KILL BILL VOLUME 1/キル・ビル Vol.1/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

KILL BILL VOLUME 1

KILL BILL VOLUME 1 DVDジャケット 邦題 キル・ビル Vol.1
レーベル MIRAMAX HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2003年
上演時間 111分
監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン、リューシー・リュー、ヴィヴィカ・A.フォックス
画面 2.35:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch 英語 / DTS 5.1ch 英語
DOLBY DIGITAL 2.0ch フランス語
字幕 英語、スペイン語、日本語、韓国語、中国語

あらすじ

 かつて殺し屋の一団にいた「ブライド」の異名を持つ女。彼女はこの世界から足を洗い、幸せな家庭を築こうとするが、組織はそれを許さなかった。彼女の結婚式の当日、組織のメンバーは彼女の夫になる人や、彼女のお腹にいた胎児、式の出席者、牧師に演奏家まで抹殺をしてしまう。だが、ブライドは奇跡的に一命を取り留め、4 年間の昏睡状態の後、復活を遂げる。復活した彼女の目的はただ一つ、その組織のメンバーとそのボス、ビルへの復讐だった。彼女は復讐のために日本に飛び、刀作りの名人であり、ビルの師匠でもあったハットリ・ハンゾウを探し当て、彼から特性の刀を入手し、復讐を開始する…。

レビュー

 クエンティン・タランティーノの 4 作目の作品がこの「キル・ビル」。本来でしたら 1 本の映画になる予定でしたが、製作している段階でどんどん話が長くなり、予算もかかってしまった為、結局 2 部作として分割されてしまうことになりました。実際 Vol.1 と Vol.2 合計で上映時間が 4 時間を越しているのですから劇場での興行はかなり難しいといわざるを得ないでしょう。最近は長時間の上映作品も多くなりましたが、ハリウッドには映画の上映時間は 2 時間半以内に収める、という不文律があったのでやむを得ないところだと思います。(これは劇場での上映回数を多くして興収を上げるという合理的な考え方があったためです。)

 この「キル・ビル」はタランティーノのこれまでの映画人生(というか映画オタクぶり)を総括したような作品になっていまして、今作の Vol.1 は 70 年代の日本の東映ヤクザ映画だとか、香港のカンフー映画にオマージュをささげたような内容となっています。なので、その辺の事情を知っていないと、この作品は面白くないはずです。せいぜい変な日本描写に笑えるのと、やりすぎ感のあるスプラッターアクションシーンが楽しめるかどうかといったところではないでしょうか。実際映画館に観に行ったときも 20 代の若者は変な日本の描写で笑っているだけで作品のツボは押さえていなかったように思います。

 変な日本描写と書きましたが、他の作品の様に日本に対する知識の無さによる変な描写ではないのがこの作品の肝です。これはタランティーノが若かりし頃、観続けていた東映ヤクザ映画だとか、黒澤明の映画だとかの印象を彼なりにオマージュしていますので、彼の脳内での日本観がこうなっているのであって、あえて考証をしようとしていないのだと思います。だから変な日本描写が多いですが、それはそれで間違っていないのではないかと思います。特にリューシー・リュー扮するオーレン・石井配下のアナーキー 88 との戦いはそんな印象が強いですし、オーレン石井とのラストバトルはもう時代劇の世界です。何せ雪降る中、ししおどしが鳴っているんですから。

 そういう意味では、彼が敬愛する千葉真一が、沖縄の寿司屋の親父で実は刀作りの名人、ハットリ・ハンゾウという役を与えられているのも意味があることなのです。この役は彼じゃないといけなかったのだろうと思います。彼が千葉真一の映画が好きなのは有名ですし(タランティーノ脚本、トニー・スコット監督の「トゥルー・ロマンス」で冒頭に主人公は千葉真一主演の映画を見ているシーンがあります)、憧れのスターに出演してもらうという夢がかなったのではないではないでしょうか。更にその脇を固めるは大場健一。彼は千葉真一の主催していたジャパン・アクション・クラブの一員でもありますし、日本の子供向け特撮番組「宇宙刑事ギャバン」の主役を演じていたりすることろもタランティーノなら知っていたような気がします。

 もう一つオマージュをささげているのは 70 年代のカンフー映画でしょう。特にクライマックスのブライドと、栗山千秋扮するゴー・ゴー・夕張の決闘シーンなどはまさにジャッキー・チェンが人気が出始めて様々なカンフー映画が日本の TV で観られるようになった時のことを思い出してしまいます。それ以前に、クライマックスのブライドの衣装がブルース・リーの幻の遺作となってしまった「死亡遊戯」のアクションシーンでおなじみのトラックスーツ姿だと気づいた人がどれだけいるでしょうか。僕個人は、ロバート・クローズ監督版の「死亡遊戯」、ブルース・リーが元々考えていた「死亡的遊戯」のうちクライマックスのアクションフッテージを可能な限り見せてくれた日本版・大串利一監督の「BRUCE LEE in G.O.D 死亡的遊戯」、米国版・ジョン・リトル監督の「BLUCE LEE:A WARRIOR’S JOURNEY」と色々観てますので、ユマ・サーマンのトラックスーツ姿を見たとき、「おお、やっちゃったか ! 」と思ったものですが、タランティーノも好きなんでしょうね、ブルース・リーが。。そういえば、アナーキー 88 がかぶっているマスクは、ブルース・リーが出演していた TV ドラマ「グリーン・ホーネット」のオマージュですね。

 また映像自体もオマージュだらけと言ってもいいのではないでしょうか。オープニングロゴ自体が 70 年代の香港映画っぽいですし、画面分割シーンなんて手法も 70 年代的、挙句に途中挿入されるアニメは最初は劇画調で途中から大友克洋監督のアニメ「アキラ」ぽい感じになるといった具合に映画好きに対する挑戦とも思えます。またタランティーノお得意の時系列入れ替えをしているのも面白い試みです。

 内容そのものはストレートな復讐劇でありますからさほど言及するところもありませんが、気になったところといえば、この Vol.1 ではメインとなる登場人物は千葉真一を除けばすべて女性という点でしょうか。それどころか殺し屋の軍団自体がほとんど女性である点も気になるところです。台詞からすると、ブライドのお腹の中にいた胎児はボスであるビルの子のようですし、昏睡状態に陥っているブライドを殺そうとするダリル・ハンナ扮するエル・ドライバーもどうもビルとは組織のリーダーと配下の関係を越しているような印象を受けます。さらに今回ブライドが復讐を遂げる相手はヴィヴィカ・A.フォックス扮するヴァーニタ・グリーンと、オーレン・石井の二人。更にクライマックスのオーレン石井との死闘及びエンドクレジットで流れる曲が梶芽衣子の「恨み節」。かなり女性がメインの作品という印象を強く感じます。

 映像は、あえて 70 年代風の色調にはしなかったようですが、あまりにヴァイオレンスシーンが多くて、アメリカでは成人指定を受けそうになってしまった為、アクションシーンの一部でモノクロシーンにしている箇所もあります。それ以外のモノクロシーンは、過去の回想として使っているようです。音響は、派手です。DTS にて鑑賞しましたが、意図的なサウンドフィールドを形成しているように感じました。つまり劇画調ということです。

 この作品が珍しいな、と思ったのは、リージョン 1 の規制がかかっているにもかかわらず日本語字幕が収録されている点です。今回はありがたく日本語字幕で鑑賞させてもらいましたが、この辺もタランティーノのこだわりでしょうか。それとトリビアですが、ハットリ・ハンゾウの作った刀の証の紋章、よく見ると沖縄のシーサーだったりします。何故シーサー ?

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