EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE(4K UHD Blu-ray)/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE(4K UHD Blu-ray)

EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE 4K UHD Blu-rayジャケット 邦題
レーベル LIONSGATE HOME ENTERTAINMENT
制作年度 2022年
上映時間 139分
監督 ダン・クワン、ダニエル・シャイナート
出演 ミシェル・ヨー、ステファニー・シュー、キー・ホイ・クワン
画面 1.33:1&1.85:1&2.00:1&2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 英語、スペイン語、中国語

あらすじ

 コインランドリーの経営をしているイヴリンは、中国からの移民者であり、家庭で問題を抱えていた。夫であるウェイモンドからは離婚を申し立てられており、娘であるジョイの性的嗜好の告白に悩み、年老いた父の看護にも疲れていた。そんな中、コインランドリーの経営を拡張し、カラオケボックスを増設しようと融資の申し込みに行ったイヴリンは、融資に行く途中、ウェイモンドからいきなり「お前は世界を救うただ一人の存在だ」と言われ、困惑する。しかし、融資の審査途中でイヴリンの元にマルチバースの世界が現れ、別の次元の人間がイヴリンを攻撃し始めたことから、イヴリンはその攻撃を交わさざるを得なくなる。ウェイモンドも普段の夫ではなく、アルファバースの世界のウェイモンドの意識に変わっており、イヴリンに「マルチバースの世界がジョブという敵に襲撃されていて、それを阻止できるのはこの世界にいるお前だけだ」と告げる。かくして、イヴリンはマルチバースの敵と戦う羽目になり、自身もマルチバースの世界から格闘術をマスターして、マルチバースの安定を求めるために奮戦することになる。

レビュー

 良質な映画を作り続けている独立系映画会社、A24が制作をして、同社の映画の中で過去最高の興行収入をあげている作品が、この「EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE」です。全世界での興行収入は1億ドルを越してまだまだヒットを続け、アメリカでは2022年3月25日に限定公開を開始してから口コミで評判が広がり、拡大公開に移行し、ハリウッドのボックスオフィスのチャートでずっとトップテン圏内に位置し、ストリーミング配信や4K UHD Blu-rayがリリースされた後でもまだ劇場公開を続けているという、オバケ映画であります。批評も高水準で評価され、Rotten Tomatoesの批評家評価は95%、観客評価も89%と極めて高い水準を保っています。

 ストーリーは、今流行りのマルチバースの世界を描いたアクションコメディ映画ではありますが、主演のミシェル・ヨーをはじめ、主役クラスの俳優がアジア人で占められていることから、アジア系観客をターゲットにした映画と見てよさそうではあります。また、映画の中でかなりの割合で中国語が使われていることから、中国圏内の配給を意識しているとも言えそうです。もちろん、アジアが生んだカンフー・スター、ミシェル・ヨーが主演というところから、映画はカンフーを使ったアクションシーンが多く、その方面でも映画を楽しむことができます。

 このマルチバースの世界観がこの映画では秀逸で、アルファバースにいるウェイモンドがイヴリンに「世界を救え」と指示するところから物語は主題に入っていきますが、そのマルチバースの表現が面白く、画面サイズが1.33:1、1.85:1、2.00:1、2.39:1とコロコロ切り替わり、画面サイズによってマルチバースの世界観を表現しているところは、魅力的かなと感じます。

 また、映画の文法を破壊しているのも、この映画の魅力の一つであり、マルチバースにおけるアニメ描写に始まり、イヴリンが映画スターである世界の表現、これはミシェル・ヨーがスターを演じるメタ・フィクションそのものであるという展開が繰り広げられたり、現実の世界を映画の中の出来事として劇場公開されるという手法を使ったり、挙句の果てにはイヴリンと娘のジョイが石になってしまい、会話がずっと字幕で綴られるという展開まで、想像だにしない描写が繰り広げられているのも、特徴であります。現実の世界が映画の中になる展開では、物語途中で「THE END」とクレジットされてしまい、物語が終わっていないのにどうこの後展開するのだ、と意表をつく演出も繰り広げられています。

 世界を救うためにマルチバースで戦うイヴリンの姿を描いたアクションコメディ映画ではありますが、その本質は家族愛に尽きるところも、この映画の魅力の一つであると言えます。現実の世界では離婚を突きつけているウェイモンドが実はマルチバースではイヴリンを世界を救うただ一人のキャラとして、庇護をしていきますし、イヴリンの娘であるジョイは実はマルチバースの破壊を目論む敵であるジョブであったり、年老いた父であるゴンゴンがイヴリンを見捨てようとするしで、壊れかかった家族がどう元の鞘に戻るのか、という本質が物語の中に隠されています。

 映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。撮影フォーマットは2.8Kや3.4Kであり、それを4Kのマスターデータにまとめているので、ネイティヴ4Kではあるものの、実は4Kの解像度には満たないという実情があります。とはいうものの、映画を見ている最中ではその辺の解像度を気にするほど映像に不満を感じるところはなく、高い解像度とDOLBY VISIONのHDRによる色彩管理が映像への没入感を高める効果を発揮しています。シーンによって映像の質には差が意図的にありますので、全てのシーンで高画質、高色彩というわけでもないのですが、それでも魅力的な映像に仕上がっていることには変わりありません。

 音響はDOLBY ATMOSの英語のみ収録されています。映画の展開に夢中になっていたので、DOLBY ATMOSの効果をチェックできるほど音に気を使っていなかったのですが、映画に夢中になるということはそれだけ音響効果もイマーシヴなサラウンドをデリバリーしていることになり、効果を発揮しているのだろうということは言えます。

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