KILL BILL VOLUME 2/キル・ビル Vol.2/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

KILL BILL VOLUME 2

KILL BILL VOLUME 2 DVDジャケット 邦題 キル・ビル Vol.2
レーベル MIRAMAX HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2004年
上演時間 137分
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、マイケル・マドセン
ダリル・ハンナ
画面 2.35:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語 / DTS 5.1ch 英語
DOLBY DIGITAL 2.0ch フランス語
字幕 英語、スペイン語、日本語、韓国語、中国語

あらすじ

 ブライドの復讐は続いていた。次のターゲットは、暗殺団のメンバーでビル以外、唯一の男であったバドだった。しかしバドに返り討ちにあってしまったブライドは、棺桶に生き埋めにされてしまう。絶体絶命の状況の中、彼女はかつての師匠、パイ・メイとの修行を思い出し、窮地に一生を得る。一方バドはハットリ・ハンゾウの刀をエルに売りつけようとするが、エルの策略に引っかかってしまい、死んでしまう。その瞬間ブライドが現れエルとの死闘が始まり、最終的には彼女の目をつぶすことで勝利を得る。次々と復讐を果たしていったブライドの最後の目標はビルだったが、ビルの元には死んだはずの彼女の娘が生きていた…。

レビュー

 タランティーノの監督 4 作目「キル・ビル」の後半部分に当たるのが今作「キル・ビル Vol.2」です。前編に当たる「キル・ビル Vol.1」では 70 年代東映映画や香港カンフー映画へのオマージュを描いておりましたが、今作では、メインはマカロニ・ウェスタンにオマージュをささげています。残念ながらマカロニ・ウェスタンは未見と言ってもいいくらいですのであまりピンと来ない部分も多いのですが、ロバート・ロドリゲス監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・メキシコ : デスペラード」でもマカロニ・ウエスタン風の雰囲気を描いていましたので、感覚的には多少理解できるものとなっています。また、今回もシーンとしては少ないものの香港カンフー映画(もしかしたら中国カンフー映画かもしれませんが)へのオマージュをささげておりますのでこちらは分かりやすい感触を得ました。

 ブライドがパイ・メイで修行するシーンはやはり僕的には初期のジャッキー・チェンの映画「スネーキー・モンキー : 蛇拳」だとか「ドランクン・モンキー : 酔拳」を思い出してしまいます。前編ほどではないにしろ、カンフー映画に対するオマージュは強いかなと思います。特に前編でもそうでしたが、ブルース・リーの影響は強く残っていると思われます。ブライドが生き埋めにされた棺桶から脱出するのに使った近距離からのパワーのあるパンチは、ブルース・リーの「ワン・インチ・パンチ」そのものです。つまり相手から 2.5cm しか離れていない距離からパンチを繰り出し相手を倒してしまうというブルース・リーの格闘家としてのすごさを物語るエピソードですが、これを物語に使ったとしか思えません。(なお、この「ワン・インチ・パンチ」の映像は前編のレビューでも言及した「BLUCE LEE : A WARRIOR’S JOURNEY」に収録されていて、この作品は日本では「燃えよドラゴン : 2 枚組特別版」の DVD 特典映像に収録されていますから、興味のある方はどうぞ。)

 更にビルを演じていたのがデヴィッド・キャラダインというのもブルース・リー的という気はします。なぜかといえば、ブルース・リーがハリウッドで役者を志していたころ、いくつかのストーリーを考えていたのですが、当時の人種差別の中で彼の構想が生かされることは無く、彼の死後その構想が 70 年代中盤以降 TV ドラマ化や映画化されたときに主役を演じていたのが、デヴィッド・キャラダインその人だったからです。元々ビル役はウォーレン・ベイティを考えていたらしいですが、ベイティから断られた結果、タランティーノのオタクぶりに拍車がかかってしまったのではないかと思います。

 前編はどちらかというとストーリーは二の次だったように思えるのですが、後編である今作はストーリーが際立ってきているような気がします。それは、前編でいくつか提示されていた謎が解明されていくということと、マカロニ・ウエスタン風の作風にしたことでその印象が強くなってしまったのかもしれません。

