佐野元春 & THE COYOTE BAND 全国ツアー「禅BEAT 2018」 イムズホール

2018年11月9日

 佐野元春が1年に2回の全国ツアーを開催したのは、だいぶ前だったと思う。ここ数年は、冬から春にかけての全国ツアーと、初冬のビルボードライブ、年末のクリスマスライブというのがパターンだった。今回、夏ごろに秋の全国ツアーが開催と聞いて、ちょっと驚いた記憶がある。しかし、そのツアーの詳細が分かるにつれ、ちょっと不安に感じていた。福岡やその他地域でのライブの開催が平日が多いことと、福岡はキャパの小さいイムズホールでの開催、ということについてである。とりあえず、ファンクラブ先行でチケットを予約したが、チケットが確保できるか、少し心配だった。最終的には指定席券の確保ができ、ホッとしていた。

 当日は会社を年休取得で予定を確保した。この週の前半には重い仕事があり、それが終わるまでライブのことを気にかけている余裕がなかった。重い仕事も蹴りがつき、ようやくライブに気持ちを切り替えられていた。夕方に自宅を出て、福岡天神のイムズホールに足を向けた。イムズホールは、土岐麻子のライブで夏に訪れている。小さい会場だったと記憶しているが、どれだけ客を詰め込むのか、気になっていた。

イムズホール入り口

 イムズホールに到着すると、グッズの先行販売をしていたので、キーホルダーを買った。それからしばらくすると、開場したので、早速入場する。周りを見渡すと、指定席はおおよそ240席程度、スタンディングも200名程度かな、といったところである。スタンディングは整理番号順なので、早くに埋まっていったが、指定席は会社帰りの年配客も多く、埋まるのは結構遅かった。それでも指定席は満席になったと思う。スタンディングエリアの一部は女性専用になっているのが、目新しいところだった。

 開演時間ほぼ定刻にTHE COYOTE BANDのメンバーがステージに上がり、そして佐野元春も登場した。そして1曲目が演奏されたが、なんか既視感を感じていた。

本編

  1. 境界線
  2. 君が気高い孤独なら
  3. ポーラスタア
  4. 私の太陽
  5. 紅い月
  6. いつかの君
  7. 世界は慈悲を待っている
  8. La Vita é Bella
  9. 空港待合室
  10. 新しい雨
  11. 純恋(すみれ)
  12. ライナス&ルーシー(inst)(渡辺シュンスケ & THE COYOTE BAND)
  13. 禅ビート
  14. 優しい闇
  15. 新しい航海
  16. レインガール
  17. インディビジュアリスト

 1曲目は、「MANIJU TOUR」と同じく「境界線」だった。「境界線」が終わると、佐野元春は「今晩は」と挨拶する。そして、またも既視感のある「君が気高い孤独なら」が演奏される。続けて「ポーラスタア」と、THE COYOTE BANDとのコラボ曲が続く。

 短いMCで「福岡に来れて嬉しいです」と話した佐野元春は、続けて「私の太陽」、「紅い月」を歌い上げる。残念なことに、P.A.の状態が悪いのか、元春のマイクで時々ハウリングが発生する。目立つものではないが、気にしだすと、気になるところである。

 「いつかの君」の演奏が終わると、「歌詞を知っている人がいたら一緒に歌ってください」と言って、「世界は慈悲を待っている」を演奏した。ここまで、ずっと「MANIJU TOUR」と同じ選曲のような気がするが、この辺りから脳内麻薬物質が溢れ出し、その辺の細かいことはどうでもよくなっていた。佐野元春の歌う世界の中に取り込まれていった。

 「La Vita é Bella」、「空港待合室」と続けて演奏し、ようやく「MANIJU」から「新しい雨」を唄いだす。「純恋(すみれ)」の前には、「この曲は10代、20代の若い世代に向けて書きました。10代、20代の世代はいますか?」とMCをした。その中で本当は10代、20代ではないのに手を挙げているファンがいて、「それは心の10代でしょう?」と佐野元春渾身のツッコミをしていた。

