bayfm78「開局15年記念スペシャル・ライブ」

bayfm78「開局15年記念スペシャル・ライブ」

2004年8月15日

千葉の FM 局 bayfm78 が開局してからすでに 15 年が経過するという。その話を聞いたとき「もうそんなに時が経過したのか」という想いだった。僕が大学生だったころ、学校の校舎が千葉のほうに会ったこともあってよく bayfm78 は聴いていたものである。最近は住んでいる場所柄、受信状態があまりよくないこともあってほとんど聞いていないが、なんだか懐かしさがこみ上げてきた。

そんな bayfm78 が開局 15 年を記念して無料の野外イベントを開催するというニュースを耳にした。そしてそれに僕の敬愛する佐野元春も出演するという情報もつかんだ。この 4 月以降精神的に参っていて、ついには軽〜中程度のうつ病と診断されてしまった僕としては、佐野元春の 2004 年のアクションだけが励ましになっていた。前回「月夜を往け」のビデオクリップの撮影にまで参加してしまった僕である。今回もぜひ観に行きたいと思い、参加募集に申し込むと運良く当選してしまった。ちょうど新作「THE SUN」がリリースされた直後ということもあって、どの曲をプレイしてくれるのか興味はつきなかった。

イベント自体は元春以外にも KREVA や東京60WATTS、スキマスイッチが出演することになっていた。多分元春の出演は最後だろうし、今年の猛暑を考えると他のバンドのプレイは飛ばして元春のだけ観れればいいや、という気分で今回のイベントに望もうとしていた。だから開場時間が 11:30 と聞いても(開演は 14:00 )、「 16:00 」頃会場につけばいいな、と思っていた。当然ステージからはかなり後方になってしまうがそれでも何万人というイベントではないため( 5,000 人)、何とかステージは見えるのではないかと思っていた。

当日、深夜から雨が降り出した。天気予報で数日前から「 15 日は雨になりそうです。」と言っていたが、それが本当になってしまった。どうも僕と元春の天気の相性はよくないらしい。前回の元春の野外ライブ(それは 10 年前の The Heartland の解散コンサートとなった “Land Ho!” という横浜スタジアムでのライブだったが)のときも大雨でひどい目にあったし、普通のホールライブのときでも雨に降られることが多い。ざっと考えても 6 – 7 割は雨ではなかっただろうか。今回も例に漏れず雨である。やむなく、レインコートなどの雨具の準備を始めた。

昼前に自宅を出発。途中寄り道をしてから一路会場である千葉ポートパークへと足を向けた。会場に一番近い京葉線の千葉みなと駅までおよそ 1 時間の旅である。

千葉みなと駅に到着して驚いた。駅前には何もない! のである。ところどころ建物が建ってはいるがほとんど空き地だった。なんだか地方の駅に降り立った気分だった。遥か彼方にタワーがそびえているのが見える。多分そこが会場である千葉ポートパークだろう。とぼとぼそのタワーを目指して歩き始めた。

およそ 10 分ほど歩くと会場に到着。野外ライブなので会場の音が会場外でも聞こえてくる。なんとなく心がワクワクしてくるのを感じた。会場は、どこかの市民公園といった感じで、一面芝生が敷かれていた。地面のぬかるみもなく、涼しいこと以外はまずまずの状況だった。ちょうど時間的には KREVA という歌手の演奏が始まるところだった。どういう歌手か初めは知らなかったが、最近ヒット曲を連発している KICK THE CAN CREW のメンバーの一人なのだという。そういわれればなんとなく曲調も似ている気がする。およそ 30 分ほどの演奏を楽しませてもらった。しかし、周囲を見てみるといまいちノリが悪い。ここにいる観客は、この KREVA のファンではないらしい。

僕の割り当てられたブロックは、ちょうどステージ中央の若干後方のあたりだった。決して見やすい場所とはいえないが、見づらいというわけでもない。むしろ音響的にはミキサー席に近いため、最高に近いサウンドが聞けて幸いといえる場所だった。

KREVA の演奏が終わると、ステージの準備が始まった。いよいよ佐野元春 and THE HOBO KING BAND の登場である。

ステージ上に佐野元春 and THE HOBO KING BAND が登場してくると大歓声が上がる。観客のほとんどは元春ファンのようである。ステージにはいつものメンバーに加え、見慣れぬパーカッショニストと、ホーンセクションが登場してきた。誰なんだ? そして一曲目が始まった。

