STAR TREK VI:THE UNDISCOVERED COUNTRY(輸入盤DVD)

邦題:スタートレックVI:未知の世界

基本データ

STAR TREK VI:THE UNDISCOVERED COUNTRY DVDジャケット
  • レーベル:PARAMOUNT HOME ENTERTAINMENT
  • 制作年度:1991年
  • 上演時間:113分
  • 監督:ニコラス・メイヤー
  • 出演:ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー
  • 画面:2.00:1/アナモルフィック
  • 音声:DOLBY DIGITAL 5.1ch-EX 英語 / DOLBY DIGITAL 2ch 英語、フランス語
  • 字幕:英語

あらすじ

 惑星連邦の宿敵だったクリンゴンのエネルギーを採掘する衛星プラクシスが事故により半壊をしてしまい、クリンゴンの情勢が大幅に悪化。後 50 年以内に種族滅亡の危機に陥る。クリンゴンの宰相ゴルコンは、危機を乗り越える為、ヴァルカン人のミスター・スポックとコンタクトを取り、惑星連邦との和平の道をとろうと模索を始める。これに対し惑星連邦側も基本的には同意をし、その和平交渉のエスコート役として、カーク艦長以下エンタープライズのクルーの派遣を決める。しかし、カーク艦長はかつて息子をクリンゴンに殺されたことを恨んでおり(「スタートレック 3 : ミスター・スポックを探せ ! 」を参照のこと)、渋々任務に赴く。

 

 クリンゴンの中にもゴルコン宰相のやり方に反発しているものもいて、最初の会食会では険悪な雰囲気になってしまう。そんな中、エンタープライズから光子魚雷がゴルコン宰相の乗るクリンゴン艦に発射され、その隙に乗じて連邦の宇宙服を着た者たちが、ゴルコン宰相の暗殺を謀ってしまう。カーク艦長と、ドクター・マッコイは、ゴルコン宰相を助けようと奮闘するが空しくもゴルコン宰相はこの世を去ってしまい、彼ら二人はゴルコン宰相の暗殺犯としてクリンゴンに囚われ、犯罪者として極寒の惑星ルラ・ペンテに送り込まれてしまう。

 

 エンタープライズでは、ミスター・スポックの指揮下の元、事件の真相を探り始めるが、それは意外な事実へと発展していくこととなった...。

感想

 「スタートレック : ザ・オリジナル・シリーズ」の映画版第六作目にして最終作となるのが本作です。本来でしたら、前作「スタートレック 5 : 新たなる未知へ」が興行的に不振だった為、映画版製作の打ち切りが予定されていたのですが、ちょうど「スタートレック」生誕 25 周年という節目の年のイベントとして再度制作が再開されることとなりました。

 

 これまでのシリーズと違って、作品の印象は当時 TV で人気を博していた「新スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション」の良質のエピソードを観ているような気になってきます。「スタートレック」本来の未知の宇宙を探索するというテーマはないものの、ドラマ性がかなり高く、映画版のシリーズとしても高い評価を上げられると思います。

 

 劇場公開時は、ちょうどソ連の崩壊を始めとした東西冷戦の終結をモチーフにしたという触れ込みでプロモーションされていたように思いますが、今回鑑賞してみて改めて感じたのは、サブタイトル通りの「未知の世界」へのチャレンジがメインテーマだったのではないかと思いいます。

 

 「未知の世界」は映画の中でゴルコン宰相が「未来」の言い換えの言葉として使われています。これはカーク艦長に特に顕著に現れています。

 

 「スタートレック 3 : ミスター・スポックを探せ!」でカーク艦長はクリンゴン人に自分の息子を殺されてしまったために、クリンゴン人を信頼できないでいます。むしろ恨んでいると言った方が正しいかもしれません。しかし、ゴルコン宰相がそういうカーク艦長の心情を知りながらも死ぬ間際に彼に和平への道を託すことで少しずつ彼の心が変わり始めます。過去に固執することなく、新しい世界を構築していくこと。これは国家間だけではなく、個人の心のありようとしても重要なことではないでしょうか。これこそが人類の進歩に関わってくると考えられるからです。

 

