氷がすべてを隔てても(DOLBY VISION/Netflix)/Apple TVで観た映画のレビュー

氷がすべてを隔てても(DOLBY VISION/Netflix)

No Image 原題 AGAINST THE ICE
レーベル Netflix
制作年度 2022年
上映時間 103分
監督 ペーテル・フリント
出演 ニコライ・コスター=ワルドー、ジョー・コール、ハイダ・リード
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

 1909年のグリーンランドにデンマークのアラバマ号がいた。グリーンランドは当時ピアリー海峡を隔ててピアリーランドとグリーンランドに分かれていて、アメリカはピアリーランドの所有権が自国にあると主張していた。グリーンランドとピアリーランドの所有権がデンマークにあると主張する政府は、遠征隊を1905年に送り込んだのだが、遠征隊の消息が不明になっていた。そして1909年にアラバマ号がグリーンランドに出向き、その隊長であるミケルセンは、船のエンジニアであるアイバーソンと共に、行方不明になっている遠征隊の記録をもとに、グリーンランドとピアリーランドがデンマークの所有地であることを証明しようとしていた。ミケルセンとアイバーソンの二人は、ピアリーランドの土地の状況と行方不明になった遠征隊の記録を入手しようと、ピアリーランドまで遠征する。幾多の困難を乗り越え、ピアリーランドにたどり着いた二人は、ピアリーランドが海峡で分け隔てられておらず、グリーンランドの一部であることと、消息不明だった遠征隊の記録を入手し、アメリカの主張が無効であることを確認した。しかし、帰路に着いた二人は、アラバマ号がすでにグリーンランドを離れていて、アラバマ号の乗組員が建設した家で二人きりのサバイバルを繰り広げざるを得なくなる。一方帰国したアラバマ号の乗組員たちは政府に二人の救助の依頼をするのだが、政府の対応は芳しいものではなかった。

レビュー

 1909年に起きた実話を映画化した作品が、この「氷がすべてを隔てても」です。この映画の原作は、物語の主人公であるミケルセン隊長であり、彼の体験した内容を書籍化し、それをもとに映像化したものになっています。デンマーク映画ではありますが、会話の言語は英語であります。Netflixオリジナル映画として配信されていますが、評価は芳しいものではなく、Rotten Tomatoesの批評家評価は55%、観客評価は47%と厳しい評価になっています。

 物語は、1909年のグリーンランドで、当時グリーンランドの所有権をめぐって争っていたデンマークとアメリカの論争に対して決着をつけるべく、グリーンランドに遠征をしたデンマークの船アラバマ号と、その隊長であるミケルセンと、彼と行動を共にすることになるアイバーソンが真実を調査にいくという話であります。それに加えて、グリーンランドという極寒の土地での二人のサバイバル生活を克明に描いた生存の物語でもあります。

 ミケルセンは、最初別のクルーと共にピアリーランドに赴こうとしますが、そのクルーが負傷してしまい、別のクルーをパートナーとして探しているところに、アラバマ号のエンジニアだったアイバーソンだけが彼のパートナーになることを了解し、ピアリーランドにミケルセンとアイバーソンの二人だけで、犬ぞりを使って遠征に向かうことになります。その遠征はグリーンランドという極寒の土地ですから、数々の困難が待ち構えています。しかし、映画はピアリーランドに辿り着くまでは意外とあっさりと描かれています。

 物語が急転するのはピアリーランドがグリーンランドの一部であることが分かり、アラバマ号に証拠を持って帰路に着く辺りからです。なんとアラバマ号は彼ら二人を待つことなくグリーンランドを離れてデンマークに帰途に着いてしまい、ミケルセンとアイバーソンの二人は、1年間分の食料と共にアラバマ号のクルーが建てた家に取り残されてしまいます。そこから物語は淡々と進みながら、二人のサバイバルが始まることになります。

 物語が起伏のあるストーリーではないので、ミケルセンとアイバーソンの二人に襲い掛かる数々の事件も意外にあっさりしていて、主人公たちに感情移入する視点を持ち得ないまま、物語は進んでいきますが、ミケルセンが後半で精神に異常をきたし、アイバーソンが持っていた写真に写っていた女性と交際するという幻覚を見る姿は、さすがに物語上どうケリをつけるのか、気になる展開になっています。

 アイバーソンも最初はただのエンジニアであり、極寒の大地を遠征するスペックを持ち合わせておらず、途中で愛犬や犬ぞりに乗せた物資を失うというアクシデントに見舞われますが、ミケルセンと違って精神に異常をきたすこともなく、なんとかサバイヴしていく姿は、逆にミケルセンの状況と違って安心できるキャラになっていると思います。彼らが二人きりで3年近くもグリーンランドで生活していく姿は、グリーンランドの大自然と対比して、孤独感を醸し出している部分はあります。

 物語は大半が二人で孤独にサバイヴしていく様を描いていますが、途中でデンマーク政府とアラバマ号のクルーが二人を救助に行くかどうかの議論を交わしているシーンや、ミケルセンの見る幻覚により、ミケルセンが女性と会話を交わすシーンは、より深く二人だけでグリーンランドで生活していく様を浮かび上がらせていて、グリーンランドの広大な氷平原との対比が明らかにされています。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。IMDbにも仕様は描かれていないのですが、NetflixのDOLBY VISIONマークがついているオリジナル映画は、4K/HDRでの仕様で配信されていますので、ネイティヴ4Kでの収録と見て間違いないと思います。4K/DOLBY VISIONの映像は広大なグリーンランドの氷平原を見事に描写していて、寒さが視聴者に伝わってくるかのような色彩や、何もない風景の描写に力点が置かれていると思います。音響はDOLBY ATMOSでの収録になっていて、グリーンランドの吹雪の様子や、熊の襲撃、ライフルの発砲音などでイマーシヴなサラウンドが構築されています。音楽も頭上に広がるようになっていて、三次元感が強目に出ています。

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