おっくうになる
  • 何事にも興味を失う
  • 楽しいことがなくなる
  • いらいらする
  • 悲観的になる
  • 涙もろくなる
  • これまでできていたことができなくなる
  • 学習能力が落ちる
  • 失敗体験にこだわる
  • セックスへの興味がなくなる
  • 自殺を考える

などの症状です。

 以上の症状が現れてくるようであれば、うつ病を疑ってみる必要があるかもしれません。ただし、普通の状態ならば上記の症状が現れていても数日で元に戻ってくるものです。これらの症状が 2 週間以上続いているのなら、うつ病の可能性が大きいといえるでしょう。ただしこれらすべてのポイントに当てはまらないからといってうつ病でないとは言い切れません。いくつかのポイントが当てはまる時には、軽症うつ病という形で呼ばれるようです。僕の場合は最初は軽症うつ病というタイプであったように思います。でも、軽症うつ病も気をつけないとあっという間に症状が悪化します。まるで坂を転がる石のように。

 僕の場合に顕著だったのですが、「睡眠障害」と「気力の低下や意欲の減退」、「興味や喜びの喪失」を大きく感じました。それ以外には僕の場合、なんともいえない不安感が心の中で暴れていた感じも症状として出ていました。最終的には「人と話をしたくない」、「性欲全く無し」というところまで行ってしまいましたし、正常な判断すら下せない状態に陥りました。当然思考力は大幅低下です。何も考えたくなくなりました。自殺については微妙なところですが、全く考えなかったといえば嘘になります。明確に「死にたい」とは思いませんでしたが、とにかく「逃げたい」という思いは持っていたように思います。

 「睡眠障害」はかなり厳しく、明け方 3 時とか 4 時に必ず目覚めてしまうのですから辛いものがあります。目覚めてもそのまままた熟睡できればさほど苦にもならないのですが、大体その後は眠りが浅くなって熟睡感がないのですから朝の不愉快感といったらなんともいえないものがあります。また、これが続くことにより、脳の疲労感が解消されるはずがありません。最悪の場合この睡眠障害の苦痛が原因で自殺に追い込まれることすらあります。

 また、「気力の低下や意欲の減退」、「興味や喜びの喪失」については、前述のように僕は映画を観るのが趣味なのですが、これが全く観たくなくなる、といった症状が発生していました。また、映画を観ると言っても輸入盤 DVD での映画鑑賞ですから多少調子がいいときでも(正確に言うと波があるんです。うつ病には。)、ストーリーが全く理解できていないのです。うつの症状が出ていたときに観ていた映画の内容なんか、今になってみると全く思い出せないくらいですし、観たことによる心の満足感も弱かったように思います。健康の為、と思って行っていたサイクリングも気力が低下しているため走りたくないという気分で、すっかり行わなくなってしまいました。

 精神科の医院に行く前に不安感を感じていたときは、はっきり言ってどうしようもないくらい耐えられないものでした。何とかしなければと思い、思わず薬局で精神安定剤(処方箋なしで買えるもの)を探して買おうとしたくらいです。そのときにはメンタルクリニックに予約を入れていましたので何とか我慢をしてアルコールで気を紛らわせるという荒業に出てしまいました。その後メンタルクリニックに行って坑うつ剤のドグマチールと坑不安剤のワイパックスを処方されるようになってからは多少楽になりました。もっともこれが後で裏目に出てしまったわけですが。

 

うつ病と自殺について

 うつ病の怖いところは自殺と密接な関連があるということです。前述のように睡眠障害の苦痛を初めとして、うつ病による苦痛は耐えがたいものがあり、また生きる意欲自体が低下していることからも普通だったら考えもしない「生きていてもしょうがない」、「自分はこの世の中では必要のない人間なんだ」、などといった考えが次第に自分の思考を占めるようになり、最終的に自殺へと自分を導いてしまうことになります。様々な資料を見てみても自殺者の 7 - 8 割はうつ病、あるいは抑うつ状態に陥っていたのではないかといわれているようです。ですから、うつ病を発病した場合、早期の治療が必要となってきます。

 

うつ病の治療方法

 さて、うつ病になってしまったらどうしたらいいのでしょうか。基本的には、きちんとした休養を取ることと、精神科の医院、または心療内科で処方される薬を飲むことが治療として効果的です。

