ビリー・リンの永遠の一日(4K UHD/iTunes Movies)/Apple TVで観た映画のレビュー

ビリー・リンの永遠の一日(4K UHD/iTunes Movies)

No Image 原題 BILLY LYNN’S LONG HALFTIME WALK
レーベル SONY PICTURES HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2016年
上演時間 113分
監督 アン・リー
出演 ジョー・アルウィン、クリステン・スチュワート、クリス・タッカー
画面 1.85:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

 2004年のイラク戦争中に、敵の攻撃を受け負傷した軍曹を助けるために、ビリー・リンは決死の行動を起こし、敵を倒していく。その模様はアメリカ国内に報道され、ビリー・リンは一躍アメリカの英雄になる。そして、ビリー・リンが所属する部隊ブラボー隊の仲間とともに、アメリカ国内で凱旋ツアーを回ることになる。ビリーは、姉から軍を離れるように忠告を受けるが、ビリー自身はその件で迷いを生じていた。ビリーたちブラボー隊の活躍は映画化の話まで持ち上がっていた。そして、テキサスのアメリカンフットボールの試合のハーフタイムの時に、ブラボー隊は凱旋を果たすために、試合が始まる前からスタジアムに入り込んでいた。ビリーの迷いは心の葛藤を生み出していたが、スタジアムで起こる出来事が、ビリーの心の決心を決めさせる。

レビュー

 アカデミー賞に2度輝く台湾出身のアン・リー監督が、ハイ・フレーム・レートで撮影した戦争の影響を受けたビリー・リンの長い一日を描いた映画が、この「ビリー・リンの永遠の一日」です。製作費は4千万ドルもかかっていますが、北米での興行収入はわずか百万ドルしか稼げず、興行収入的に失敗したのみならず、Rotten Tomatoesの映画批評家、観客の評価もそれぞれ44%、41%とかなり低い評価になっている作品であります。

 この「ビリー・リンの永遠の一日」が評価されなかったのは、イラク戦争をモチーフにしながら、戦闘シーンはほどんとなく、イラク戦争で仲間の危機を救ったビリー・リンとその仲間であるブラボー隊が、アメリカ国内で英雄視され、凱旋ツアーを敢行していく中での、テキサスで感謝祭に開催されるアメリカン・フットボールのハーフタイム・ショーに出演するための一日を物語の起伏なく描いているところに、要因があるように思います。

 基本はビリーの姉が「軍から離れるように」とアドバイスをしているにもかかわらず、ビリーがそれに迷いを生じている過程を、ずっと描いていますが、ビリーの心がどこにあるのかがよくわからないところがあります。ビリーがブラボー隊とともにイラクに戻りたいのか、軍を離れて国内勤務か除隊をするかが最後の最後まで明確には描かれず、その葛藤が微妙すぎて、感情移入しづらいところが話の弱点ではないかなと思います。

 周囲の人々はビリーたちブラボー隊を英雄視し、映画化まで話は大きくなりますが、当のブラボー隊はそれに浮かれるわけでもなく、戦場とアメリカ国内の平和さとが際立って描かれているのが、この映画の特徴かと思います。ただ、イラクの戦闘シーンが描かれるのは意外と僅かなので、その対比のバランスが崩れていると感じるところであります。

 時間にして僅かなイラクの戦闘シーンですが、ここは結構リアルに描かれていて、緊迫感を生み出しているところがあります。物語上ではビリーの回想シーンとして描かれているので、ビリーがPTSDにかかっているのではないかと思わせるところがあります。それがビリーの苦悩につながっていくわけでありますが、ビリーが最後に選択した行為が、結局何も変わらないという点で、物語の唐突感を感じるところでもあります。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。映画のマスターデータ自体が4Kなので、映像はネイティブ4Kでの収録になっています。システム上HDR10で鑑賞しましたが、ネイティブ4Kならではの高精細感と、HDR10での高コントラストの映像は魅力的であります。映画自体は120fpsで収録されているようですが、iTunes Moviesで配信されているこの作品は、通常の24fpsでの収録のようです。音響はDOLBY ATMOSで収録されていますが、戦闘シーンやスタジアムの観客の歓声シーンでは三次元サラウンドが効果を発揮しているものの、それ以外だと思ったほどイマーシヴなサラウンドになっておらず、ちょっと期待外れの部分があると思います。

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