『陪審員2番』配信版 レビュー|クリント・イーストウッド95歳の法廷劇【HD / SDR】
クリント・イーストウッド監督の最新作『陪審員2番(JUROR #2)』は、日本では劇場未公開ながら U-NEXTの「Max」で独占配信されている法廷サスペンスである。95歳という監督の年齢から 「これが最後の監督作では?」と噂される本作は、陪審員の中に真犯人がいるかもしれないという斬新な設定で注目を集めている。 本記事ではあらすじから映像・音響レビュー、そして総合評価まで詳しく紹介する。
配信版 基本仕様
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邦題 | 陪審員2番 |
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レーベル | Warner Bros. Discovery Home Entertainment | |
制作年度 | 2024年(劇場公開版) | |
監督 | クリント・イーストウッド | |
出演 | ニコラス・ホルト、トニ・コレット、J・K・シモンズ | |
音声 | DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語 | |
リージョン | U-NEXT内 Max 見放題配信(日本) | |
パッケージ | 配信のみ |
あらすじ(短縮版)
妊娠中の妻を抱えるケンプは、殺人事件の陪審員に選ばれる。だが彼には、事件当夜に自分が関わっていたのではないかという恐ろしい疑念があった──。
あらすじ(詳細)
ケンプは妊娠した妻のため陪審員辞退を望むが、裁判所に拒否され陪審員を務めることになる。事件は、サイスという男が恋人カーターを殺害したとされる裁判であった。証拠は状況証拠に過ぎなかったが、カーターの遺体は旧道近くで発見され、サイスは逮捕される。
ケンプはその日、自らが車で何かを撥ねた記憶を思い出す。鹿だと思っていたが、もしかすると犠牲者カーターだったのではないか──。ケンプは弁護士に相談するが、もし事実なら飲酒運転およびひき逃げの重罪になると告げられる。
良心の呵責に苛まれる中、裁判は進行。陪審員の多くがサイス有罪を主張するなか、ケンプだけが無罪を唱える。次第に他の陪審員の態度も変化し、元警官の陪審員は独自に修理記録を調査。しかしケンプの行動により彼は陪審員から外され、資料は検察の手に渡る。
検察官は昇進を賭けて立証に奔走し、陪審員団は現場検証を行う。そして最終的にサイスは有罪評決となるが、その場にケンプの姿はなかった。
作品レビュー
『陪審員2番(JUROR #2)』は、俳優であり名監督でもあるクリント・イーストウッドの最新作にして、おそらく最後の監督作品と噂される。アメリカでは劇場限定公開に留まり、日本ではU-NEXT内のMaxでの独占配信となった。95歳にしてなお鋭い演出を見せた本作は、Rotten Tomatoesで批評家93%、観客91%という高評価を獲得している。
物語は典型的な法廷劇の形式をとりながらも、主人公ケンプが「真犯人かもしれない陪審員」という立場に置かれることで独自性を放つ。彼がサイスを救おうとする行動は英雄的な義憤ではなく、良心の呵責に基づくものであり、観客は彼の葛藤に最後まで引き込まれる。
アルコール依存から立ち直った過去を持つケンプが、事件当夜にバーにいた事実がさらなる緊張感を生む。飲んだのか否か、その曖昧さが彼を脆く危うい存在にしている。イーストウッドは結末においても彼の罪の清算を明確に描かず、観客に余韻と想像を委ねる。ここに監督らしい厳格さと突き放しが感じられる。
なお、同監督の『ヒア・アフター』や『15:17、パリ行き』と比較すると、よりシリアスで人間ドラマに焦点を当てた内容になっている点も特徴である。
映像レビュー【HD / SDR】
初見では4K / HDRであるかのような鮮明さを感じたが、調査の結果、本配信はHD / SDRであることが判明した。Fire TV Stick 4KのHDR設定を「自動適用」に変更した際、HDR表示が消えたためである。画質はHDながらも解像感は高く、発色も良好で、配信特有の破綻も少ない。法廷内の陰影や郊外の自然光の表現は特筆すべき安定感を示す。
音響レビュー【DOLBY DIGITAL 5.1ch】
音声は5.1chで提供。法廷を舞台とした作品のため派手な音響演出は少ないが、環境音やBGMが要所で効果的に配置されている。特に雨音や鳥の声などがサラウンドで広がり、臨場感を演出。AVアンプのDolby Surroundモードを適用すると、高さ方向にも響きが補完され、自然音のリアリティが増す。
総評と評価
『陪審員2番』は、イーストウッドがキャリアの最晩年に放った骨太の法廷劇である。主人公が「真犯人かもしれない」という設定は斬新であり、法廷映画の伝統に新たな緊張感を加えた。映像・音響はHD/5.1chという仕様ながら充分に高品質で、視聴環境次第では劇場に近い体験を得られる。
映画評価:★★★★☆(4.5/5)
明確な答えを与えず観客に委ねるラストは賛否を呼ぶだろうが、それこそがイーストウッドの流儀である。U-NEXT Maxで独占配信中のため、監督ファン・法廷劇ファンともに必見の一作である。
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