『トロン:レガシー』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー| ネオンが疾走する“グリッド”を最新技術で再構築したサイバーSF【Dolby Vision / Dolby Atmos】
1982年のカルトSF『トロン』から28年──。時代を超えて帰ってきた続編『トロン:レガシー』は、CG技術の進化を体感させる映像と音響の饗宴だ。前作への敬意を払いながらも、物語としては独立性が高く、未鑑賞でも成立する構造になっているのが特徴。父を失った青年サムが“グリッド”へと迷い込み、完璧を求めるプログラム「クルー」と対峙する中で、自己を確立していく成長譚が描かれる。
4K UHD Blu-ray化により、ネオンが冴える暗闇の世界・IMAXシーケンスの躍動感・ダフト・パンクによる音響演出が現代水準に最適化。特にDolby Atmos化の効果は絶大で、グリッド内に“入り込んだ”ような没入感が味わえる。
『トロン:レガシー』4K UHD Blu-ray 基本仕様
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邦題 | トロン:レガシー |
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| 原題 | Tron:Legacy | |
| レーベル | Buena Vista Home Entertainment | |
| 制作年度 | 2010年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 125分(劇場公開版) | |
| 監督 | ジョセフ・コシンスキー | |
| 出演 | ジェフ・ブリッジス, ギャレット・ヘドランド, オリヴィア・ワイルド | |
| 画面 | 2.35:1 & 1.78:1(IMAXシーケンス)/ Dolby Vision | |
| 音声 | Dolby Atmos 英語 / dts-HD HR 7.1ch 日本語 | |
| 字幕 | 日本語 | |
| リージョン | UHD=リージョンフリー, BD=A,B,C | |
| パッケージ | UHD 1枚(本編)/ BD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
失踪した父を追ってグリッド世界に迷い込んだサムは、“完璧な世界”を掲げ反乱を起こすプログラム「クルー」と対峙することになる。父との再会、世界の行方、そしてサム自身の選択──。仮想空間で繰り広げられる成長と決断の物語。
あらすじ(詳細)
エンコム社CEOだったケヴィン・フリンは、理想のデジタル世界「グリッド」の構築に没頭する中で失踪。息子サムは反発心を抱えたまま成長するが、父の痕跡を示すメッセージを受け取り、ゲームセンターの奥に隠された端末からデジタライズされる。
転送先のグリッドでは、かつてケヴィンが生み出したプログラム「クルー」が支配者となり、完璧を目指すあまり暴走。反乱と粛清が繰り返されていた。サムは戦闘アリーナへ強制参加させられるが、謎のプログラム・クオラの手助けにより脱出。潜伏していたケヴィンと再会する。
父と子は脱出を図るが、クルーもまた現実世界への侵攻を狙っており──。サムは“父を救う息子”ではなく、“自ら選び取る存在”へと成長していく。
見どころとテーマ
- 28年ぶりの続編が示すCG表現の進化:光輪バトル、ライトサイクルなど名物アクションが現代水準で蘇る。
- 単独作品としても成立:前作未見者への配慮がある脚本構造。
- 父と子の成長譚:失われた親子関係と自立が物語の軸に。
- “完璧”への欲望と危険性:クルーの思想は現代のAI議論と地続き。
- ダフト・パンクのスコアが映画世界を支配:音楽がビジュアルと同等の演出装置として機能。
4K UHD Blu-ray 映像レビュー【4K / Dolby Vision】
- DIは2Kのためアップスケール4Kだが、ネオン×暗部の相性が非常に良い
- IMAXシーンは2.35:1 → 1.78:1へ可変。画面が“開く”瞬間の没入感が強烈
- 暗所の連続でも黒潰れが抑えられ、光源の情報が生きるDolby Visionグレード
- 解像感は最新作に劣るが、作品トーンに最適化された再現性
映像スコア:84点 —— ネオンが息づく“グリッド世界”を最適化したアップスケール4K。
音響レビュー【Dolby Atmos】
- Atmos化の恩恵が絶大。縦方向の広がりが物語演出と直結
- ライトサイクルの移動感は空間を駆け抜ける“実感”に近い
- ダフト・パンクのトラックが頭上・周囲を包み込む設計
- 旧ミックスよりもレイヤーが整理され、情報量が増加
音響スコア:90点 —— サウンドがグリッドを“現実化”させる、強烈なAtmosリミックス。
総評
『トロン:レガシー』は、過去の遺産に依存せず、“現代的トロン”を再定義した続編として成立している。物語の核にあるのはサイバーSFではなく、父と子の選択と成長。その普遍的テーマを、ネオンの海と電子音楽が包み込み、唯一無二の体験へと昇華する。
4K UHD Blu-rayは3D上映時の熱狂こそ再現できないが、Dolby Vision × Atmos の再構築で新世代の鑑賞体験としての価値を獲得。前作ファンはもちろん、SF的ビジュアル体験の更新を望む人にも薦めたい。
総合スコア:86点 —— “トロン”という神話を現代へ接続した、サイバーSFの再起動。

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