 「THE COYOTE BANDではインストルメンタル曲も演奏しますが。」とMCを始めたので、「THE COYOTE BANDにインストルメンタル曲なんかないだろう?」と思っていたら、なんとキーボードの渡辺シュンスケのソロプロジェクトSchroeder-Headzのカバー曲、「ライナス&ルーシー」をTHE COYOTE BANDで演奏し、その中でメンバー紹介もするという。「ライナス&ルーシー」はスヌーピー(というかスヌーピーが出ている漫画「ピーナッツ」)のテーマ曲でおなじみだが、まさか佐野元春のライブで聴けるとは思わなかった。この瞬間だけ、佐野元春 & THE COYOTE BANDから渡辺シュンスケ & THE COYOTE BANDに切り替わっていた。

 バンドメンバーは、ギターが深沼元昭と藤田顕、キーボードが渡辺シュンスケ、ベースは高桑圭、ドラムは小松シゲル、パーカッションはスパムという布陣である。「ライナス&ルーシー」をそれぞれ見せ場を作りながら演奏したので、ご機嫌な気分になった。

 「ライナス&ルーシー」が派手だったので、「禅ビート」は少し地味に感じられた。そして、「優しい闇」で、THE COYOTE BANDとのコラボ曲は終了。前回のライブでも演奏された「新しい航海」と、MCで「知っている人がいたら一緒に歌ってください」と話しした「レインガール」を歌っていた。本編最後は、久しぶりの「インディビジュアリスト」。しかもベースはTHE HOBO KING BANDとのアレンジのものである。かなり盛り上がったエンディングだった。

 その他、MCでは「スタンディングの一部エリアを女性専用にしました。女性は背が低い人が多いから、ステージが見えないことが多いことに対しての配慮です。もし、この施策が気に入ったら、いいねをしてください。インターネットなら直で来ますから」と笑わしたり、「佐野くん、ライブは昔の曲を演奏していれば、ファンは喜ぶんだよ。と言われたが、THE COYOTE BANDは進化中のバンドなんだ」という話もあった。

 ライブ本編はわずか1時間半の演奏だった。佐野元春のライブにしてはとても短い。平日のスタンディング収納を配慮したのだろうか。「インディビジュアリスト」が演奏終了後、メンバーは一旦ステージを去る。佐野元春は、お尻を振りながらステージを後にした。当然、ファンからはアンコールが起こる。

アンコール

  1. ヤァ! ソウルボーイ
  2. 水上バスに乗って
  3. アンジェリーナ

 ファンの声援に後押しされ、佐野元春 & THE COYOTE BANDは再びステージに立った。そして、「ヤァ! ソウルボーイ」を演奏する。そして、「僕は東京の下町生まれなんですけれど、水上バスが好きなんです。飛行機よりも新幹線よりも。ここ福岡には水上バスはある?」という話をし出した。ファンからは「中洲にある」という回答が出てきたが、「中洲」が聞き取れなかったみたいで、「福岡にも水上バスはあるんだね。」という話から「水上バスに乗って」を歌い出した。最後は「アンジェリーナ」だったが、「ロックは僕らの世代とみんなの世代、それを結びつける虹のようなものであると思っている。僕の世代とみんなの世代、それを結びつける曲を歌いたい。」という話をして、ライブ最後の曲を歌い出した。

 ライブが終わったのは20:50。19:01にライブが開始したので、わずか1時間50分という短いライブだった。選曲はほとんど「MANIJU TOUR」と変わりなく、「MANIJU TOUR」のエッセンスを濃縮したようなライブだったと思う。11月だったので、少し早いクリスマスソングが聞けるかという期待もしていたが、それはなかった。ただ、最初は既視感からノリの悪かったライブが途中からノリが良くなったのは、自分の抱えていた鬱屈感が消えていったことと無関係ではないと思っている。