 まず大切なのがきちんと休養を取ることです。これは、うつ病が「心の病気」とは呼ばれているものの実のところ「脳の機能障害」により発生していることに起因します。脳の機能を元に戻すためには酷使された脳を休ませる必要があります。それも徹底的にです。あくまで個人的見解ではありますが、人には自然治癒力が備わっていて当然うつ病もその自然治癒力を使って治って行くのだろう、と思っています。しかしうつ病が脳の機能障害である為、この自然治癒力が相当弱くなっているのではないかと思われます。ですから徹底的に休むことが必要になってくると考えています。また、あえて徹底的に、という言葉を使ったのには訳があります。うつ病を発病しやすい人(絶対発病する人ではないことに注意)は生真面目で辛いことでも我慢して何かをこなしてしまうところがあり、メンタルクリニックなどの精神科医でうつ病と診断され、主治医から「仕事を控えるようにしてください。」といわれても実はそれができないことが多いからです。その結果症状はどんどん悪くなります。僕の場合、最初にメンタルクリニックを訪問してからドグマチールという坑うつ剤を出されたわけですが、この薬、実のところあまり坑うつ剤としては効き目の強いものではないのです。元々胃薬として開発していたら抑うつ気分の症状が改善されることが分かったので副作用も少ないことから坑うつ剤として使われることが多いのですが、「この薬を飲んで、少し仕事を手を抜けば治るだろう。」と頭では考えても実際には手を抜けず、薬の効果が弱いことや、上司のうつに対する無理解も手伝って徐々に悪くなっていったようです。最終的には精神状態が完全におかしくなり、会社を休職するに至りました。

 休養といってもなかなか難しいものがあります。それはうつ病を発病した人の環境に相当左右されるからです。大手の会社に勤めている人でしたら、収入減にはなりますし勤務評価の大きく下がりますが、会社を休職してしまったほうがいいように思われます。仕事を続けながらのうつ病の治療はかなり難しいといわざるを得ません。また、強引に人事に職場異動を願い出ると言うのも手です。周囲に配慮している状態ではないのですから他人に多少迷惑がかかってもかまわないと思います。うつから抜け出したときにその分周囲に恩返しすればいいのですから。中小企業の方や自営業の方はもっと複雑です。中小企業では休職=退職になる例も多いと聞きますし、自営業者の場合はそもそも休むこと自体ができない状態に置かれてしまいます。それでも出来るだけ仕事を減らす、つまり脳は使わないように悪い言葉かもしれませんが手を抜くことが必要ではないか、とは思います。休日は寝逃げをする、とか、昼食時間に昼寝を取るなどの手段は多少ですが、症状の緩和に役立ちます。 中小企業にお勤めの場合は、転職してしまう、というのもありだと思います。少なくともうつ病の発祥原因となった環境からは逃れられますから。(これは大手会社に勤められている人でも同じです。只、大手会社の場合は色々な職務が社内にありますから退職する前に職場異動を図った方が合理的かなとは思っています) 主婦の方でしたら手の抜ける家事は出来るだけ手を抜くことが必要でしょう。最近ではさまざまな家事代行サービスもありますし、そういったものを利用するのは一つの手だと思います。もう一つは家庭を顧みない旦那さんにメンタルクリニックに一緒に行ってもらうなどの手を使ってうつ病を理解してもらい家事業務を旦那さんに行なわせる、という方法もあります。そうすると、旦那さんも帰宅時間が早くなって結果として家族の絆が強くなるかもしれません。学生の方の場合はどうでしょう。学生の方もやはり社会人の方と同様に出来るだけストレスの元から離れることが重要かと思います。とは言っても受験勉強などがうつ病の原因になっている場合、そのストレスから逃れるのも難しいかと思います。せめてそのような場合でも生活習慣を見直して昼型の状態にするなどの行為は必要でしょう。確実なことではないのですが、朝、日光にちゃんと当たることでうつ病の治療にも効果があるようです。少なくとも僕の場合、朝、天気が良くて日光に当たっていると調子のよいことが多いようです。

 最終的に僕の場合、会社を 3 ヶ月休職することによって脳を完全に休ませたことと、強引に比較的業務負荷の少ない部署に異動させてもらったことが効果を出したようで、現在(2005年9月現在)は、坑うつ剤を服用しつつも、普通の生活を営んでおります。但し、会社の業務は極力制御していて、意識的に定時退社を行なっています。もちろん残業しないわけですから収入の大幅減は避けられませんが、健康には変えられません。実際残業代と言っても最近はどの会社もほとんどサービス残業ばかりですから無理して会社に忠誠を誓う必要もないとは思います。

