『死霊の盆踊り』Blu-ray(輸入盤)レビュー|最低映画の底なし沼。延々続く裸のダンスに思考が停止する怪作【SDR / dts-HD MA】
史上最低の映画監督として知られるエド・ウッドが脚本を書いた『死霊の盆踊り』。
ホラー映画の体裁を取りながら、実際に繰り広げられるのは、魔王を復活させるために死んだ女性たちが延々と裸で踊り続けるという異様な光景である。
ストーリーはあってないようなもので、恐怖もなければ、ポルノ映画としての色気もほとんどない。あまりにも単調なダンスが繰り返されるため、見ているうちに映画を理解しようとする思考そのものが停止していく。
しかし、かつてVHSで見た時にはただ呆然とするしかなかった作品も、35mmオリジナルネガから2KスキャンされたBlu-rayで改めて見ると、「なぜここまでひどい映画になったのか」を観察するという別の楽しみ方ができる。
最低映画ですら高画質Blu-rayとして残される。その事実も含めて、映画というメディアの奥深さを感じさせる怪作である。
『死霊の盆踊り』輸入盤 Blu-ray 基本仕様
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邦題 | 死霊の盆踊り |
|---|---|---|
| 原題 | ORGY OF THE DEAD | |
| レーベル | VINEGAR SYNDROME | |
| 制作年度 | 1965年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 90分(劇場公開版) | |
| 監督 | A.C.スティーヴン | |
| 出演 | クリスウェル、ファウン・シルヴァー、パット・バリントン | |
| 画面 | 1.85:1 / SDR | |
| 音声 | dts-HD MA 1.0ch 英語 | |
| 字幕 | 英語 | |
| リージョン | BD=A,B,C | |
| パッケージ | BD 1枚(本編 + 特典)/ DVD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
新作の着想を得るため、夜の墓場へ向かったホラー作家のボブと恋人のシャーリー。事故を起こした二人が目を覚ますと、そこでは魔王を復活させるため、死んだ女性たちが延々とダンスを繰り広げていた。
その光景を目撃した二人は魔王の手下に捕らえられ、逃げることもできないまま、夜明けまで死者たちのダンスを見せられることになる。
あらすじ(詳細)
ホラー作家のボブとシャーリーは、夜のドライブをしていた。ボブは新作の着想を得るために、夜の墓場へと車を走らせていた。
夜の墓場を気味悪く思うシャーリーはボブを止めるのだが、ボブは墓場へ向かうことをやめなかった。しかし、墓場へ向かう途中で事故を起こし、二人は意識を失う。そして、気がつくと墓場にいた。
墓場では夜の帝王が復活を遂げるべく、僕である死んだ女性たちを生き返らせ、魔王復活のためのダンスを延々と踊らせていた。
それを発見したボブとシャーリーは驚くが、ボブは小説のアイデアになると考え、死んだ女性たちの踊りを見守っていた。一方、シャーリーは恐怖に慄いていた。
墓場には夜の帝王の僕であるミイラ男と狼男もいて、密かに魔王復活のダンスを見ていたボブとシャーリーを捕らえ、魔王の前に突き出す。
囚われの身となった二人は、延々と死んだ女性たちのダンスを見せられることになる。
そして、魔王の手下である闇の王女は、シャーリーを死者にすべく魔王に願い出る。しかし、魔王はなかなか許可せず、ただただ死者たちのダンスを見続けるばかりであった。
月夜の中で死者たちのダンスが完遂すると魔王は復活するのだが、太陽の光を浴びると魔王は消滅してしまう。
時間だけが過ぎていく中、魔王の復活をかけたダンスは延々と続いていく。
見どころとテーマ
- 史上最低の映画監督、エド・ウッドが脚本を書いた最低映画
史上最低の映画として名高い『プラン9・フロム・アウタースペース』を監督した、史上最低の映画監督として知られるエド・ウッド。そのエド・ウッドによる脚本から生まれた最低映画。 - 原題より邦題の方が作品の意図を伝えている
原題の『ORGY OF THE DEAD』(死者の乱行パーティ)もすごいタイトルではあるが、作品の印象からすると、邦題の『死霊の盆踊り』の方がしっくりくるという、いわくつきの作品。 - ホラー映画のパターンを借りたポルノ映画だが、全く欲情しない
魔王の復活のために僕がダンスをするという展開はホラー映画的であるが、実際にはスタイルの良くない女性が裸でダンスをするだけという、事実上のポルノ映画になっている。しかも、ポルノ映画として見ても全く欲情しないので、作品の出来はひどい。 - 出来の悪いストリップを見ているかのよう
