佐野元春 & THE COYOTE BAND 佐野元春45周年アニバーサリー・ツアー|LINE CUBE SHIBUYA

佐野元春 & THE COYOTE BAND 佐野元春45周年アニバーサリー・ツアー|LINE CUBE SHIBUYA

2025年10月28日@LINE CUBE SHIBUYA

はじめに

佐野元春がデビュー45周年&THE COYOTE BAND結成20周年を記念した全国ツアーを開催すると発表したのは、2025年のかなり早い時期だった。会場を見ると、東京はLINE CUBE SHIBUYAの1公演のみ、神奈川は横浜BUNTAIでの開催でツアーファイナルになっていた。埼玉と千葉でも開催が告知されていたが、横浜の外れの方に住んでいる僕としては、埼玉や千葉の公演に行くのは少々遠かった。あとで、東京は追加公演でアリーナがあるとは聞いていたが、チケットを予約する際には未定だったので、LINE CUBE SHIBUYAの公演と、横浜BUNTAIの公演を予約することにした。

東京公演はLINE CUBE SHIBUYA 1公演だけだったのでチケットは取りにくいかなと思っていたが、ファンクラブ先行予約で運良く確保できてしまった。LINE CUBE SHIBUYAの公演は平日開催なので仕事の都合をつけるのに苦労したが、普段行っている在宅勤務ではなく、会社に出社することにしたことで、渋谷に行く時間を短縮していた。

6年ぶりにLINE CUBE SHIBUYAに行く

28日は16:40に仕事を終えて、早めの夕食を食べてから渋谷に向かった。渋谷にはほとんど用事がないので行くこともなかったが、渋谷駅のスクランブル交差点に差し掛かると外国人の観光客が大勢いるし、ハチ公の銅像は記念写真を撮る人でいっぱいだったしで、前に来た時と雰囲気が相当変わっているのに驚いた。

LINE CUBE SHIBUYAを訪れるのは6年ぶりである。6年前の2019年、“新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS 佐野元春の名盤「Café Bohemia」”が開催された時に福岡から遠征して見に来た記憶がある。今回は横浜住まいなので遠征というわけではない。

会場に着くと、すでに人だかりしていた。記念のTシャツ付きチケットを買った人と、Tシャツなしチケットを買った人とで入場口は分かれていた。Tシャツ付きチケットを買った人の入場口はガラガラだった。僕は記念のTシャツ付きチケットを買ったので、そちらから入場した。電子チケットで入場し、Tシャツとチラシをもらい、会場内に入った。

入ってすぐのところで物販コーナーがあった。どうしようか迷ったが、先にグッズを買っておかないと後で混雑すると思って列に並び、ツアーパンフレットだけ購入した。パンフレットが大き過ぎて、持ち運びに苦労したが、何とか通勤用カバンに差し込んだ。

その後、階を上がって自分の席に一旦行き、荷物を整理してからトイレ等に行った。トイレも終演前に閉鎖になると書いてあったので、早めに用を足していた。2階では来年のアリーナ追加公演の看板が飾られていて、ファンは写真を撮っていた。僕も写真は撮影した。確保できるかわからないが、ファンクラブ先行には申し込んでいる。2026年3月21日に東京ガーデンシアターで開催されるとのことである。

自分の席に戻ってから開演までしばらく待った。iPhoneでネットを見て過ごしていたが、座席では電波状況が悪く、ネットを見るのは難しかった。データが流れてこない。文字は何とか流れるが、写真は流れてこなかった。それでもiPhoneを見ながら開演を待った。開演に先立つ注意事項が何回か流れてくるが、それが堅苦しいものではなく、カジュアルだったので意外に感じた。