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
 一曲目は、2001 年の “Rock & Soul Review” でも一曲目を飾った “ナポレオンフィッシュと泳ぐ日”。アレンジはシングル “君の魂 大事な魂” のカップリングに収録されているヴァージョンと同じである。ただ、パーカッションとホーンセクションが加わったことで音に厚みが出ている。このアレンジは個人的にも好きなアレンジなのでニコニコしながら手拍子を取る。元春は赤いシャツを着て、サングラス(か眼鏡。遠くて確認ができなかった)をかけてアグレッシヴに体を動かし歌っている。ここ数年ファンの間で心配されている声の調子も悪くないようだ。
99 ブルース
 続いてシングル “月夜を往け” のカップリングとして収録されたバージョンでの “99ブルース”。これもホーンが入ったことで多少 “Cafe Bohemia Meeting” 時のアレンジが入っているようにも感じる。歌詞の途中の「得意げな顔をしたこの国のリーダー」という一説を聞くと、つい小泉首相の顔を思い浮かべてしまう。かなり痛烈な皮肉だと思うのだが。
ヤングブラッズ
 短い MC の後、演奏され始めた曲はまったく想像もつかなかった。なんだか夏の終わりを連想させる切ない感じのアレンジ。あえて言うならばかつて元春がプロデュースしたインディペンデントユニット、ブルーベルズの “ブルーベルズの’サマー'” という曲を彷彿させるアレンジだった。元春が歌いだして驚いた。そこで歌いだされたのは紛れもなく、僕が元春のファンになるきっかけとなった “ヤングブラッズ” だったからだ。かつて元春はこの曲を評して「新年の曲だ」といってオリジナルに近いアレンジで歌っていたからショックといってもいいくらいである。しかしこのアレンジのおかけでこのライブの意図が「夏の終わり」をテーマにしているのではないか、という思いを抱くことができた。(蛇足だが、ここまでアレンジが変わると、もう誰も「 “ヤングブラッズ” はスタイル・カウンシルの “シャウト・トウ・ザ・トップ” のパクリ」と言わないだろう。)
ハートビート
 この曲もなんとなく夏の終わりを連想させる。割とオリジナルに近いアレンジでなんだか久しぶりに聴いたような気がする。アウトローの元春のハーモニカの演奏を聴いたのも久しぶりなので感慨にふけってしまう。
観覧車の夜
 「新しいアルバムが出ました。」と言う元春の MC の後に演奏されたのが “観覧車の夜”。前回のツアー( “THE MILK JAM TOUR” )でもすでに “フィッシュ” と言う仮タイトルで演奏されていた曲ではあるが、今回きちんと CD 化されたということと、ホーンセクションの効果が最大限発揮されていたため、その曲の完成度はかなり高いものになっていたと思う。この曲のジャムセッション版を聴いてみたいものだな、と思わせる出来だった。(なんとなく 10 月からのツアーではやりそうな気もする。)
DIG
 続けてニューアルバムからは “DIG”。こちらもノリのいい曲である。この曲も前回のツアーですでに “ブロンズの山羊” と言う仮タイトルで演奏されていて、すでにそのときから気に入っていた曲だったのだが、改めて今回聞いて心地よくなってしまった。歌の途中で入る「ウーララ」というコーラスが気分をどんどんハイにさせていく。この曲を最後にライブ本編は終了。バンドのメンバーたちはステージから引き上げてしまった。観客はアンコールを求める拍手を続けている。ただ野外ということもあってこの拍手の迫力が弱い感じを受ける。通常のコンサートホールだとホール内の反響音でものすごいことになるのだが…。

アンコール

アンジェリーナ
 まもなく再登場してきたメンバーが演奏したのはおなじみ “アンジェリーナ”。元春のデビュー曲である。この辺はここ数年定番となっているのでいつものごとく手拍子をとり、一緒に歌ったりする。
デトロイトメドレー
 続けて演奏されたのは、これまた久しぶりの “デトロイトメドレー”。僕がファンになった頃はアンコールの定番だった曲だがいつの間にか演奏されなくなっていたので思わずニコニコしてしまう。また、この曲はツアーによっては “ハッピーマン” と一緒にされたり、”悲しきRadio” の一部分として演奏されたりと、この曲単体で演奏されることが少ないため、単体で聴く事ができてとても嬉しくなってしまう。元春もあまりお約束事を知らないファンもいることを考慮して演奏の途中、「僕が “I love You” といったら皆さん “You love Me” と返してほしいんだ。」と丁寧な説明までしてしまう始末である。もちろん会場はヒートアップしていた。
サムデイ
 「 “デトロイトメドレー” まで演奏したらもう後演奏する曲はないだろう」と思っていたら、僕にとっては久しぶりの “サムデイ” がラストを飾った。しかし昔はこの曲にかなり思い入れがあったものだが、今の僕には残念ながら今ひとつ思い入れを感じない。それはきっと僕が成長してしまったことと無関係ではないだろう。といって永久にこの曲に思い入れがなくなったかというとそうではないと思う。いつか、また思い入れを持つ時が来るのではないかと思っている。そんなことを考えながらやはりサビでは一緒に「サムデイ!」と歌っている自分がいた。

ライブの終了は 18:25 だった。およそ 1 時間 10 分ほど演奏していたことになる。それでも当初の予定終了時刻からは 30 分近く遅くなっていた。多分午前中の雨の影響でステージ進行がずれていたのだろう。その後再びとぼとぼと千葉みなと駅まで引き返し、京葉線に乗った。

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