トータル・リコール (1990) 4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|記憶と現実が反転する火星SFアクション【Dolby Vision / Dolby Atmos】
フィリップ・K・ディック原作「追憶売ります」を、ポール・ヴァーホーヴェンが肉体派アクションへ昇華。夢と現実の境界がゆらぐ記憶SFを、レトロフューチャーな美術と実物特撮で疾走させる一本。4K Dolby Vision/Dolby Atmosで“火星の赤”と銃声の余韻が鮮明に甦る。
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邦題 | トータル・リコール |
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原題 | TOTAL RECALL | |
レーベル | Lionsgate Entertainment(ビデオ・マスター:StudioCanal 系) | |
制作年度 | 1990年(劇場公開版) | |
上映時間 | 113分(劇場公開版) | |
監督 | ポール・ヴァーホーヴェン | |
出演 | アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、シャロン・ストーン | |
画面 | 1.85:1 / 4K / Dolby Vision | |
音声 | Dolby Atmos 英語 / DTS 2.0ch 英語 / DTS-HD MA 5.1ch フランス語 / PCM 2.0ch スペイン語 | |
字幕 | 英語、フランス語、スペイン語 | |
リージョン | UHD=リージョンフリー / Blu-ray=リージョンA | |
パッケージ | UHD 1枚(本編+特典)+ Blu-ray 2枚(本編+特典) |
あらすじ(短縮版)
2084年。建設労働者クエイドは火星の夢に取り憑かれていた。記憶を売る〈リコール社〉で「スパイ冒険プラン」を購入するが、封印された過去が暴走し、妻や同僚が突然“敵”へ。真相を求め、彼は火星へ向かう。
あらすじ(詳細)
クエイドはリコール社で「火星+スパイ」の人工記憶を挿入しようとするも、施術中に潜在記憶が覚醒。自分が“ハウザー”として火星の政情に関わっていた可能性が浮上する。帰宅すると妻ロリは正体を隠した工作員、背後ではリクター率いる部隊が追撃。命からがら火星へ渡ったクエイドは、独裁者コーヘーゲンに抵抗するミュータントの反乱軍と合流し、指導者クアトの導きで火星に眠る“鍵”へと迫っていく。
見どころとテーマ
- 記憶の揺らぎ: 夢と現実が反転するディック性を残しつつ、娯楽性を前面化した痛快構成。
- 90年代レトロフューチャー: ロボタクシー、巨大変装スーツ、鼻腔トラッカー…今見ると味わい深い未来像。
- アクションと女性像: シャロン・ストーンの“裏切りの妻”が鮮烈。肉弾戦とキャットファイトが強い推進力に。
- 実物特撮の説得力: CG前夜のメイク&アニマトロニクスで造形されたミュータント群像が忘れ難い。
映像レビュー【4K / Dolby Vision】
35mm撮影 → 新規4Kスキャン/ネイティブ4Kマスター。グレインは豊かでフィルム質感を良好に保持。Dolby Visionは極端なピーク演出は控えめだが、火星の赤味・砂塵・暗部のコントラストを的確に補強。90年代らしい色設計を崩さず、旧世代メディアでは表現しきれなかった階調が開く。
映像スコア:85点
音響レビュー【Dolby Atmos】
オリジナルDolby Stereo SRからのリミックス。上下方向を含むオブジェクト配置が巧みで、銃撃・爆発・環境音が三次元に展開。レンジ自体は当時相応だが、立体配置の妙で没入度が高い。BGMの厚みも適切で、セリフの明瞭度は安定。
音響スコア:87点
特典映像
特典内容 | 新規 | 画質 |
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オーディオ・コメンタリー | — | — |
Total Excess: How Carolco Changed Hollywood | YES | HD |
Open Your Mind – Scoring Total Recall | YES | HD |
Dreamers Within the Dream: Developing Total Recall | YES | HD |
Trailer | YES | HD |
Total Recall: The Special Effects | YES | HD |
Making Of | NO | SD |
“Imagining Total Recall” Featurette | NO | SD |
テクニカル・メモ
- メニューや初期表示がフランス語優先の個体あり(StudioCanal系マスター由来)。音声・字幕は英語選択可。
- 粒状感は場面により強め。ノイズリダクションは軽度〜控えめで、フィルム肌を残す方向。
過去メディア(LD/DVD/旧BD)との比較
- 解像感: 4K化で微細情報(衣装繊維、セットの傷み)が顕著に向上。LD/旧BDで潰れていた暗部の情報が復活。
- 色再現: 火星の飽和した赤やネオンサインの色乗りが良化。階調の段差が滑らかに。
- 音場: 旧5.1chに比べ、Atmosは縦方向と定位の精度で没入度が一段上。
総評
記憶SF×超弩級アクションの快作。哲学的含意は軽量化されつつも、4K HDRとAtmosの更新で“今の画音”として蘇生。90年代SF映画のマストピックとして、ライブラリーに置いて損なし。
総合スコア:86点
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