Mank/マンク(DOLBY VISION/Netflix)/Apple TVで観た映画のレビュー

Mank/マンク(DOLBY VISION/Netflix)

No Image 原題 MANK
レーベル Netflix
制作年度 2020年
上演時間 132分
監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、チャールズ・ダンス
画面 2.20:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語
字幕 日本語

あらすじ

 1930年代のハリウッドは、1929年の世界大恐慌の影響を受けて、どこの映画会社も経営に苦しんでいた。アルコール依存症で脚本家のハーマン・マンキウィッツ、愛称マンクはその中でも脚本を描いていた。映画会社のRKOが経営危機に陥り、若きオーソン・ウェルズが自身の最終編集権を握った映画制作を行うことになり、マンクに脚本を依頼する。しかし、その期日は最初90日の予定が60日に縮められていた。マンクはその仕事を受ける前に交通事故に遭い、足を負傷して動けなかったため、二人の女性に看護と脚本の口述筆記を頼むことにしていた。マンクは脚本に取り掛かるがなかなか筆は進まず、周囲に心配をかける。そして、アルコールによって睡眠をとるようになり、ようやく脚本は書き上げられる。その脚本は実在の新聞王ハーストをモデルにしたものと周囲は受け取り、この脚本では問題だと不安がる。オーソン・ウェルズも同じ考えだった。しかし、マンクは映画の脚本家としてのクレジットを要求し、脚本にこだわり続ける。

レビュー

 Netflixオリジナル映画で、監督であるデヴィッド・フィンチャーが実の父が書いた脚本を映像化した、オーソン・ウェルズ製作の名作映画「市民ケーン」の制作舞台裏を、「市民ケーン」の脚本家であるハーマン・マンキウィッツ、愛称マンクの視点から描いた作品が、この「Mank/マンク」です。映画評論家からの評価は高いですが、一般観客からは並みの水準の評価を得ている作品であります。Netflixでの配信前には一部劇場で公開もされています。

 この映画の特徴はといえば、名作映画として名高いオーソン・ウェルズ製作の「市民ケーン」の制作舞台裏を、脚本家であるマンクの視点から描いているところにあると思います。「市民ケーン」といえば、オーソン・ウェルズの名が上がるほど著名な映画ではありますが、その脚本に関わっていたマンクの視点から1930年台のハリウッドを描くことで、大恐慌後のハリウッドがどのような状態であったかが、よくわかるようになっています。

 1930年代のハリウッドはどこも世界大恐慌の煽りを受け、経営難に陥っています。その中でマンクがどのように行動し、同業者とどう関わっていくかが、「市民ケーン」の脚本執筆とともに回想シーンとして描かれているのが印象的です。ハリウッドのあるカリフォルニア州も経済立て直しのため、州知事選挙にハリウッドで働く従業員たちが関わっていたりします。その州知事選挙にマンクが関わらないのが、彼の独特の立ち位置にあると言えるでしょう。その代わりにアルコール依存症にあるマンクは、その依存のためにスタジオからは嫌われている状況にあります。

 物語はマンクが「市民ケーン」の脚本を書き上げ、最終的にはアカデミー賞を得るところまで描かれますが、「市民ケーン」の主役が実在の新聞王のハーストをモデルにしたものと言われ、ハーストからのクレームが来るという心配を周囲にされます。それでもマンクはその心配に屈せず、オーソン・ウェルズとの契約では脚本家としてクレジットされないとなっていたものを、クレジットさせるという契約に修正するところまで行きます。それだけマンクはこの作品に熱意を持っていたものと思われます。「市民ケーン」はアカデミー賞では脚本賞のみの受賞になりますが、マンクの執念が成し遂げたものになっていると思います。

 この映画が特徴的なのはストーリーだけでなく、映像的にも特徴的です。あえてモノクロ映像で描写をしていますし、昔の映画っぽくするためか、フィルムの切り替えタイミングを知らせるウォーター・マークが定期的に映画の中に現れます。それでも物語としてはモノクロであるが故のノスタルジー的な印象を与えるものになっており、1930年台のハリウッドを描写するのに適していると思われます。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。前述のようにモノクロ映像ではありますが、HDRの効果は抜群で、モノクロの濃淡がしっかり出ております。また、4Kの解像度はモノクロでも健在で、細部までしっかり描き込まれている映像に仕上がっています。IMDbではマスターデータは6Kとのことですので、その効果は十分に発揮していると言えるでしょう。音響はDOLBY DIGITAL 5.1chではありますが、DOLBY SURROUNDモードで再生すると、結構イマーシヴな音響効果を発揮しています。ドラマなので派手な演出はないのですが、自動車の移動音やセリフのエコー感などで立体音響を感じ取ることができます。

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