『MAMA』Blu-ray(輸入盤)レビュー|母性が呼ぶ恐怖と救済のはざま【SDR / dts-HD MA】
ギレルモ・デル・トロ製作、アンディ・ムスキエティ長編デビュー作。二人の少女を抱きしめるのは救いか呪いか——家族という密室に潜む“母性”の影を、冷ややかな映像と音でじわじわ描くゴシック・ホラーの秀作である。
『MAMA』Blu-ray 基本仕様
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邦題 | MAMA |
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原題 | Mama | |
レーベル | UNIVERSAL STUDIOS HOME ENTERTAINMENT | |
制作年度 | 2013年(劇場公開版) | |
上映時間 | 100分(劇場公開版) | |
監督 | アンディ・ムスキエティ | |
出演 | ジェシカ・チャステイン、ニコライ・コスター=ワルドー、メーガン・シャルパンティエ | |
画面 | 1.85:1 / SDR | |
音声 | dts-HD MA 5.1ch 英語 / dts 5.1ch スペイン語 | |
字幕 | 英語、スペイン語、フランス語 | |
リージョン | Blu-ray=リージョンフリー | |
パッケージ | BD 1枚(本編+特典映像) |
あらすじ(短縮版)
父に連れ去られ山小屋で孤立した姉妹ヴィクトリアとリリーは、正体不明の存在“MAMA”に守られて五年を生き延びる。保護されて新生活を始めるが、姉妹の背後にはなお“MAMA”の影が付きまとい、育ての親となるアナベルは不可視の母性と対峙することになる。
あらすじ(詳細)
妻を殺害したジェフリーは幼い娘二人を連れて逃亡、山中のキャビンで娘まで手にかけようとするが、壁から現れた幽霊に阻まれて命を落とす。五年後、兄ルーカスの捜索により姉妹は発見され、ルーカスと恋人アナベルの元で保護される。文明から隔離され野生化していた姉妹は、アナベルの献身で少しずつ人間らしさを取り戻す一方、彼女らの背後には“MAMA”と呼ばれる存在が常に寄り添っていた。
やがて“MAMA”の干渉は激化し、ルーカスは事故で入院。アナベルは一人で姉妹を守る立場となる。精神科医ドレイファスは旧精神病院の記録から、母親エディスが赤子と心中を図り崖から落ちた事件に行き当たる。娘だけが生き延びたその悲劇は、“MAMA”の執着と重なっていく。犠牲が増す中、アナベルとルーカスは真相の地=キャビンへ向かい、姉妹と“MAMA”の宿命に終止符を打とうとする。
見どころとテーマ
二重の母性: 育ての親アナベルと、幽霊となったエディス(MAMA)が“母”として相克する物語構造が鮮烈。
姉妹の分岐: 社会へ回帰する姉ヴィクトリアと、森の母に引かれる妹リリー——年齢差と体験差が運命を分ける。
デル・トロ印のゴシック: 黄変したハイライトと深い影、冷色系の美術が“おとぎ話の悪夢”を視覚化。
音による恐怖設計: 低周波のうねりと後方定位のノイズで“見えない気配”を作り、ジャンプスケアに頼りすぎない。
成長譚としての着地: ロッカー女子だったアナベルが“守る者”へと変わる過程が骨太な余韻を残す。
映像レビュー【SDR】
本作のBlu-rayは2K由来のHD/SDRで、解像感は十分。黄味を帯びた日中と寒色の夜間を対比させるグレーディングが印象的で、肌や木材の質感も良好。暗部は意図的に潰し気味のカットもありブラックの沈みは強め。グレインは薄めで処理感は控えめ。推奨視聴環境: 部屋を暗くし、TVのダイナミックコントラストはオフ〜弱でトーン再現を優先。
音響レビュー【dts-HD MA 5.1ch】
ロスレス5.1chは包囲感が高く、背後/サイドのサラウンドに“MAMA”の気配を配置する演出が効果的。低域は量感がありつつタイトで、ドアの軋みや床鳴りの微細音も定位良好。ジャンプスケア時のピークは鋭いので夜間視聴は音量管理を。アップミックスTips: Neural:X等を併用すると上方の広がりが自然に補強される。
特典映像一覧と評価
※収録内容はエディションにより異なる場合があります。
特典内容 | 新規収録 | 画質 |
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オーディオコメンタリー | YES | HD |
削除シーン | YES | HD |
短編『Mamá』(長編の原点) | YES | HD |
メイキング/VFX解説 | YES | HD |
過去メディア(DVD/配信)との比較
DVD比では解像度・ビットレートの優位で暗部ノイズが大幅に軽減。配信版(サービスにより仕様差あり)と比べてもピーク時のブロッキングが少なく、色乗りが安定。HDR未対応ゆえハイライトの伸びは限定的だが、ホラー的な陰影表現には十分。
総評
“母性の救済/呪い”を同時に描く物語が、映像・音響の設計と噛み合って強い余韻を残す。Blu-rayの画音は堅実で、暗所のノイズや包囲感の作りも好印象。ホラーとしての怖さだけでなく、育てることの痛みとやさしさを味わえる一枚としておすすめ。
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