19:00ちょうどに場内の照明は暗くなり、ステージ裏のスクリーンに映像が映し出され、音楽が鳴り出した。そして、ライブは始まった。

本編第一部セットリスト

  1. Youngbloods(New Recording)
  2. つまらない大人になりたくない(New Recording)
  3. だいじょうぶと彼女は言った(New Recording)
  4. ジュジュ(New Recording)
  5. 街の少年(New Recording)
  6. 欲望(New Recording)
  7. 自立主義者たち(New Recording)
  8. 君をさがしている-朝が来るまで(New Recording)
  9. 誰かが君のドアを叩いている
  10. 新しい航海
  11. レインガール
  12. 悲しきレイディオ

オープニングは驚いた。佐野元春の45年に渡る活動をオリジナルアルバムの紹介と、その時点の写真や動画で説明し、BGMは「再び路上で」、「リアルな現実 本気の現実」、「フルーツ」とスポークンワーズ・ナンバーを採用しているのである。佐野元春の活動の中でスポークンワーズは外せないので、驚嘆していた。スポークンワーズ・ナンバーはCDから編集した音源だった。

オープニングが終わる頃、バンドのメンバーと佐野元春がステージに現れた。それぞれが自分の定位置につき、最初の楽曲を演奏し始める。アルバム「HAYABUSA JET I」の収録通りに最初の楽曲は「Youngbloods」で、続いて「つまらない大人になりたくない」と演奏していった。スクリーンではそれぞれの楽曲のリリース当時の映像と現在のMVをコラージュした映像が流れていた。どうしてもスクリーンに映像が映し出されると、バンドメンバーよりスクリーンの方に目が入ってしまう。

二曲演奏するとMCが入る。「こんなに集まってきてくれてありがとう。戻ってきた感じです」と佐野元春は話していた。そして、三曲目は「だいじょうぶと彼女は言った」。もちろん「HAYABUSA JET I」アレンジである。この楽曲を聴いたのは26年前の「Stones and Eggs Tour」の時以来ではないかと思う。だから意外性があった。

四曲目は「ジュジュ」だった。スクリーンではサイケデリックな映像が流れていて、意外に感じていた。ここまで「HAYABUSA JET I」収録曲を収録順に演奏していたので、「まさか”HAYABUSA JET I”再現ライブにはならないよな?」と思ってしまった。

MCが入る。「今年、コヨーテ・バンドは新作を出しました。”HAYABUSA JET I!”」という話をして、五曲目に「街の少年」を演奏した。近年ではアンコールに演奏されることの多いこの楽曲をライブ前半で聴けるなんて、盛り上がり必須であった。

次の楽曲は「欲望」だった。佐野元春が手で観客に座るよう指示していた。観客も席に座り、このテーマ性の高い楽曲をじっくり聴いていた。僕も好きな楽曲なので楽しんで聴いていた。スクリーンの映像も当時の映像を織り交ぜて制作されていた。

間隔を空けずに「自立主義者たち」を演奏する。この辺りで「あれ? “虹を追いかけて”は演奏しないの?」と気づき、「HAYABUSA JET I」の再現ライブにはならないことに思い至った。もちろん、「自立主義者たち」はオリジナルの「Indiviualists」の頃から好きな楽曲なので、ノリノリで踊っていた。

次の楽曲は「君をさがしている」だった。このアレンジになってから結構時間が経過しているが、THE COYOTE BANDっぽいアレンジだと思う。スクリーンでは何やら映画「ブレードランナー」及び「ブレードランナー2049」の影響を受けたような廃墟の都市を探し回る人物の姿が映し出されていた。

MCが入る。「僕らがここで演奏するのは5年ぶりですけれど、渋谷公会堂の時からすると、何度もこの会場で演奏しています。」と話し、「HAYABUSA JET II」に入る予定の「誰かが君のドアを叩いている」を歌い出した。この楽曲も演奏するのは珍しい。たまに演奏することもあるが、回数は多くはない。レア度が高いので、楽しんだ。

次の楽曲の演奏には驚いた。「新しい航海」だったからである。1990年代初期には結構多くの公演で演奏していたこの楽曲だが、最近では聴くこともなかった。だからレア度が高いとも言えるが、この楽曲も「HAYABUSA JET II」に収録予定なのである。そういう意味では12月発売の「HAYABUSA JET II」から先行で披露しているとも言える。

