WINGS OF DESIRE(4K UHD Blu-ray UK)/ベルリン・天使の詩/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

WINGS OF DESIRE(4K UHD Blu-ray UK)

ベルリン・天使の詩4K UHD Blu-rayジャケット 邦題 ベルリン・天使の詩
レーベル A CURZON FILM
製作年度 1987年
上映時間 128分
監督 ヴィム・ヴェンダース
出演 ブルーノ・ガンツ、ソルヴェーグ・ドマルタン、オットー・ザンダー
画面 1.66:1/SDR
音声 PCM 2.0ch ドイツ語、フランス語、英語/dts HD MA 5.1ch ドイツ語、フランス語、英語
字幕 英語

あらすじ

1980年代のドイツ・ベルリン。天使のダミエルとカシエルは、人間の営みを観察していた。彼らはどこにでも出没し、人間を観察するのだったが、人間の決断に関与することはできなかった。そして、子供たちだけが、ダミエルとカシエルを見ることができるのだった。ある日、ダミエルは、サーカス団の曲芸員であるマリオンという女性を見つけ、彼女に恋に落ちる。そして、彼女と共に生きたいと思うようになるのだったが、そのためには天使から人間に転換することを意味し、永遠の命を失うことでもあった。ダミエルは、映画の撮影でベルリンに来ていた俳優のピーター・フォークに接近するのだったが、実は彼も元は天使であり、人間の生活に憧れて人間に転換した人物であった。ダミエルは考えた末に人間になることを決意し、永遠の命を捨てて人間になり、マリオンと共に生きていくことになる。

レビュー

1987年に公開され、ヴィム・ヴェンダース監督の代表作となったポエティックな映像表現が印象的な映画が、この「ベルリン・天使の詩」です。1987年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、1993年には続編である「時の翼に乗って/ファラウェイ・ソー・クロース!」が製作・公開されることになります。そして、ハリウッドでリメイクされ、ニコラス・ケイジとメグ・ライアン主演で「シティ・オブ・エンジェル」のタイトルで製作・公開されています。映画の評価はかなり高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は98%、観客評価も93%と高評価を受けています。

ハリウッドでリメイク版が製作されるほどの話題作ではありますが、ハリウッドリメイク版と比較すると、大幅に作風は違い、基本設定だけは同じものの、映像表現や内容は大幅に異なっています。この「ベルリン・天使の詩」だと、天使であるダミエルとカシエルが人間の生の営みを静かに見守っているストーリーになっており、人間讃歌とでも言えそうなストーリーになっているのが特徴ではないかと思います。

もちろん、ラブストーリーの要素もあり、天使であるダミエルがサーカス団の曲芸員であるマリオンに恋をして、天使であることをやめて人間になり、マリオンと相思相愛の関係になるというストーリーも作品の中に含まれていますが、映画を見ている限りではその要素があまり前面には出てこない印象を受けます。ハリウッドリメイク版の「シティ・オブ・エンジェル」は、このラブストーリーを前面に出しすぎた感すら覚えます。

天使であるダミエルやカシエルを見ることができるのが子供達だけだという設定も、天使の立ち位置を表しているかのような気がします。子供達の純真な迷いのない心だけが、天使を見ることのできる力を持っている、と捉えることもでき、様々な悩みを抱えた大人たちには天使の存在を感じられないところが、ストーリーの作風を形作っていると思います。

面白いのは、ベルリンに映画の撮影に来たという設定で、俳優のピーター・フォークが本人役で映画に出演し、結構目立つ役割を演じているところです。ピーター・フォークは実は元天使であり、人間に憧れて人間に転換した人物であることが明らかにされますが、ここにも人間賛歌を見出すことができます。

物語の舞台になっているドイツのベルリン自体も物語を語る上で重要な位置を占めていると思います。1987年のベルリンだとまだ東西ドイツに分裂した時代の話であり、ベルリンの壁が存在していた頃だと思いますが、そのベルリンで生活を営む人間の存在とベルリンという街自体がリンケージしている感はあります。空撮も多く、空から俯瞰したベルリンの街並みのシーンも多く、ベルリンという街そのものの魅力をとらえたショットが多いように思います。

ラストは、「To be Continued…」と続編を示唆して終わるので、割と爽やかに終わったなという実感があります。作品全体を通して重苦しい場面はほとんどなく、詩的表現の映像が続くので、「アート映画を見ているな」という意識を強く感じさせます。

映像は4K/SDRで収録されています。2022年に4Kのマスターデータを作って4K UHD Blu-ray化されていますので、ネイティヴ4Kでの収録になります。解像度は相当の高精細の映像を提供しており、フィルムの粒子も見えつつも、映像そのものの解像度も高いという離れ技を成し遂げています。色彩管理はSDRと少し残念なのですが、映画の大半がモノクロ画面ですので、SDRでもさほど支障はないと言ったところです。カラーになるシーンもいくつか存在していますが、くすんだ感じのカラーがベルリンの街並みの雰囲気とマッチしているので、SDRであっても不都合ない感触を受けます。映画の冒頭とラストに4Kレストアについての説明やクレジットがインサートされているのも好感が持てます。

音響は2トラック収録していて、PCM 2.0chとdts HD-MA 5.1chのドイツ語、フランス語、英語が収録されています。PCM 2.0chはDOLBY STEREOでミックスされているようですので、実際は3-1サラウンドのようですが、今回はdts HD-MA 5.1chのミックスの方で視聴しました。環境音や人の話し声等がリスナーを取り囲み、サラウンド効果としてはまずまずだと思います。ドイツ語メインで時々フランス語、英語が混じる会話ですので、ちょっと頭は混乱します。なぜかロックバンドのライブシーンで1カットだけ日本語で女性観客が喋るシーンもあったりして、結構妙な感覚を受けます。

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