MINORITY REPORT/マイノリティ・レポート/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

MINORITY REPORT

MINORITY REPORT DVDジャケット 邦題 マイノリティ・レポート
レーベル DREAMWORKS HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2002年
上演時間 146分
監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 トム・クルーズ、コリン・ファレル、マックス・フォン・シドー
画面 2.39:1/アナモルフィック
音声 DOLBY DIGITAL 5.1ch-EX 英語 / DOLBY DIGITAL 2.0 英語
DOLBY DIGITAL 5.1ch フランス語 / DTS 5.1ch 英語
字幕 英語、スペイン語、フランス語

あらすじ

西暦2054年、ワシントンD.C.では、超能力者による未来予知によって犯罪が激減していた。犯罪者が犯罪を起こす前に予知によりその人物を逮捕してしまうからである。そんなある日、犯罪捜査チームのチーフであるジョンが殺人を犯す、という予知をされてしまう。自分が犯罪を犯すはずがない、と信じるジョンは仲間から逃走し、真実を追い始めるのだが、その予知の裏には彼の過去が絡み合っていた。

レビュー

あの大スター、トム・クルーズがスピルバークと組んだ、ということだけでも驚きのこの作品ですが、原作が SF 作家として(死後)名高いフィリップ・K・ディックと知ってもっとびっくりの作品です。

ディックの作品といえば、よく「現実とはなんなのか」、「自分はいったい誰なのか」ということをテーマにした作品が多いことでも知られてますが、今回のこの「マイノリティ・レポート」もそういう「現実とはなんなのか」、「真実はどこにあるのか」というテーマは継承されていたように思います。予知能力を持ったものが見る未来を元に犯罪を起こしていない者を逮捕してしまう、という設定は一見究極の安全を保障しているようで、個人の自由を間違いなく奪ってしまうような気がします。この作品でも最後は未来予知が必ずしもすべてではないという描き方をしていたことでもそれは明らかだと思います。

個人の自由を奪う、という点で言えば作品中、人間の目をチェックし身元を確認するシステムがたびたび登場しますが、これなどは現在の生体認証システムの発展系なのではないかな、と思ってしまいます。それが絶えず個人の行動を見張っている、というのは不気味ですね。作品中、街中のCMが個人に向けて語りかけてくる点なんかは特に気味悪いものを感じます。こういったシステムが既に現実化しつつあるところがリアリティさを強調しております。

逆に、舞台がワシントンD.C.ということになってましたが、自分で実際に旅行した感想から言うと何か街の描き方に違和感を感じます。ワシントンというよりはニューヨークを舞台にしたほうがリアリティが増したような気がしますね。実際現在のワシントンD.C.にはそんな高いビルディングなどないですし、多分これからもつくられないでしょう。あの町は政治の街ですから。

少々上映時間が長かったのも気になる点です。もともとの原作は短編だったと思いますので(未読ですが)、2時間程度の上映時間でも長いかもしれません。多分相当脚色しているのだろうな、と思います。それと、原作と比較しての出来がどうだったのかも気になるところです。この作品単独で観た限りでは二転三転するストーリー展開に楽しませてもらいましたが、原作だともっとシンプルかつどんでん返し度が高かったのかも知れません。以前ポール・ヴァーホーベンの「トータル・リコール」を映画と原作で見たとき、原作のどんでん返し度のすごさに驚いた記憶がありますので、こちらも機会があれば原作を読んでみたいところです。(「トータル・リコール」は監督の趣味を楽しむ映画だと思いますのでディック的なものを期待してはいけないのかもしれません。)

画質は、最近スピルバークがお気に入りの様の銀残しといわれる手法を用いて、カラーなのにモノクロっぽい、そして白と黒のコントラストがくっきりした画質を意図的に作っています。これは多分描こうとした未来は冷たいものだというイメージなのだと思います。大体SF映画で未来を描いたときにはディストピア物になっているのが定番ですから今回もそれに倣ったのかもしれません。サウンドはDTSも入っているのですがあまり迫力のある音響、という感じではないです。もちろん音質的にはすばらしいのですが、音圧が低いのではないかという印象です。

蛇足ですが、映画の冒頭、犯罪予定者を逮捕するときのシーン(家の屋根から警察が突入するシーン)を見ていると、テリー・ギリアムの最高傑作といわれる「未来世紀ブラジル」を思い出してしまうのです。こちらの作品も管理国家で自由に生きることの難しさをブラックコメディ調で描いていて、必見の作品だと思います。また、ディック関連で言えば、「ブレード・ランナー」は外すことは出来ないと思います。原作とはストーリーが違うにもかかわらず、「人間とはなんなのか」というテーマに真正面から挑んだ傑作です。(「ブレード・ランナーは」はビデオマニアなら一度は観ている作品だとは思いますが、未見の方は是非。ただし面白い作品ではないですよ。)

2005年8月6日追記

 少し前に原作版を読んでみましたが、ラストが映画と正反対の落ちになっていてびっくり。原作版の落ちの方がよかったような気がしますが、スピルバーグ&トム・クルーズのコンビじゃ絶対無理なラストだな、と納得してしまいました。何せトム・クルーズのイメージが狂いますから。

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