 休養と同時に大切なのが坑うつ剤の服用です。これは、脳の故障を治す自然治癒力を高めるために絶対欠かせないものと考えています。多分本当に何もしないで休養をしていたら、坑うつ剤を服用しないでもうつ病って治るのではないかと考えていますが、相当の時間がかかりますし、その間の苦痛は耐えがたいものですから、坑うつ剤の服用は症状を緩和すると同時に自然治癒力を高めるためには欠かすことのできないものと考えます。

 物理的に見ますとうつ病になっている人の脳は、セロトニンやノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質が極端に不足している状態になっていると考えられています。別の説としては、これらを神経が受容する受容体が異常に増加しているというのもありますし、脳の海馬という部分が異常なほど縮小しているという説もあります。どちらにしても脳内のバランスが崩れた状態になってしまい、抑うつ状態を作り出していると考えられています。つまりうつ病は「脳の機能障害」により発生していることだけははっきりしているのです。

 そこでこの崩れたバランスを元に戻す必要があるのですが、そのバランスを元に戻すのに効果的なのが坑うつ薬というわけです。これら坑うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を増加させる作用を持っていると同時に増加しすぎた受容体を減らすという作用を持っています。

 坑うつ薬には三環系、四環系、SSRI (選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI (セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)など様々な種類があり、患者さんの症状によって医者から適切と思われる薬が処方されます。もし最初に処方された薬が体に合わなかったり、効果が出てこない場合は別の薬に変更されます。(ちなみに僕が途中まで服用していたドグマチールは、上記以外のその他構造式の坑うつ薬となっているそうで、ノルアドレナリンの増加に作用するようです。尚、休職後は SSRI の一つであるルボックスに変更になり、現在も服用中です。)

 また、前述のようにうつ病を発病した患者さんはたいていは睡眠障害が発生しますので、これを改善するために、睡眠効果の高い坑不安剤や坑うつ剤、そして睡眠薬を処方されることになります。しかしこれらの薬の中には、諸外国では覚せい剤と同様の扱いを受けているものもありますので、医者の処方どおりに正しく服用することが重要です。(睡眠薬のなかで有名なサイレースは諸外国では麻薬と同等の扱いを受けているそうですので、海外旅行をする際にはご注意ください。)

 坑うつ薬の効果はすぐに出てこないことにも注意しなければなりません。服用を開始してから効果が出てくるまでに最低でも 2 - 3 週間はかかるといわれていますから、「効果が出ないから」といって服用をやめないことが重要です。それと、その人の体質によって合う、合わないが発生してきます。主治医に診察に行くときは些細なことでも伝えるようにした方がいいです。できれば、簡単なメモでもいいですから毎日自分の状態を書き留めておいたほうが役に立つと思います。僕がこのサイトを立ち上げたとき、半分はメモ帳代わりにするつもりでした。

 

うつ病の治療期間

 うつ病はまた、風邪と違って治療期間に相当の期間を要することから、根気が必要になってきます。これもまた資料によっていろいろ異なるのですが治療期間が短い人でも 3 - 6 ヶ月かかっているようですし、長いと 1 - 2 年という場合もあります。(もちろんそれ以上という場合もよく聞く話です。) この治療期間の長さは患者に不安をもたらします。「いったいいつになったらうつ病が治るんだ ? 」という焦りを感じることでしょう。僕もそうでした。今でも薬を服用しているわけですから治ったわけでもありません。しかし、きちんと休養を取り、薬の服用を続けていれば時間はかかるにしろ寛解するといわれていますので、あせらずに治療を続けることが大切ではないかと思います。うつは「絶対に治ります。」 時間はかかりますけれど、それは忘れないようにしてください。

 

休職と復職について

 うつ病になってどうにもならなくなってしまったら休職するのが一番ですが、当然その場合休職期間中の収入減は免れません。これについてはここでは述べないこととします。ここで述べたいのは休職を決めたら、どうやって社会復帰まで体調を元に戻していくのか、復職後はどうしたらいいかを個人的体験を交えながら説明したいと思います。

 まず休職をする、と決めた(あるいは主治医や会社側が休職しろ、というかもしれません。)場合はまず主治医の診断書を会社に提出しましょう。理想は職場の上司ですが、うつに無理解な人も多いこともあってそれを受け取らないこともあるかもしれません。そういうときには人事に提出してしまうことです。提出をしてしまったらもうその診断書は有効ですから診断書に書かれている日付から会社を休むことができます。

