『スター・トレック:セクション 31』配信版 レビュー|影の組織が描かれる異色作【HD / SDR】

『スター・トレック:セクション 31』配信版 レビュー|影の組織が描かれる異色作【HD / SDR】

配信版 基本仕様

スター・トレック:セクション 31 No Image 邦題 スター・トレック:セクション 31
原題 STAR TREK: SECTION 31
レーベル Paramount Pictures Home Entertainment
制作年度 2025年(劇場公開版)
上映時間 95分(劇場公開版)
監督 オラトゥンデ・オスンサンミ
出演 ミシェル・ヨー、オマリ・ハードウィック、サム・リチャードソン
画面 2.39:1 / HD / SDR
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語
字幕 日本語
リージョン 配信 (Paramount+ / Amazon Prime Video)
パッケージ 配信のみ

あらすじ(短縮版)

ミラー・ユニバースで皇帝となったフィリッパ・ジョージャウは、我々の宇宙で惑星連邦の影の組織「セクション 31」と接触。連邦を脅かす生物兵器の確保任務に挑むが、裏切りと陰謀が渦巻く中、かつて自らが生み出した「罪」と対峙することになる。

あらすじ(詳細)

テラン帝国の苛烈な試練を勝ち抜き皇帝の座を得たフィリッパ・ジョージャウ。敗れたサンは彼女に仕えるが、生物兵器「ゴッドセント」に倒れる。のちにジョージャウは我々の宇宙で「セクション 31」に招かれ、異星人ダダの手にある生物兵器の奪還任務に就く。

しかし任務は第三勢力の介入と内通者の存在によって瓦解。仲間が次々と失われる中、問題の兵器がミラー・ユニバースで彼女自身が造り出した「ゴッドセント」であると判明する。両宇宙を繋ぎ滅亡へ導こうとする陰謀を阻止すべく、ジョージャウは生き残った隊員と共に決断を下す。

作品レビュー

Paramount+初のシリーズ直結配信映画として位置づけられる本作は、ミシェル・ヨーの存在感に支えられたアクション・スリラーとしては一定の見応えがある。しかしながら、連邦のためなら違法も厭わない影の存在として描かれてきた「セクション 31」本来の魅力──緻密な謀略や倫理のグレーゾーンを突くドラマ──は希薄になり、行動部隊の一つに縮小されてしまった印象が否めない。

監督のオラトゥンデ・オスンサンミは『スタートレック:ディスカバリー』で複数のエピソードを演出してきた人物であり、映像演出には安定感が見られる。一方、主演のミシェル・ヨーは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した実力派であり、その存在感が本作を大きく支えている。

実際、Rotten Tomatoes では批評家スコアが20%、観客スコアが16%と非常に低評価であり、“スター・トレック”の名を冠する以上、内容と評価の乖離にはファンとしても居心地の悪さを感じる。

映像レビュー【HD / SDR】

国内配信はHD/SDR。VFXや宇宙空間のコントラストは良好で、肌や金属のテクスチャも明瞭。ただし本国の4K配信と比べるとダイナミックレンジや微細表現で劣る印象がある。特にAmazon Prime Video 経由では字幕表示が数秒遅れる傾向があり、物語の理解に支障を来す可能性がある。

音響レビュー【DOLBY DIGITAL 5.1ch】

日本国内は5.1ch(本国は Dolby Atmos)で提供。銃撃戦や爆発の定位は明瞭で、後方チャンネルの使用も効果的。AVアンプの Dolby Surround / DTS Neural:X モードを併用すれば高さ感の補完が可能になる。セリフの明瞭性・BGMの厚みも十分で、アクション演出との相性は良好。ただし Atmos のような垂直方向の包囲感は得られない。

印象的なポイント

  • テラン帝国の非情な試練: 皇帝選抜の儀式がジョージャウの存在と選択を象徴。
  • ジョージャウとサンの関係: 主従・因縁ドラマが終盤に深みを加える。
  • セクション 31の扱われ方: 陰謀組織としての描写が薄く、行動部隊の一員に留まる印象。
  • シリーズ期待とのズレ: アクション重視の演出が先行し、哲学的問いかけが希薄。
  • 評価の現実: Rotten Tomatoes の20%/16%という数字が裏付ける完成度の限界。

総評

『スター・トレック:セクション 31』は、ミシェル・ヨーの圧倒的な存在感が光るスタトレ派生アクションとしては楽しめる一方、シリーズのコアなテーマ──倫理・人間性・探究──が希薄な点はシリーズファンには物足りない。低評価はそれを象徴している。

映像・音響の収録は良好で、HD/5.1chの再生品質は充分。ただ、4K/Atmosでの鑑賞環境が可能ならそちらのほうが完成度の実感も高い。シリーズ好き・ヨーファンには一見の価値ありだが、内容の評価には慎重な視点が求められる。

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