『ノスフェラトゥ(2024)』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|古典の呪いを最新の闇で再召喚する、ゴシック・ホラーの正統継承【Dolby Vision / Dolby Atmos】
1922年のムルナウ『吸血鬼ノスフェラトゥ』から102年。ロバート・エガースは、その表現主義的映像を現代に蘇らせつつ、愛・死・疫病という普遍のテーマをゴシックホラーとして再構築した。本作は単なるリメイクではなく、「ドラキュラ映画の正典」を改めて問い直す試みである。その映像と音響を最良の環境で堪能できるのが、本 UHD Blu-ray だ。
『ノスフェラトゥ(2024)』輸入盤 4K UHD Blu-ray 基本仕様
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邦題 | ノスフェラトゥ(2024) |
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原題 | Nosferatu | |
レーベル | Universal Pictures Home Entertainment | |
制作年度 | 2024年(劇場公開版) / 2024年(完全版) | |
上映時間 | 132分(劇場公開版) / 136分(完全版) | |
監督 | ロバート・エガース | |
出演 | ビル・スカルスガルド, ニコラス・ホルト, リリー=ローズ・デップ | |
画面 | 1.66:1 / Dolby Vision | |
音声 | Dolby Atmos 英語 / Dolby Digital Plus 7.1ch スペイン語, フランス語 | |
字幕 | 英語、スペイン語、フランス語 | |
リージョン | UHD=リージョンフリー、Blu-ray=A,B,C | |
パッケージ | UHD 1枚(本編 + 特典) / BD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
幼少から“吸血鬼”の悪夢に囚われたエレン。夫トーマスが契約のため山間の古城を訪れると、オーロック伯爵の影が港町に忍び寄る。愛と犠牲が試される中、夢と現実は交錯し、永遠の夜が始まる。
あらすじ(詳細)
1838年、ドイツ。悪夢に苛まれ続けるエレンは、夫トーマスと静かな日々を過ごしていた。
ある日トーマスは古城のオーロック伯爵との契約に赴き、奇怪な謁見を経て契約を結ぶが、命を落としかけ辛うじて生還する。
契約成立により伯爵は港町へ向かい、船員たちは次々と怪死。町にはネズミと死の影が広がっていく。
調査に乗り出したフランツは伯爵の正体が吸血鬼ノスフェラトゥであると看破。
そして彼は、エレンと伯爵が奇妙な“同調”をしていることに気づき、彼女を守ろうとするが、運命は急速に破滅へと収斂していく。
愛、救済、そして破滅——エレンの選択が物語を決する。
見どころとテーマ
- 古典の再詠唱: ムルナウ版の影を踏まえつつ、現代的な映像言語で再構築。
- 疫病のメタファ: ネズミや咬傷は19世紀ヨーロッパの集団的恐怖を象徴。
- 愛と犠牲: エレンの宿命と意識の同調がゴシック悲劇を深化させる。
- 1.66:1のフレーム: 建築と影を強調する額縁効果。被写界深度で“気配”を写す。
- 身体の怪異: オーロックの造形と所作が恐怖を物理的に定着させる。
4K UHD Blu-ray 映像レビュー【Dolby Vision】
撮影は35mmで、仕上げは1.66:1。グレインは抑制され、石壁の湿り気や衣装の質感まで緻密に再現。Dolby Visionは彩度を落とし、黒の階調を精緻に描き分ける。特に古城の蝋燭の光や、夜の港町の微光表現は圧巻で、闇の中に“情報量”が潜む。鮮烈さではなく、恐怖を支える視覚的深度を重視したグレーディングだ。
映像スコア:88点(高水準)
音響レビュー【Dolby Atmos】
Atmos は“聞こえないもの”を可視化する。低いうねり、甲板を叩く波音、遠雷が頭上に広がり、天井スピーカーからの定位が不安を煽る。LFEは必要な場面で深く沈み、心拍を揺さぶる。台詞は明瞭で、残響設計により空間の容積が生々しく伝わる。特に嵐のシーンでの全方位的な音場は、観客を完全に没入させる。
音響スコア:90点(迫真のサウンドデザイン)
総評
『ノスフェラトゥ』は単なるリメイクではなく、古典を素材に現代的恐怖を練り上げた正統派ホラー。画と音が融合し、観客の深層心理に忍び寄る体験を提供する。Dolby Vision / Atmosの恩恵を最大限に享受できるこの UHD Blu-ray は、作品を堪能するベストな手段である。ゴシックホラーの愛好者だけでなく、シネフィルにとっても必見の一本だ。
総合スコア:89点(必見のリメイクホラー)
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