『ブレイブ ワン』Blu-ray(輸入盤)レビュー|暴力に奪われた日常を、暴力で取り返すのか。NYの闇で“正義”が歪む復讐サスペンス【SDR / Dolby TrueHD】
ニューヨークでラジオDJとして働くエリカは、恋人デイヴィッドと結婚を控えた穏やかな日々を送っていた。だが、ある夜の襲撃で日常は崩壊する。恋人は殺され、自身も重傷を負った彼女は、回復後も癒えない恐怖と喪失感に引きずられながら、警察の鈍い捜査を前に“自分の手で答えを出す”方向へ傾いていく。
『ブレイブ ワン』は、被害者が加害者へ転じる瞬間の危うさを描いた、血で血を洗う復讐サスペンスである。犯罪の匂いが濃い都市ニューヨークを舞台に、暴力に対して暴力で応じることの是非、そして法の外側で“正義”を行う人間を、法を守る刑事がどう見つめるのか──その緊張関係が作品を支える。
『ブレイブ ワン』Blu-ray 基本仕様
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邦題 | ブレイブ ワン |
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| 原題 | The Brave One | |
| レーベル | Warner Home Video | |
| 制作年度 | 2007年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 122分(劇場公開版) | |
| 監督 | ニール・ジョーダン | |
| 出演 | ジョディ・フォスター, テレンス・ハワード, ナヴィーン・アンドリュース | |
| 画面 | 2.40:1 / SDR | |
| 音声 | Dolby TrueHD 5.1ch 英語 / Dolby Digital 5.1ch 英語, フランス語, スペイン語 | |
| 字幕 | 英語, フランス語, スペイン語 | |
| リージョン | BD=Region Free | |
| パッケージ | BD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
ニューヨークのラジオDJエリカは恋人を殺され、自身も瀕死の重傷を負う。警察の捜査が進まない中、彼女は拳銃を手にし、夜の街で暴力を振るう者たちに“反撃”を始めてしまう。一方、刑事マーサーは彼女と接点を持つうちに、エリカの変化と秘密に気づき始める。
あらすじ(詳細)
ニューヨークでラジオDJをしているエリカは、恋人デイヴィッドと交際しており結婚間近だった。しかし、ある夜、飼い犬を連れてセントラルパークを散歩していた二人は暴漢に襲われる。デイヴィッドは死亡し、エリカも重傷を負った。
3週間の昏睡状態から回復したエリカは、恋人の死を知って打ちのめされる。退院後、警察に捜査状況を尋ねるが動きは鈍く、彼女は衝動的に闇ルートで拳銃を購入してしまう。
夜のニューヨークでは、強者が弱者を痛めつける場面が日常のように転がっている。特に、男が女を痛めつける暴力が目につく。その現実に直面するたび、エリカは拳銃を使って“強い者”を始末するようになっていく。
一方、ニューヨーク警察の刑事マーサーは、拳銃やドラッグの密売をしている男が家庭内暴力の末に妻を死に至らしめた事件を捜査していた。その過程でエリカと出会い、会話を交わすようになる。やがてマーサーは、エリカが何をしているのかを勘づき始める。
エリカは密売人も殺し、ついに自分を痛めつけた暴漢を、自分の手で始末しようと動き出す。そのことを察したマーサーは、彼女の後を追う。
見どころとテーマ
- 暴力に奪われた人生を、暴力で取り返す復讐サスペンス
幸せな日常を破壊された主人公が“反撃”に踏み切ることで、物語は倫理の境界線へ踏み込んでいく。 - 弱者が強者に反撃する“都市の一揆”
犯罪者が狙うのは弱者──その常識に逆らい、エリカが反撃することで、街の暴力の構図が揺らいでいく。 - 法を守る刑事と、法を破るエリカの危うい距離
親密さが深まるほど、マーサーは“正義”の線引きに苦しむ。クライマックスでの選択が本作の肝。 - 復讐心から“正義の代行”へ変質していく心理
私怨として始まったはずの反撃が、いつしか裁きの快楽と結びつく。エリカの心境の変化が怖い。 - ニューヨークという舞台が与える生々しさ
眩しい都市の裏側に潜む犯罪の多さが、物語の現実味を支える。街そのものが不穏な空気を纏う。
Blu-ray 映像レビュー【HD / SDR】
オリジナルは35mmフィルムだが、DIは2Kでまとめられており、本Blu-rayも2Kマスター相当が上限となる。さらにBlu-ray初期のディスクらしく、VC-1圧縮+転送レートの余裕が少ない印象で、HDとしては物足りなさが残る。SDのDVDよりは明らかに上だが、“今のHD基準”で観ると画の密度が薄い。
フィルムベースにもかかわらずグレインはほぼ感じられず、場面によってはDVD的な平板さが顔を出すのが惜しい。
色彩はフィルム調のトーンで、暗部はやや厳しい一方、明るい場面では意外と鮮やかに発色するなど、シーンごとの差が大きい。
映像スコア:72点 —— 作品自体の空気は伝わるが、初期Blu-ray由来の情報量不足が目立つ。リマスター待ちの一本。
音響レビュー【Dolby TrueHD 5.1ch】
Blu-ray初期のWarner作品らしく、英語音声はDolby TrueHD 5.1chのロスレス収録。劇場公開時はロッシー音声だったため、音質面の向上は明確だ。
ただし、サラウンドの使い方は積極的ではなく、定位は弱めで前方に音が集まりやすい。エリカの銃声が鋭く響いたり、地下鉄や車の移動音が脇から後方へ抜けたりする場面はあるが、全体として“包囲”より“前方重視”の設計である。
AVアンプ側でDolby Surroundを使うと、BGMや残響が部屋全体に広がって一聴サラウンド感は増すものの、ソース側の空間設計が派手なタイプではないため、効果は限定的。それでもロスレス収録の恩恵で、台詞と環境音の分離は良好で、NYの夜の空気感は十分に味わえる。
音響スコア:78点 —— ロスレスで質は良いが、空間演出は控えめ。前方重視の堅実な5.1ch。
総評
『ブレイブ ワン』は、暴力の被害者となった女性が、暴力によって加害者を裁く“反撃”の物語である。行為の是非は重く残るが、一度は暴力に屈した主人公が、自分の足で立ち上がろうとする姿には、危うい共感が生まれてしまう。そして、彼女を疑いながらも最終局面で庇う刑事マーサーの選択が、単なる復讐劇に留まらない苦味を残す。
警察ではなく一般人が裁きを下すことへの是非、正義の境界線、暴力の連鎖──それらをエンターテインメントとして成立させつつ、観終わった後に“割り切れなさ”を残すところが本作の強度だ。映像面は初期Blu-rayの限界があるが、作品の空気を味わうには十分。内容の重さも含め、一本のサスペンスとして記憶に残る。
総合スコア:80点 —— “反撃”の快感と後味の苦さが同居する復讐サスペンス。ディスク品質は伸びしろあり。

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