『ラストエンペラー』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|帝位と個人のはざまで揺れる溥儀の生と残響【Dolby Vision / dts-HD MA】

『ラストエンペラー』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|帝位と個人のはざまで揺れる溥儀の生と残響【Dolby Vision / dts-HD MA】

ベルナルド・ベルトルッチが描く20世紀中国史の奔流。清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀の波瀾の生を、4K Dolby Visionで再体験できる決定版。紫禁城での史上初の本格ロケ、そしてアカデミー賞9部門受賞(作品賞ほか)という映画史的金字塔に、最新HDRグレーディングが新たな光を当てる。

『ラストエンペラー』4K UHD Blu-ray 基本仕様

THE LAST EMPEROR 4K UHD Blu-ray UKジャケット 邦題 ラストエンペラー
原題 The Last Emperor
レーベル ARROW VIDEO
制作年度 1987年(劇場公開版)
上映時間 163分(劇場公開版)(劇場公開版)
監督 ベルナルド・ベルトルッチ
出演 ジョン・ローン, ジョアン・チェン, ピーター・オトゥール, 坂本龍一
画面 2.39:1 / Dolby Vision
音声 dts-HD MA 2.0ch(北京語・英語・日本語), dts-HD MA 5.1ch(北京語・英語・日本語)
字幕 英語
リージョン UHD=リージョンフリー / 拡張版BD=リージョンB
パッケージ UHD 1枚(劇場公開版) / BD 1枚(拡張版=TVロング・エディション)

あらすじ(短縮版)

1950年、戦犯として連行された元皇帝・溥儀。三歳で紫禁城に即位した彼の栄華と孤独が、現在と回想の交錯で立ち上がる。

あらすじ(詳細)

収容所で告白を迫られる溥儀。母と引き離され閉ざされた宮廷で育ち、英国人家庭教師ジョンストンから外界を知るも、辛亥革命、日本の侵略、満州国“皇帝”就任と傀儡化、二人の妃との破綻――歴史の奔流は意志を呑み込む。敗戦後は“戦犯”として自らの過去と向き合う。豪奢な宮廷色と収容所の寒色が、人生の落差を視覚化する。

見どころとテーマ

  • 映画史的到達: 紫禁城ロケの偉業と、アカデミー賞9冠。
  • 権力と個の相克: “象徴”の空虚と、“個”の回生。
  • 色彩の対位法: 金赤の宮廷 × 冷色の収容所。
  • 音楽の記憶: 坂本龍一らが紡ぐ喪失と回復の旋律。
  • 歴史の暴力: 満州国の傀儡化=“利用される個人”。

4K UHD Blu-ray 映像レビュー【Dolby Vision】

35mm原版スキャンのネイティヴ4K。ブックレット記載のレストア工程(傷・埃除去+HDR再グレーディング)により、Dolby Visionは金赤/朱/翡翠の深み、絹の反射、石畳の湿度を豊かに再現。劇場公開時の印象を保持しつつ、宮廷の華やぎ収容所の冷光のコントラストが一段と明晰。グレインは健全で、精細さと質感の両立が秀逸。

映像スコア:93点

音響レビュー【dts-HD MA 2.0ch / 5.1ch】

オリジナルのDolby Stereo相当を保持する2.0chは、AVアンプのマトリクス拡張(例:dts Neural:X)で包囲感が自然拡張。群衆・儀礼・環境の空気感が空間的に立ち上がる。5.1chはスコアの広がりと定位に優れ、儀礼音や環境の奥行きが増す。年代相応のレンジながら台詞は明瞭、音楽の伸びも良好。

音響スコア:86点

特典映像一覧と評価

特典 / 収録内容媒体新規収録画質備考
劇場公開版(本編)UHD(Dolby Vision)ネイティヴ4K英語字幕
拡張版(TVロング・エディション)Blu-ray(SDR)HDリージョンB固定/4Kでは未収録
ブックレット「ABOUT THE RESTORATION」冊子レストア工程ノート・制作背景

過去メディア(LD/Blu-ray等)との比較

旧SDRマスター比で、Dolby Visionにより金赤系の飽和と暗部沈み込みが改善。ネイティヴ4K由来の微細描写(衣装織り・装飾・肌理)が大幅向上。拡張版BDはリージョンB固定のため視聴環境を選ぶ一方、劇場公開版UHDはリージョンフリーで再生安心度が高い。

総評

“象徴”として生まれた人が“個”として生き直す——その遠い道行きを、HDRの光がいま再定義する。映画史的価値とホームシネマ満足度をともに満たす、4K/HDRの恩恵を体感できる決定版。拡張版の同梱もコレクション性を高める。

総合スコア:92点

関連レビュー

コメント

タイトルとURLをコピーしました