 休職に入ったらまずはとにかく休むことです。休む、ということは自分の本能のままに生活をすることですから、一日中寝ていたってかまいません。とにかく体の欲求にしたがってください。外出する必要もありませんし、食欲がなかったら食べなくたってかまいません。

 しばらくそんな生活を続けていると、少しだけ何かをしたくなるようになってきます。それは本を読みたい、ということかもしれませんし、TV を見たい、ということかもしれません。あるいは外に出てみたい、ということかもしれません。そうなってきたら少しそういった欲求に従って行動してみることです。ここで注意してほしいのはあくまで少しだけ行なってみる、ということです。外に出たくなったから、といって旅行なんかに出かけては駄目です。まだそこまで回復はしていません。せいぜい近所を 20 分程度散歩する程度で十分です。

 そういったことを続けて行くと、少しずつやれることの時間が延びたりしてきます。散歩の例で行ったら 20 分が 30 分になり、40 分になり、といった具合にです。またこの辺りになると波はあるにしても少しずつ抑うつ状態から抜け出し始めているかと思います。ふと外を見回してみてください。もし、見慣れた景色が何か美しく感じられるようでしたら、症状は改善に向かっていると考えてもいいでしょう。

 ある程度落ち着いてきたら、復職に向けたリハビリを行なってみてください。僕個人で言えば、平日は毎日図書館に通い、とにかく本や新聞を読む、ということを行なっていました。最初は 10 時から 15 時までの時間から始め、最終的には 9 時半から 17 時半まで図書館通いを続けていました。更に途中主治医のアドバイスにより、通勤時リハビリ(つまり朝の通勤時に会社まで行って、そこから図書館に向かうというリハビリ)も追加になりました。これはうつ病のかかった方の職務によっても違いますので、自分でアレンジする必要があるとは思いますが、とにかく外出をするということは大切なリハビリになると思います。

 最終的には主治医の判断と、会社の産業医、人事の判断により復職ができるか否かが決まりますが、復職が決まると、調子を崩しがちです。社会人として復帰するというのは予想以上にストレスになっているのです。一時的ならば復職できると思いますが、そうでない場合は、復職が早いのかもしれません。この際には再度主治医とよく相談をしてください。あせっては駄目です。

 さて、復職が無事に決定しました。その後すぐに仕事が出来るかといったら答えは「いいえ。」です。最初の 1 ヶ月は仕事なんかできません。僕の体験談で言ったら、最初の 2 週間は人と会話をするだけでへとへとになっていました。いくら復職リハビリを行なっていたとしても、実社会ではそれ以上の負荷がかかります。最初の 1 - 2 ヶ月間は更なるリハビリ期間と考えた方がいいと思います。復職できたからといって最初からフルに仕事をしたらあっという間にうつ状態に陥ります。もちろん周囲に迷惑はかかりますが、既に休職したことで迷惑がかかってしまっているのですからあと 1 - 2 ヶ月ほど迷惑をかけても問題はないと考えるぐらいでいたほうがいいように思います。

 とにかく復職後は負荷をかけるにしても徐々に負荷を掛けていくということと、できましたら何でうつ病になってしまったのかを少しだけ考えて再発を起こさないようにするにはどうしたらいいかを考えてみるといいと思います。僕の場合は最近「自分は自分。人は人。」という当たり前のことがようやく身につき始めたようで、それが物の見方が少し変わったところかな、と思います。僕のうつ病発病の原因は様々にありますが、最大のポイントは「誰に対してもいい子であり続けようとした、特に親に対しては。自分の本音に嘘をついてまで。」という点だと思います。これが今は割り切れ始めているようです。最近は自分のしたいようにしてますし、仕事は手は抜いてませんが、無理もしないようにしています。残業代を出さないと課長が言っているのを逆手にとって本当に定時退社しております。以前でしたら周囲の目を気にしてだらだら 1 時間ぐらい会社にいたのですが、それを止めてしまいました。早く家に帰れるとそれだけゆとりが持てるからありがたいです。当然収入は大幅減ですが、計算してみると貯金をしても日常生活をしていけるだけは確保できているようなので、あまり気にならなくなりました。

