ドラキュラ(4K UHD/iTunes Movies)/Apple TVで観た映画のレビュー

ドラキュラ(4K UHD/iTunes Movies)

No Image 原題 BRAM STOKER’S DRACULA
レーベル SONY PICTURES HOME ENTERTAINMENT
制作年度 1992年
上演時間 128分
監督 フランシス・フォード・コッポラ
出演 ゲイリー・オールドマン、ウィノナ・ライダー、アンソニー・ホプキンス
画面 1.85:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

 15世紀、トランシルヴァニアはトルコ軍の攻撃を受ける。トルコ軍の攻撃をドラクル伯爵は防ぎ、トランシルヴァニアを救うが、トルコ軍のデマを信じたドラクル伯爵の妻は、自殺を図ってしまう。妻を失ったドラクル伯爵はキリスト教を呪い、永遠の命を得て吸血鬼ドラキュラ伯爵として生き続ける。その後、19世紀になり、イギリスに住むジョナサン・ハーカーはドラキュラ伯爵がイギリスに土地を購入したいという意図を聞き、トランシルヴァニアに赴く。しかし、ドラキュラ伯爵は吸血鬼だったので、ジョナサンを自分の城に囲い続け、解放せずにいた。ドラキュラ伯爵はロンドンに移動し、死んだ妻にそっくりなミナという女性と知り合う。ミナはジョナサンと結婚する予定だったが、ドラキュラ伯爵に惹かれていく。そのドラキュラ伯爵は血を求めてミナの友人であるルーシーに襲いかかり、ルーシーは次第に衰弱していく。その事実を知った医者は、ヴァン・ヘルシング教授に事態の収拾を願いでる。ヘルシング教授は吸血鬼の存在を感じ取り、吸血鬼ドラキュラを始末するために奔走する。

レビュー

 映画の初期の時代から幾度となく映像化されている吸血鬼ドラキュラの物語を、原作者であるブラム・ストーカーのストーリーに可能な限り忠実に映像化し、ドラキュラ伯爵とミナの恋愛物語として構築しているのが、この「ドラキュラ」であります。批評家や観客の評価は水準並みですが、興行収入的にはヒットを記録し、ドラキュラの別の一面を描いた作品として成立しているのが特徴です。

 ドラキュラの映画というと、大抵はドラキュラが美女に噛みつき、血を吸うホラー映画として成立しているのが普通ですが、この「ドラキュラ」は、神のために戦ったのに妻を失い、神を呪うドラクル伯爵が数百年の時を経て、19世紀のロンドンで死んだ妻にそっくりな女性ミナと出会い、ドラキュラとミナの恋愛ストーリーとして話が展開しているのが、特徴的かなと思います。ラブ・ストーリーが異質であるとはいえ、成立しているので、ドラキュラ伯爵の吸血鬼としての怖さはあまり感じられないところがあるといえます。

 また、一方でミナがジョナサン・ハーカーという夫がおりながら、ドラキュラに惹かれていくという展開も、一種の不倫映画として成立しているところがあり、ジョナサンの影が薄いところにも話の特徴があるといえます。そのジョナサンもドラキュラ伯爵の城で吸血鬼の女性たちに性的接触を受け、命が奪われていくところは、ミナの行為と含め、互いにパートナーに対する不実感が漂っているかと思います。

 ドラキュラがロンドンに来てから獲物として狙うのがミナの友人であるルーシーで、彼女はドラキュラに噛み付かれて血を吸われる役として、その存在感を強くしています。彼女に求愛する男性は何人もいますが、その中の一人は病院の医師であり、彼がルーシーの異常に気付いてヴァン・ヘルシング教授に救援を依頼するところは、物語の重要なポイントであるといえます。精神病院にはジョナサンの前にドラキュラ伯爵のもとに行き、精神異常を起こしてしまったレンフィールドという男がおり、彼の存在がホラー的要素を持っているといえます。

 ドラキュラに対して戦いを挑むのは、ヴァン・ヘルシング教授であり、アンソニー・ホプキンスがドラキュラ退治を狙うヘルシング教授を熱演しています。ヘルシング教授の存在感は結構強く出ており、彼ならばドラキュラの呪いを解くことができるのでは、という期待感と安心感を感じ取ることができます。ただ、ドラキュラを最後に対峙するのはヘルシング博士ではないところが、この映画のラブ・ストーリーたる所以かなといえなくもないでしょう。

 映像は4K UHD/DOLBY VISIONで収録されていますが、システムの都合上HDR10で鑑賞しています。1992年の製作ということもあり、マスターが35mmフィルムであるために、時々グレインノイズが多めに出てくるところがあります。HDR10の輝度は適切で、色乗りも十分でありますが、赤っぽい画面や室内の暗い画面が多く、映像表現的にはきついシーンが続きます。かつてレーザーディスクで見た時にはこの辺の表現が仕切れなかったところでもありますが、今回は4K UHD/HDR10での収録ということもあり、輝度と色の再現性はかなり高いものであるといえます。音響は劇場上映時にはDOLBY DIGITALでの上映でしたが、今回はDOLBY ATMOSで再ミックスされて収録されています。劇場公開時には日本でのDOLBY DIGITAL初披露の映画として上映され、前後左右の音の移動感を見事に再現していましたが、今回のDOLBY ATMOSミックスでは、その前後左右の動きの上に頭上に広がる音場感も作り出され、音に包み込まれる感覚がかなり強いです。ドラキュラ伯爵の台詞にエコーがかかるシーンでは、三次元的に音が広がり、環境音は空間的広がりを持っています。また、サラウンドチャンネルでの音の移動感も満載で、1992年の映画のマスターとは思えない効果的音響を保っています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました