スター・トレック I:ディレクターズ・エディション(4K UHD/iTunes Movies)/Apple TVで観た映画のレビュー

スター・トレック I:ディレクターズ・エディション(4K UHD/iTunes Movies)

No Image 原題 STAR TREK:THE MOTION PICTURE-THE DIRECTOR’S EDITION
レーベル PARAMOUNT PICTURES HOME ENTERTAINMENT
制作年度 1979年/2001年/2022年
上映時間 136分
監督 ロバート・ワイズ
出演 ウィリアム・シャトナー、レナード・ニモイ、デフォレスト・ケリー
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語/DOLBY DIGITAL 5.1ch 日本語
字幕 日本語

あらすじ

 銀河から謎のエネルギーを帯びた雲が地球に接近していた。雲はクリンゴン帝国の領域を通っていたので、クリンゴン艦隊が攻撃を開始するが、雲の反撃に遭い、艦隊は消滅する。その雲は連邦の宇宙基地をも飲み込んで、地球への接近を進めていった。惑星連邦の船の中で、一番迎撃に近い船は1年半に渡って改装中だったエンタープライズのみだった。そのため、かつてエンタープライズの艦長を5年勤め、今は提督になっていたカークが再び艦長に就任し、雲の迎撃を行うことになる。しかし、現在のエンタープライズの艦長だったデッカーはカークの指示により副長に降格され、二人の間に緊張感を生じさせる。また、改装が完了していないエンタープライズは不具合が多く、転送装置は不調でクルーを死なせてしまい、無理やり出港した後もワープ中のトラブルで危機一髪に陥る。カークはかつてのクルーを強引にエンタープライズに集めるが、ヴァルカン星でコリナーの会得を図っていたスポックも雲の存在を認識したためにコリナーを会得できず、エンタープライズに搭乗して雲の正体を突き止める作戦に乗り出すことになる。雲のそばに近づいたエンタープライズは、雲からの探査を受け、操舵士であったアイリアを失ってしまう。しかし、その後、アイリアの姿をした雲から送られてきた探査機がエンタープライズに現れる。雲はヴィジャーと名乗り、創造主を探しているが、見つからないので抹殺していると話し、カーク達に「創造主はどこだ?」と執拗に問いかける。カークやスポック、マッコイ、デッカー達は、雲の正体を調べつつ、創造主とは何かを探し始める。

レビュー

 1966年のテレビ放映開始以来、世界中で絶大な人気を誇る「スター・トレック」シリーズの劇場版第1作目が、この「スター・トレック」です。1969年のテレビ放送終了後、繰り返しの再放送で人気を集めた「スター・トレック」が、その人気と「スター・ウォーズ」の大ヒットにあやかって劇場版として制作されたのが、この作品であります。興行収入は製作費を上回る成績を収めましたが、制作時に様々なトラブルに見舞われ、監督であるロバート・ワイズは作品の出来に不満を持っていたと言われています。また、劇場公開版の批評は芳しいものではなく、Rotten Tomatoesの批評家評価は52%、観客評価も42%と、かなり低い評価しか得られていません。

 今回鑑賞したのは、この評価の低い劇場公開版ではなく、2001年のDVDリリース時に監督であるロバート・ワイズ監修のもと、物語の再編集と1979年当時の技術ではできなかった特殊効果シーンをCGで作り直した「ディレクターズ・エディション」です。それも、DVD画質の映像ではなく、2022年にDVD当時の画質で作ったCGを4K UHDの解像度で制作し直した4K UHDバージョンの「ディレクターズ・エディション」で鑑賞しています。物語の再編集とともに4K UHDの高解像度でもたらされる監督監修版は、劇場公開版で感じた冗長感を払拭し、テンポの良い作品に作り直されています。

 物語自体が再編集されている上に、1966年のテレビ放映以降、2022年の現在に至るまでにさまざまな「スター・トレック」シリーズが生み出されていることもあってか、物語は劇場公開版を初見した時よりもよりスター・トレックらしい雰囲気を持った作品に仕上がっていると思います。監督が大作映画を撮り続けたロバート・ワイズということもあってか、スケール感も広大で、それでいてスター・トレックらしい展開に興奮させられるものがあります。

 ただ、内容的にはテレビシリーズの1エピソードとそう変わりはなく、単にそれを劇場公開のために2時間以上の長編にしたような雰囲気もあります。実際、未発表に終わったテレビシリーズ「スター・トレック:フェイズII」の1エピソードとして考えられていた内容を映画化していることもあり、テレビだったら1時間で終わる話を2時間に引き伸ばしているだけというところもあります。

 劇場公開版ではカークとデッカーとの確執がメインで描かれていたように思うのですが、今回「ディレクターズ・エディション」を鑑賞してみると、どちらかというとカーク、スポック、マッコイのトリオによる抜群のコンビネーションにデッカーも加わるという構図が見え隠れします。そして、ヴィジャーに取り込まれてしまい、ヴィジャーの探査機として登場するアイリアとデッカーの関係も物語上大きな役割を果たすことになります。この二人はかつて恋人同士であったことから、その二人の関係がヴィジャーと人間との関係にも影響を及ぼしていることになりますが、クライマックスの二人の関係がスター・トレックらしいオチに落ち着くところがあり、目を離せないところでもあります。

 2022年に制作された新しい4K UHDのCGですが、1979年の特殊効果シーンと違和感がないように制作されているために、見ていて不自然感は感じません。とはいうものの、1979年の特殊効果シーンは4K UHDの環境で視聴すると特殊効果の荒がはっきり見えてしまい、やはり時代を感じさせるものがあります。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターは35mmフィルムではありますが、2022年の4K UHDリリース時にマスターデータを4Kで作り直しているので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。映像は4Kですが、シーンごとによって高精細のシーンがあったかと思うと荒いシーンもあったりして、ばらつきはあります。これは「ディレクターズ・エディション」の元になったフィルムの管理状態に差があったためだと思われます。DOLBY VISIONによる色彩管理は素晴らしいものがあります。高コントラストの発色をしている上に、色乗りも十二分にあり、ヴィジャーの描写には引き摺り込まれるものがあります。

 音響も劇場公開時にはDOLBY STEREO、DVD時にはDOLBY DIGITAL 5.1chだったものが、今回の2022年「ディレクターズ・エディション」ではDOLBY ATMOSにリミックスされ直しています。DOLBY ATMOSによる三次元サラウンドの効果は絶大で、物体の移動感は前後左右上下に縦横無尽に動き回り、環境音はリスナーの周囲を自然な感じで取り囲み、オーケストラのサウンドも空間的広がりを感じさせるものがあります。

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