MCが入る。「次の楽曲も”HAYABUSA JET II”に入れました。」と言って、「レインガール」を歌い出した。当然、この楽曲が演奏されるのも珍しい。「The Circle Tour」の時にはよく演奏していたと思うが、その後はたまに歌うぐらいだからである。

そして、第一部最後の楽曲は「悲しきレイディオ」だった。唯一「HAYABUSA JET」シリーズに未収録の楽曲で、しかも本来アンコール付近での盛り上げ曲を第一部最後の盛り上げに持ってくるとは、すごい選曲だなと感じていた。

MCが入り、「今回の公演は2部に分かれています。僕らは15分後ぐらいにまた戻ってきます。」と言って、佐野元春とバンドメンバーはステージから去った。

インターミッション

休憩の時間は、観客の多くはトイレやグッズ購入に行ってしまったのだが、会場内にいる観客向けに映像が流れていた。記憶に間違いがなければ、2025年3月13日に有料配信された「元春TV SHOW #003」で流れた「山中湖は寒かった」というインタビュー映像と、佐野元春の愛犬、ゾーイ君だけを映した「しばらくお待ちください」の映像が流れ、「元春TV SHOW #003」を見た人も見ていない人もほっこりさせていた。

本編第二部セットリスト

  1. OPENING
  2. さよならメランコリア
  3. 銀の月
  4. 斜陽
  5. 愛が分母
  6. 純恋(すみれ)
  7. La Vita è Bella
  8. エンタテイメント!
  9. 水のように
  10. 大人のくせに
  11. ニュー・エイジ
  12. スウィート16
  13. サムデイ
  14. 明日の誓い
  15. 約束の橋(New Recording)

第二部は見たことのある映像がスクリーンに流れ、アルバム「今、何処」の「OPENING」から始まり、そのまま「さよならメランコリア」へと流れ込んだ。この楽曲の演奏中、ギターの深沼元昭のエフェクターに不調が発生し、一時期深沼元昭がエフェクターにしゃがみ込んでローディーと不調を直す努力をしていた。幸い、大ごとにはならず、深沼元昭のギターは復活した。

続いて同じく「今、何処」から「銀の月」を演奏した。スクリーンの映像は「今、何処 Tour」の時と同じ映像のような気もしたが、確証はない。多分ベースは同じだが変更はしていると思う。

MCが入る。「ゾーイは僕の友達です。犬と生活する毎日は楽しい。僕より賢い。」なんて話をしてから、「斜陽」を演奏した。アルバム「今、何処」からこの楽曲が選曲された理由はわからないが、意味深な歌詞のようにも聞こえる。

MCが入る。「今日、この会場にはキッズたちがいます。次の楽曲はキッズたちに贈りたいと思います。」と言って、「愛が分母」を演奏した。ここ最近のライブではお馴染みな楽曲なので、会場のノリはいい。

続いて、「純恋」である。この楽曲も最近ではお馴染みなので、会場のノリはいい。

「La Vita é Bella」も会場は盛り上がる。この楽曲の時だけ、ステージ裏のスクリーンは巻き上げられ、照明だけで演出していた。

MCが入る。「デビューして45年を迎えました。THE COYOTE BANDを結成した20年を迎えました。今日はトランプさんが来ていて、街はざわついていますが、ここではもっとロックしよう!」という話をして、「エンタテイメント!」を歌い出した。トランプ大統領の話を持ち出しての「エンタテイメント!」演奏だと、歌詞が意味深に聞こえてしまう。もともと意味深な歌詞だったが、それが深くなった感じである。

アルバム「今、何処」に戻って「水のように」と「大人のくせに」を続けて演奏する。これらの楽曲の演奏の時に流れていたスクリーンの映像はまた、インパクトがあった。歌詞と相まって楽曲の力を強化する部分を感じた。

