『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』DVDレビュー(輸入盤)|“他人の記憶”に溺れる快楽と暴力——ミレニアム前夜、LAが見た悪夢【SD(レターボックス)/ Dolby Digital】

『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』DVDレビュー(輸入盤)|“他人の記憶”に溺れる快楽と暴力——ミレニアム前夜、LAが見た悪夢【SD(レターボックス)/ Dolby Digital】

キャスリン・ビグロー監督がジェームズ・キャメロンの原案を映画化。頭部デバイス〈SQUID〉で他人の体験を追体験できる近未来LAを舞台に、汚職、暴動、殺人が渦を巻く。主観ショットと強烈なサウンドで“体感”を生む演出は今見ても特異。輸入盤DVDはTHX監修の音響が見どころだが、映像はレターボックスの宿命で減点となる。

『ストレンジ・デイズ/1999年12月31日』DVD 基本仕様

Strange Days DVDジャケット 邦題 ストレンジ・デイズ/1999年12月31日
原題 Strange Days
レーベル 20th Century Fox Home Entertainment
制作年度 1995年(劇場公開版)
上映時間 145分(劇場公開版)
監督 キャスリン・ビグロー
出演 レイフ・ファインズ、アンジェラ・バセット、ジュリエット・ルイス
画面 2.35:1 / SD / レターボックス / SDR(ノンアナモルフィック)
音声 Dolby Digital 5.1ch 英語 / Dolby Digital 2.0ch 英語・フランス語
字幕 英語、スペイン語
リージョン DVD=リージョン1(北米専用)
パッケージ DVD 1枚(本編+特典) / THX監修

あらすじ(短縮版)

1999年大晦日前夜のロサンゼルス。元警官のレニーは〈SQUID〉と呼ばれる“記憶ドラッグ”の密売で糊口をしのいでいた。人気ラッパー殺害の裏で、かつての情婦が残した“死の体験”が発見され、レニーは用心棒メイスとともに巨大な陰謀へ引きずり込まれていく。

あらすじ(詳細)

暴動の火種が燻るLAで、元警官レニー(レイフ・ファインズ)は〈SQUID〉=他人の五感と感情を録再生できる違法メディアの売買で生きる。知人の売春婦アイリスが命の危険を訴えるが、彼女は殺害され、“殺される瞬間”を収めたクリップを残す。かつての恋人フェイス(ジュリエット・ルイス)にも魔の手が迫ると知ったレニーは、タクシードライバーにして元同僚のメイス(アンジェラ・バセット)と真相を追う。

人気ラッパーの射殺、腐敗した警官たち、そして〈SQUID〉が増幅する欲望と暴力——すべてがミレニアム前夜に収束する中、レニーは過去への未練と現実の地獄のあいだで揺れ続ける。

見どころとテーマ

  • “体験”の映画化:主観長回し&多層サウンドで〈他人の記憶〉を身体化。VR時代を先取りした没入演出。
  • 強い女性の駆動力:メイスの“守る力”が物語を牽引。ビグロー作品らしい矜持が立つ。
  • 快楽と中毒の倫理:記憶の覗き見が暴力と搾取を拡大する“メディアの暗部”を描出。
  • ミレニアムの悪夢:暴動、差別、汚職が渦を巻くLAの熱と不安。時代錯誤性すら含めて“90sの終末感”。
  • キャメロンDNA×ビグロー流:長尺のサスペンス運行と“強いヒロイン”の合流点。

映像レビュー【SD / レターボックス / SDR】

2.35:1をレターボックス収録(ノンアナモルフィック)。ワイドTV視聴ではズーム必須で、実効解像感は明確に低下。初期デジタルマスター由来の甘さと粗いグレイン、やや薄い発色で、夜景の黒は沈みきらず。構図や照明の妙は伝わるが、Blu-rayと比較すれば見劣りは否めない。輸入盤DVDゆえの“古いマスター映像”である点は留意すべき。

映像スコア:62点

音響レビュー【Dolby Digital 5.1ch / 2.0ch】

THX監修らしく5.1chは設計が優秀。〈SQUID〉主観のシーンでは前後左右の移動と残響が身体に貼りつき、群衆・銃声・車両ノイズの層も立体的。ビットレートの限界はあるが、ダイアログの抜けは良好で、BGM/環境の分離も明瞭。2.0chは情報量が縮むため、基本は5.1ch一択。

音響スコア:82点

総評

“他人の体験”を売買するというアイデアを、映像と音でここまで肉体化したSFスリラーは稀有。前半のタメや90年代テイストの古さはあるものの、メディアと暴力をめぐる視点はいまなお鋭い。
輸入盤DVDは音響◎・映像△のアンバランス仕様だが、Blu-ray未発売ゆえにコレクション的価値は高い。リージョン環境が整うなら、体験して損はない一本である。

総合スコア:76点

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