 前作で提示されていた謎は、何故ブライドは組織を抜けようとしたのかということと、ブライドのお腹の子は死んだのか生きているのか、ということでブライドのお腹の子が今作のキーポイントであったと思います。このお腹の中の子が生きていてどこにいたか、そして何でブライドが組織を抜けようとしたかという理由を知って驚きました。それとビルとブライドの関係も今作で明かされたことですが、これはあまり驚きの無いところでした。また、エルとビルの関係は単にビルが金髪女性が好きという身も蓋も無い設定で片付けられてしまったので唖然としてしまいました。逆に疑問に残ってしまったところは、何故暗殺団は解散してしまったのかという点と、ビルとバドが兄弟だったのに仲たがいしてしまった点です。タランティーノとしては語るべき必要性の無い設定だったのだろうと思うのですが、今作みたいにストーリーが立って来ると、返って気になります。

 前編のレビューで「主要登場人物の大半が女性だ。」と書きましたが、今作も実はそのイメージが強いです。確かにブライドが復讐する相手は今回は男性二人に女性一人ですが、復讐相手の一人、マイケル・マドセン扮するバドはダリル・ハンナ扮するエルに毒蛇で殺されてしまいますから、ブライド自身は復讐の手を掛けていませんし、ブライドが復讐の手を下したのはエルとビルだけになってしまいます。更に彼女がビルの元を離れようと決めたときに出てくる相手の殺し屋も女性と、ちょっと意図的とも言えるのではないかなと思っています。エンドクレジットでも相変わらず梶芽衣子の「恨み節」が流れていますことですし。

 確かこの作品が映画館で上映されたときに、配給会社は「ラブ・ストーリー」である、と強調していたように思いますが、実際の印象としてはラブ・ストーリーではないと思います。むしろ、ブライドの娘に対する愛情が際立っていたように思います。ビルとブライドの愛情関係はさほど強い感じを受けませんでした。多分これは前編がスプラッターシーンの多用で客が引いてしまうことを恐れた配給会社の宣伝戦略だと思います。しかし、そうは言っても前編と後編でこれだけ作品の印象が違うと、当初の構想どおりに 1 本にまとまっていたらどうなっていたことでしょうか。ストーリーの前半と後半が全く異なっている映画といえば「フロム・ダスク・ティル・ドーン」を思い出しますが、これはタランティーノと、ロバート・ロドリゲスがそれぞれ半分ずつ演出していたので当然ともいえますが、今作はタランティーノ一人ですべて演出していたわけですから、1 本にまとまっていたら多分混乱してしまうでしょうね。DVD で何回か観ないと分からないような作品になってしまう恐れのある作品だと思います。言い換えれば一般向けの映画ではないのだと思います。それを一般向けに売り出そうとした結果、宣伝を使って悪い言い方をすれば騙したのではないかと思います。好意的に解釈しても「ブライドの自分の子に対する愛情の物語」といった取り方をすべきでしょうね。

 映像はマカロニ・ウェスタンのイメージどおり荒野のシーンが印象的です。また、モノクロシーンが前編と比較すると、回想シーン以外でも度々使われていて効果を挙げています。音響は今回も DTS 5.1ch でか鑑賞しましたが、前編と比べると自然なサウンドフィールドを形成していたように感じます。劇画調ではないと言うことです。今回サウンドトラックに、ロバート・ロドリゲスが参加しているのも作品のイメージ作りに効果を挙げている様な気がします。

 尚この DVD の特典映像に削除されたシーンとして、ビルと中国の町の悪党との対決シーンが収録されていますが、何でこれを切ってしまったかな、という気がします。これが残っているとビルのキャラクターがもう少し立ったような気がするのですが。

 トリビアですが、ブライドが結婚式を挙げる小さな教会のピアノマンを演じているのはなんと、サミュエル・L.ジャクソン。タランティーノ映画の常連でもある彼がこんな端役を演じていたのは驚きです。実際本編では気づかなくて、エンドクレジットで気づいたくらいですから。

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