次の楽曲は驚いた。「ニュー・エイジ」だったのだが、最初は何処となく「THE HEARTLAND VERSION」ぽい演奏だったのに、後半に行くにつれてアルバム「VISITORS」のアレンジに近い方向になっていったからである。また、スクリーンに映し出されていた映像で、後半「END OF WAR」というワードが一瞬表示されていたのは印象的だった。アルバム「HAYABUSA JET II」に収録予定だが、混沌とする世界に希望の光を導くような楽曲になっていたと思う。

MCが入る。「僕は10代の頃からバディ・ホリーが好きでした。いつかバディ・ホリーのような楽曲を作りたいと思っていたのですが、できたのが”スウィート16″でした。」と言って「スウィート16」を歌い出した。この楽曲は最近は時々歌うようになってきている。盛り上がる楽曲である。

MCが入る。「僕は1980年にデビューしました。この曲を書いて良かったと思います。」と話しして、「サムデイ」が歌われた。当然、観客全員が合唱していた。間奏の部分では佐野元春がハーモニカを吹いていた。

「サムデイ」が演奏されるとライブも終盤かなと思ったのだが、まだライブを終えるには演奏していない楽曲があった。アルバム「今、何処」のラスト近い楽曲「明日の誓い」だった。これを歌った。

MCが入る。「45周年ということですけれど、急に外国に行ったり、変な曲を書いたり、いろいろしました。でも、応援してくれたみんなのおかげでここまで来られました。 THE HEARTLAND、THE HOBO KING BAND、THE COYETE BAND、素晴らしいミュージシャンに恵まれました。最後に感謝を込めて歌います。」と言って、「約束の橋」を演奏した。もちろん、「HAYABUSA JET I」アレンジである。

「約束の橋」で、ライブ本編は終わった。バンドメンバーを紹介する。ギターは深沼元昭と藤田顥、ベースは高桑圭、キーボードは渡辺シュンスケ、ドラムは小松シゲルといういつもの面々だった。佐野元春とバンドメンバーはステージから降りた。

アンコール

  1. スターダストキッズ
  2. ソー・ヤング
  3. アンジェリーナ

ステージに戻ってきた佐野元春とバンドメンバーが再び演奏する。佐野元春のハーモニカからスタートしたのは懐かしい「スターダストキッズ」だった。会場の盛り上がりは凄かった。

「今日、来てくれて嬉しいです。ツアーも半分ですけれど、東京で演奏できて光栄です。」という話をして、「ソー・ヤング」を演奏した。「詩を知っていたら一緒に歌おう」という佐野元春の呼びかけに観客も答えて、大合唱である。

そして、アンコール最後の楽曲はこの曲じゃなくては、というべき「アンジェリーナ」だった。

MCが入る。もう一回バンドメンバー紹介があった。会場の盛り上がりは凄かった。「来年3月21日に東京ガーデンシアターで演奏しますので、良かったら来てください。僕はこの国に暮らして、この人生を自由に生き、自由に感じて、自由に表現をしてきました。でもそれは当たり前のことではなく、とても幸運だったのではないかなと思います。今、世界中のあちこちで”自由とは何か?” “民主主義とは何か?” いろいろ意見が飛び交っています。考えすぎて臆病になってしまうのもいけません。今日、ここにきてくれたみんなの声援が僕には心強いです。」そんな話をして、佐野元春とバンドメンバーはステージを降り、ライブは終了した。

デビュー40周年記念イベントの時には、コロナ禍に突入してしまったため、まともに祝祭を上げられなかった佐野元春であるが、45周年アニバーサリー・ツアーではその雪辱を晴らした形になっていると思う。しかも、現在の混沌とする社会に対しても疑問と警鐘を鳴らすかのような演奏によって、その意義を発信し続けていると思う。最後のMCがそれを表していると思う。平日の公演ではあったが、見に行けて良かったなというのが実感である。

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