 これはまた、ミスター・スポックにおいても同じことが言えます。ミスター・スポックの場合はこれまでの作品でも少しずつヴァルカン人と人間のハーフとしての自分を受け入れ始めていく過程を描いていましたが、この作品においては、ヴァルカン人の論理感を重視しながらも人間としての感情をも統合しているように見えます。ヴァルカン人が作品中、論理を重視し、感情を意識的に排除しているという設定から考えれば、彼自身も「未知の世界」にたどり着いたのかもしれません。

 

 一方、この「未知の世界」を快く思わない者たちもいるわけで、実際の事件の真相はその者たちの謀略だったことが後に判明するのですが、彼らの考え方はいわゆる「保守」的考え方です。現状に満足し、世界の、個人の心の変化を恐れる者たちが、今回の物語のアンチテーゼとして描かれています。

 

 特に興味深いのがミスター・スポックが目にかけていた生粋のヴァルカン人・ヴァレリスがその保守派の一人だったという点です。彼女は論理的な思考のみで「未知の世界」を否定してしまうのですが、人間の意志の力、世界をより良くしようとしようとする力を否定しているようで印象的なキャラクターになっています。ちなみにこのヴァレリスを演じているのは、人気 TV ドラマ「セックス & ザ・シティ」にも出演中のキム・キャトラル嬢です。

 

 残念ながらこの映画で描かれたような希望に満ちた「未知の世界」は現実世界には訪れず、東西冷戦の代わりにテロリズムの横行する世界となってしまいましたが、「スタートレック」の基本方針である「楽観的な未来感」は捨てたくはないものだな、と思います。

 

 物語にはあまり絡んできませんが、ジョージ・タケイ氏扮するミスター・スールー(日本語吹き替え版ではミスター・加藤)が宇宙艦エクセルシオール号の艦長となり、エンタープライズの危機のときに助けに参上するシーンは日本人として溜飲が下がる思いで、拍手喝采といったところです。

 

 映像クォリティは制作年度を考えるとまずまずといったところですが意外と暗いシーンが多く、少し観づらいかも知れません。また、多少オリジナルマスターのフィルムにゴミがついているようで、それが目立つシーンもあります。なお、この作品は劇場公開時には 2.39:1 のシネマスコープサイズで上映されていましたが、この DVD 版では、ワイド TV に配慮したのか、2.00:1 という画面比率の変更が行われています。作品自体はスーパー 35 という方式で撮影されているので劇場公開版よりも上下の映像領域が増えたものと思われます。音響はオリジナルはDOLBY STEREO 方式ではありますが前に DOLBY DIGITAL 5.1ch のテスト用として何本かプリントが作られたという話を聞いた事があるので、オリジナルマスターは 5.1ch なのかもしれません。それにしても(ジャケットにはクレジットがありませんが) DOLBY DIGITAL 5.1ch-EX のサウンド効果はすさまじく、DTS にも引けをとらないものと思われます。下手な映画館で観るよりインパクトがあります。

 

 なお、この作品、色々ゲストが出演しておりまして、宇宙艦エクセルシオール号の下士官の一人としてクリスチャン・スレーターが出てきますし(画面が暗くてよく分からないのですが)、「新スタートレック」の人気キャラクターの一人、クリンゴン人のウォーフを演じているマイケル・ドーンがミスター・ウォーフの祖父役で出演、挙句に当時制作の予定すらなかった「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」のオドー役を演じているレネ・オバージョーノー(メル・ギブソン主演、ローランド・エメリッヒ監督の「パトリオットにも出演」)と色々面白い脇役が出てきますのでマニアならニヤッとすることでしょう。

 

映画とは関係ない個人的な追記

 2005 年 5 月 25 日、ジョージ・タケイ氏の自叙伝出版を記念して東京でサイン会が開催されました。たまたま都合がついたので、書籍を買い求め、本にサインをしてもらい、しかも握手をしながら写真を撮ってもらったりと、個人的にはとても印象深いイベントとなりました。僕が「この作品が好きなんですよ」と日本語で話しかけると「キャプテン・スールー、私も好きです。」気さくに会話をしていただいたのもいい思い出です。(ジョージ・タケイ氏は日系アメリカ人で多少は日本語が話せます。)

 

2005年8月7日