『フューリー』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|シャーマンの車内で“生き延びる術”を学ぶ【HDR10 / Dolby Atmos】
第二次世界大戦末期、連合軍戦車兵の過酷な実戦を真正面から描いたデヴィッド・エアー監督作。ドイツの強力なティーガー戦車に対し、劣勢のM4シャーマンで挑んだ兵士たちの葛藤と連帯を、泥と鉄にまみれた質感で再現する。ネイティブ4K HDR10の荒々しい映像とDolby Atmosの重低域が、観る者を戦車内へ閉じ込める決定版パッケージ。
『フューリー』4K UHD Blu-ray 基本仕様
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邦題 | フューリー |
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原題 | FURY | |
レーベル | Sony Pictures Home Entertainment | |
制作年度 | 2014年(劇場公開版) | |
上映時間 | 134分(劇場公開版) | |
監督 | デヴィッド・エアー | |
出演 | ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン | |
画面 | 2.40:1 / 4K / HDR10 | |
音声 | Dolby Atmos 英語 / DTS-HD MA 5.1ch 英語 / Dolby Digital 5.1ch 多言語 | |
字幕 | 多言語(日本語含む) | |
リージョン | UHD=リージョンフリー, Blu-ray=リージョンA,B,C | |
パッケージ | UHD 1枚(本編 + 特典)+ BD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
1945年4月。米軍シャーマン戦車“フューリー”だけが出撃部隊で生還するが、副操縦士を失う。タイプ要員上がりの新兵ノーマンが補充されるも、戦場では一挙一秒が命取り。やがて“フューリー”は単独で要衝の十字路を死守する任務に就く。
あらすじ(詳細)
ドン(ブラッド・ピット)率いる“フューリー”は戦闘で副操縦士を喪失。補充されたノーマン(ローガン・ラーマン)は入隊8週の実戦未経験で、引き金を引くことすらためらう。
街の掃討、ティーガー戦車との遭遇、味方部隊の壊滅を経て、彼らには「田舎の十字路での敵進撃阻止」という任務が下る。機動不能となった“フューリー”は孤立無援。装甲の内で価値観がぶつかり、外では迫るSS部隊。ノーマンは恐怖と責任の狭間で、兵士としての選択を迫られる。
見どころとテーマ
- “装甲の内側”のドラマ: 戦車という閉鎖空間で、階級・信仰・諧謔が衝突し、チームが研磨される。
- 弱兵器で戦う戦術: 機動・遮蔽・同時射撃——シャーマンの不利を補う“現実的な”手順が充実。
- ノーマンの通過儀礼: 撃てない新兵が、倫理と生存の狭間で“撃つ理由”を見出す。
- 乾いた演出: 情緒に寄り過ぎず、泥と鉄の質感で戦闘を描くドキュメンタリー調の手触り。
- 小休止の落差: 市街の“食卓”シークエンスが、直後の地獄を際立たせるコントラストとして機能。
おすすめシーン(チャプター目安)
- 市街戦の掃討: 新兵ノーマンが初めて“撃つ”場面。
- ティーガー戦との一騎打ち: シャーマン4輌が次々撃破される緊迫の攻防。
- 十字路の籠城戦: 孤立した“フューリー”がSS部隊を迎え撃つクライマックス。
映像レビュー【4K / HDR10】
35mm撮影→4K仕上げのネイティブ4K。砲塔の鋳肌、泥にまみれた足回り、被弾で剥がれる塗装のレイヤーまで情報量が濃い。HDR10はピークこそ抑制的だが、曇天下の拡散光や炎の輝度差、夜間の火線のハイライトで効く。カラーは意図的にデサチュレートされ、土・油・血のトーンが現実味を増幅。被写界深度の浅いクローズアップでは皮膚の質感も粒立つ。
映像スコア:90点
音響レビュー【Dolby Atmos】
主砲発射の圧と装填動作の金属音、履帯の擦過、頭上を掠める航空機まで上下・前後の移動が滑らか。弾着はLFEが深く沈み、砲塔内部の密閉感は残響で表現。市街地の反響、森の吸音といった空間差分も明瞭で、終盤の十字路攻防は全チャンネル総動員のデモ級。対話はセンターにクリアに定位し、BGMは控えめで効果音主導のミックス。
音響スコア:92点
仕様メモ
- UHDディスクはリージョンフリー、日本語字幕・吹替収録。
- プレイヤーを日本地域設定にすれば、メニューや字幕が自動的に日本語化。
- BDディスクも同梱、特典映像を含む。
総評
“強さ”ではなく“生存”を描く戦車映画の佳作。車内の人間ドラマと車外の戦術描写が噛み合い、ブラッド・ピットの静かな威圧と、ラーマンの成長弧が芯を通す。ネイティブ4K × HDR10の重たい画と、Atmosの圧倒的な空間再現で、ホームシネマの“戦車体験”を更新する決定版だ。
総合スコア:91点
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