『ヴァージン・スーサイズ』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|少女たちの“生と死”を包む、淡く残酷な光【HDR10 / dts-HD MA】
ソフィア・コッポラの初長編にして、独特の“静謐な死生観”を確立した傑作を、CRITERIONが4Kスキャンで丁寧に復元。
1.66:1のネイティヴ4K映像は、フィルムグレインの質感・赤みと青みに揺れる独特の色調・70年代郊外の閉塞した空気まで、HDR10により豊かな階調でよみがえる。静かな青春の痛みと死の影が、淡い光の中で浮かび上がる。
音響はDOLBY SRベースの再構築5.1chで、環境音の包囲が想像以上に豊か。映像・音響ともにCRITERIONらしい精密な仕上がりだ。
『ヴァージン・スーサイズ』4K UHD Blu-ray 基本仕様
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邦題 | ヴァージン・スーサイズ |
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| 原題 | The Virgin Suicides | |
| レーベル | CRITERION COLLECTION | |
| 制作年度 | 1999年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 97分(劇場公開版) | |
| 監督 | ソフィア・コッポラ | |
| 出演 | ジェームズ・ウッズ、キャスリーン・ターナー、キルステン・ダンスト | |
| 画面 | 1.66:1 / HDR10 | |
| 音声 | dts-HD MA 5.1ch 英語 | |
| 字幕 | 英語 | |
| リージョン | UHD=リージョンフリー, Blu-ray=リージョンA | |
| パッケージ | UHD 1枚(本編) + BD(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
厳格な家庭に育った5人姉妹。末娘シシリアの死をきっかけに、残された4人は世界との距離を閉ざしていく。70年代郊外の青春、恋、抑圧、そして“死の気配”を、回想形式で静かに辿る物語。
あらすじ(詳細)
リスボン家には、敬虔な両親と5人の娘がいた。厳しい宗教生活の中で育つ末娘シシリアは自殺未遂を起こし、回復パーティの最中に再び命を絶つ。
深い傷を抱えたラックス、メリー、セリーズ、ボニーの4人は学校では注目を集め、フットボール選手トリップがラックスに接触する。ホームカミングに参加した4人は一夜の自由を得るが、ラックスがトリップと関係を持つと、母親は外出を全面禁止。レコードを捨てさせるなど束縛は加速し、4人の心はさらに追い詰められていく。
物語は90年代の語り手が、少女たちの不可解な死と、美しく儚い青春の日々を振り返る形式で進む。
見どころとテーマ
- “生と死”を淡く描くソフィア・コッポラの美学:答えを示さず観客の想像へ委ねる余白。
- 厳格な宗教教育と抑圧が生む閉塞:束縛が少女たちの死生観に影響。
- ラックスとトリップの象徴性:性の目覚めと自由への渇望が物語の転換点に。
- 姉妹の深い絆:シシリアの思い出の木を守ろうとする場面が象徴的。
- 回想形式による郷愁と不穏:大人になった語り手の距離感が静かな残酷さを生む。
4K UHD 映像レビュー【HDR10】
35mmネイティヴ4KスキャンによるCRITERIONらしい高精細レストア。
- フィルムグレインの粒立ちを保った丁寧なスキャン
- 赤味・青味を使った70年代的カラーグレーディング
- HDR10による暗部階調の向上で室内の閉塞感が鮮明に
光の淡さと死生観が結びつく本作において、4K HDRは“作品理解を深める画質”と言える。
映像スコア:92点 —— フィルムの美しさを最大限に保ったネイティヴ4K
音響レビュー【dts-HD MA 5.1ch】
オリジナルのDolby SR音源をもとに再構築した5.1chは、環境音の回り込みが非常に自然。
- 静けさの中に広がる環境音が没入感を形成
- Neural:Xアップミックスは7.1.4にも匹敵する広がり
- 部屋の空気感・ざわめきが“少女たちの世界”をリアルに再現
音響スコア:87点 —— 静けさの中に立体感が息づく高品位5.1リマスター
総評
厳格な家庭環境、生と死の曖昧な境界、70年代の郊外の空気——ソフィア・コッポラの美学が凝縮された初監督作。
4K HDRは淡いフィルムの質感と危うい青春を鮮明に掬い上げ、音響は静けさの中に豊かな包囲を忍ばせる。CRITERIONらしい最高品質の4K化であり、本作の“静かな衝撃”を最も正しく伝えるディスク。
総合スコア:90点 —— 美と痛みが溶け合う、必携のCRITERION盤


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