 休職と復職で気をつけないといけないのが主治医の診断書に書かれた「 1 ヶ月の休養を要する」とか「 3 ヶ月の休養を要する」などのその期間です。絶対にその期間内でうつ病を治して職場復帰しなければならないということではありませんし、それに囚われると、むしろ症状が悪化します。主治医はちゃんと患者の状態を見ていますので、休職診断書は次々に書き換えられます。「 1 ヶ月の診断書を要す。」となっていて、1 ヵ月後に復職が無理と分かったら、再度診断書を書いてくれますので、その期間に囚われないようにしてください。慌てて復職すると返って症状は悪化して治療期間が延びます。

 

うつ病の再発とその予防

 さて、うつ病が厄介なのは前述のように治療期間が長期に渡ってしまうこともありますが、再発しやすい、というのも大きな問題として存在しています。前掲の "「うつ」を治す" によれば、

  • 一度うつ病を発病した人の再発率は 50 - 60%
  • 二回発病した後の再発率は 70%
  • 三回発病した後の再発率は 90%

と非常に高い再発率を示しています。もうこうなってくると風邪と同じくらい「うつ病を発病しない」ことのほうが困難になってきます。その為、再発率をどうやって低下させるかが非常に重要になってきます。

 結論から言いますと、うつ病が治って(安定して)からもしばらくの間、通院を行い、坑うつ薬の服用を続けることが再発率の低下につながります。同書のデータになりますと、

 うつ病から回復した後に坑うつ薬を飲み続けた場合、再発率が 12% 程度まで下がる。

と記されています。ですからうつ病の治療自体が時間がかかる上に、回復後も当分の間通院を続ける必要が出てくることになります。

 また、前述のようにうつ病になった原因を考えてそれを繰り返さないようにすることも大切でしょう。この辺は認知療法の世界に入ってきますが、様は物の見方をちょっとだけ変えてみませんか、ということです。特に会社員でうつ病を発病した人は一度会社と自分の関係について考えみてください。会社のための自分なのか、自分のために会社があるのか。前者の考え方のままだと多分うつ病を再発する可能性が高くなります。人が何のために働くのかといえば、"「うつ」からの社会復帰ガイド"によれぱ

  • 働いて収入を得て、自立した生活を営むため(経済的目的)。
  • 自分の人生の目標を、働くことによって実現させるため(自己実現の目的)。
  • 仕事をした結果が、社会に役立っている満足感を得るため(社会参加の目的)。

ということなのですが、最初の項目は別にして、自己実現と社会参加については仕事を通じずともできることなのです。そのことを少しだけでいいから考えてみませんか。

 

うつ病患者の増加について

 筒井末春著の「うつと自殺」(集英社新書刊)によれば、

 世界保健機関( WHO )は、日常の社会生活に支障をきたして死亡することのある病気の中で、これまで第五位ぐらいだったうつ病が 2020 年には第二位になるだろうと予測して、警鐘を鳴らしている。

 とかなりシリアスな記載をしています。現在は健常者から色眼鏡で見られることの多いうつ病ですが、そのうち冗談ではすまない状態に陥ることが明らかになっています。ですからうつ病になってしまい、周囲から色眼鏡で見られていたとしても、あまり気にしないようにしたほうがいいと思います。いずれそういう人たちもうつ病を発病する可能性があるのですから。

 

最後に

 うつ病はよく「心の風邪」だと言われます。これは、誰にでも発病する可能性がある、と言う点では適切な言葉だとは思いますが、かえってうつ病の苦しさや、死と密接にかかわりある病気である、と言う点、そして治療に長期間かかると言う点が抜け落ちていってしまっているきらいがあります。うつ病は「心の風邪」と言うより「脳の機能障害であり、それが人間の行動や感情に左右される部分だから心の病気として呼ばれている。」とでも言ったほうが正しいのではないかと思います。治療に一番大事なのは適切な休養と、正しい坑うつ剤、好不安剤の服用です。うつ病は時間はかかるにしても必ず寛解する病気です。そして、うつ病を体験した人は、物事の考え方、人生の生き方が変わってきます。自分ですらほんの少しですが、何か以前とは違ってきているようですし、回復しつつある脳が以前よりも猛回転で動いているようです。つまり頭がよくなってしまっている気がします。ですからうつ病を後ろ向きに捉えることなく前向きに捉えられるようにしていきたいものです。いや、うつ病から回復した人たちは、この経験を前向きに捕らえられるようになります。病気のときは本当に死にたくなるくらい辛い病気ですが、治ってみれば、人生の幅が広がりますので、うつ病で悩んでいる人は、まず休息をしっかりとって坑うつ剤をきちんと飲んで病気からの回復を目指してほしいと切に願います。

2005年9月19日記