魔王の復活のために、死者である女性が裸でダンスをしているだけの映画である。裸で踊っている間には音楽も流れるので、出来の悪いストリップ劇場を見ているかのような感覚に襲われる。ストリップの方がはるかに出来はいい。 - 延々と続く死者の女性の裸ダンスに思考回路が飽和
ストーリーはあってなきがごとし。執拗なほど死者である女性が裸でダンスするだけのシーンを延々と描写しているので、途中から映画を読み解こうとする思考力が消え、脳が飽和状態になっていく。 - クリスウェル扮する魔王が復活を遂げる気はない
クリスウェル扮する魔王は闇の世から復活を遂げようと目論んでいるのだが、クリスウェルのやる気のない演技のため、本気で復活を遂げようという意思が全く感じられない。
Blu-ray 映像レビュー【2K / SDR】
ジャケット裏面の説明によると、「35mmのオリジナルネガから2Kスキャンを行ってBlu-ray化」とあるので、オリジナル35mmフィルムのネガから2Kでビデオマスターを作成していることになる。
その関係もあるのか、解像感は2Kとして十分なほど高く、フィルムグレインも適度に残されているので、映像には立体感がある。
また、色合いもSDRとしてはかなり色乗りが良く、鮮明な発色をしているので、リアルな映像を堪能できる。
ただし、基本的にはセットでの撮影なので、場面転換はほとんどなく、墓場のセットに演出用のスモークが焚かれる程度で、映像そのものに大きな動きはない。そのため、これだけ解像度や色合いにこだわっても、意味がないようにも思えてしまう。
裸で踊る女性たちの肌の色もナチュラルに再現されているが、逆に色気は全く感じられず、ただ「裸で踊っているのね」程度の認識しか持てない。
画質はいい。しかし、総じて物語がダメなので、せっかくの高画質が宝の持ち腐れになっているきらいはある。
映像スコア:82点 —— 35mmオリジナルネガからの2Kスキャンらしく、解像感、フィルムグレイン、発色はいずれも良好。ただし、肝心の映像内容が高画質の恩恵をほとんど必要としていないのが皮肉。
音響レビュー【dts-HD MA 1.0ch】
劇場公開時のオリジナルがモノラル音声だったので、Blu-rayもdts-HD MAでありながら、1.0chのモノラル音声で収録されている。
モノラル音声なので、当然ながら全くサラウンドはしない。セリフとBGM、環境音──といってもコオロギの鳴き声程度だが──が、全てセンタースピーカーから鳴り出す。
しかし、作品の雰囲気から考えると、1.0chのモノラル音声が合っていると感じる。
あまりにも出来の悪い映画なので、もしサラウンドが積極的に効いていたら、かえって壊滅的なことになっていただろうと思われる。
音質は1965年の作品としては比較的良好に鳴っている。低音の伸びは期待できないものの、高音域にも硬さはなく、全体的にフラットな印象が強い。
音響スコア:72点 —— サラウンド性は皆無だが、オリジナルのモノラル音声をロスレスで素直に再現。1965年作品として音質は良好で、この映画にはむしろ1.0chが似合っている。
総評
『死霊の盆踊り』は、史上最低の映画監督として知られるエド・ウッドが脚本を書いた最低映画である。
日本では、史上最低の映画として知られる『プラン9・フロム・アウタースペース』や、エド・ウッドの半生を描いたティム・バートン監督の傑作『エド・ウッド』が公開される遥か前から、「史上最低の映画」という触れ込みでビデオリリースされ、多くの映画ファンが呆然としてしまった経緯がある。
ホラー映画の体裁は取っているものの、実質的には裸の女性が踊っているだけという出来の悪いポルノ映画であり、あまりのつまらなさと欲情性のなさに悶絶してしまうところではある。
しかしながら、遥か昔にVHSで見た時と比較すると、今回はその出来の悪さのポイントを判別できるようになっていて、出来が悪いなりに楽しめるところも、なくはないと思えるようになった。
出演者の演技は棒読みだし、一応ミイラ男と狼男を出演させているものの、登場させている意味もない。魔王にも全く怖さがなく、ただ設定をなぞっているだけの展開にはクラクラする部分が大きい。
それでも、こんな最低映画ですらBlu-ray化され、市場に並んでしまうところが、ある意味では商売として成立している部分でもあり、映画のビデオ産業の奥深さを感じるところでもある。
作品として優れているから保存されるのではなく、「最低映画」として語り継がれてきたからこそ、高画質で保存される。
そんな逆説まで含めて楽しむのが、『死霊の盆踊り』という映画なのかもしれない。
総合スコア:58点 —— 映画としての出来は最低クラス。それでも、その最低ぶりを35mmオリジナルネガからの高画質で再確認できるという、妙に価値のあるBlu-ray。悪映画を楽しむという意味では唯一無二の一本。
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