『未来世紀ブラジル』アメリカ劇場公開版 Blu-ray(輸入盤)レビュー|短縮版で描かれる管理社会と夢の逃避行【SDR / dts-HD MA】
『未来世紀ブラジル』アメリカ劇場公開版 Blu-ray 基本仕様
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邦題 | 未来世紀ブラジル(アメリカ劇場公開版) |
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原題 | Brazil | |
レーベル | UNIVERSAL STUDIOS HOME VIDEO | |
制作年度 | 1985年(劇場公開版) | |
上映時間 | 132分(劇場公開版) | |
監督 | テリー・ギリアム | |
出演 | ジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ、マイケル・ペリン | |
画面 | 1.85:1 / SDR | |
音声 | dts-HD MA 5.1ch 英語 / dts 2.0ch フランス語 | |
字幕 | 英語、スペイン語、フランス語 | |
パッケージ | Blu-ray 1枚(本編) |
あらすじ(短縮版)
20世紀のある国は、徹底した監視と書類主義に支配された超管理社会だった。ある日、コンピューターの誤作動により善良な市民アーチボルト・バトルが誤認逮捕・処刑される。情報局の小役人サム・ラウリーは、事件に関わった女性ジルが自分の夢に現れる美女と同一人物だと知り、彼女を救うため日常から逸脱していく。
あらすじ(詳細)
舞台は20世紀の不特定の国。街中には無数のダクトが張り巡らされ、市民は膨大な紙の書類と管理システムに縛られて暮らしている。
ある日、プリンターに紛れ込んだ一匹のハエがコンピューターを誤作動させ、テロリストのハリー・タトルと無関係な市民アーチボルト・バトルの名前が入れ替わる。結果、無実のバトルが逮捕され処刑されてしまう。
情報局の中堅職員サム・ラウリーは、日々夢の中で美女を救い出す空想を繰り返していた。ある日、バトルの誤認逮捕を目撃し抗議に訪れた女性ジルを見て、彼女こそが自分の夢の中の人物だと直感する。
サムは昇進を利用して情報局のデータベースにアクセスし、ジルを救出するため行動を開始。しかし、その行為は彼を管理国家の秩序から外れた危険な存在へと変え、最終的には夢の世界に逃避するしかない結末へと追い込まれていく。
アメリカ劇場公開版『未来世紀ブラジル』の見どころとテーマ
本作はヨーロッパ版や日本公開版より約10分短縮され、編集内容も一部変更されたアメリカ劇場公開版。
制作当時、テリー・ギリアム監督と配給元ユニバーサルの間で編集権を巡る対立があり、スタジオ側の矛先を納めるためにテリー・ギリアム監督が再編集したのがこのバージョンである。
テーマは、徹底的な監視と書類主義に象徴される「管理社会の風刺」と、現実からの「自由への希求」。
無数のダクトや紙書類に覆われた街並みは、効率化を標榜しながら逆に不合理を生み出すシステムの象徴であり、現代の監視技術やAI統制への警鐘としても響く。
本作の結末は、主人公が現実世界では破滅を迎えながらも、夢の中でのみ自由を手に入れるという、皮肉かつビターな構造になっている。
Blu-ray 映像クオリティ【SDR】
映像はSDR収録で、解像度は十分に高く、細部の描写も良好。
ただし、シーンによってフィルムグレインの強弱が目立ち、時折フィルムゴミも確認できる。
色彩は鮮やかで、1980年代特有のやや暖色寄りの色調が維持されており、コントラストも適切。
マスターはユニバーサルによるテレシネで作成されており、近年の4Kリマスターに比べるとダイナミックレンジは狭いが、当時の質感を味わえる映像に仕上がっている。
音響効果レビュー【dts-HD MA】
音声はdts-HD MA 5.1chにリマスター。
オリジナルがDolby Stereoマスターのため、レンジはやや狭く、中域重視の音作り。低音や高音の伸びは控えめながら、セリフの明瞭度は高い。
環境音や効果音の定位は的確で、サラウンド効果も適度に感じられる。音場は横方向に広がり、街の喧騒や機械音が立体的に響く。
特典映像一覧と評価
このBlu-rayには映像特典は収録されていない。
特典映像を重視する場合は、豊富な補足資料とロングバージョンを収録したCriterion Collection版の入手を推奨する。
総評
アメリカ劇場公開版は短縮編集によりテンポが良く、ブラックユーモアと管理社会批判がストレートに伝わる構成になっている。
映像はSDRながら十分な解像度と色彩を持ち、音響も年代を考慮すれば良好な仕上がり。特典はないが、異なる編集による別視点の『未来世紀ブラジル』を楽しめる貴重な1枚である。
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