『ザ・フォーリナー/復讐者』配信版レビュー|喪失を背負う父と“元テロリスト政治家”、交差する2つの闘い【HD / SDR / Dolby Digital 5.1】
マーティン・キャンベル監督が、ジャッキー・チェン × ピアース・ブロスナンを対峙させたサスペンス・アクション。無差別爆破で娘を失った移民の父と、北アイルランド問題の暗部を抱える政府要人。復讐と政治が絡み合い、ロンドンの街で静かな戦争が始まる。NetflixのHD配信は、陰鬱な空気感とドライな実在感を素直に伝える。
『ザ・フォーリナー/復讐者』配信版 基本仕様
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邦題 | ザ・フォーリナー/復讐者 |
|---|---|---|
| 原題 | The Foreigner | |
| レーベル | STX Entertainment | |
| 制作年度 | 2017年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 110分(劇場公開版) | |
| 監督 | マーティン・キャンベル | |
| 出演 | ジャッキー・チェン、ピアース・ブロスナン、オーラ・ブラディ | |
| 画面 | 2.40:1 / HD / SDR | |
| 音声 | Dolby Digital 5.1ch 英語 | |
| 字幕 | 日本語 | |
| リージョン | 配信(Netflix) | |
| パッケージ | 配信専用 |
あらすじ(短縮版)
ロンドンの爆破で最愛の娘を失ったクワン(ジャッキー・チェン)。犯人特定を急ぐ政府要人リアム(ピアース・ブロスナン)に情報を迫るが要領を得ない。やがてクワンは元特殊部隊の技量を解放し、独自の復讐捜査に踏み出す——。
あらすじ(詳細)
ロンドンの中心部で銀行爆破が発生。巻き込まれた娘を喪った中国系移民のクワンは、警察と、北アイルランドの元過激派で現副首相のリアムへ犯人情報の開示を要求する。しかし当局は捜査中を理由に取り合わない。
追い詰められたクワンは、過去の米特殊部隊での経験を呼び覚まし、リアムの周辺に圧力をかけつつ単独で手がかりを刈り取っていく。一方リアムも、IRA残党の“跳ね上がり”が関与した可能性を掴み、第二のテロ計画の兆候に気づく。
復讐と政治的思惑が交錯する中、クワンの執念は新たな犯行の阻止へと収束。法と報復、国家と個人——揺れる均衡の先に、それぞれの決着が待つ。
見どころとテーマ
- ジャッキーの“痛みを伴う”アクション: コメディ色を排し、負傷と自己治療まで見せる年輪のアクション。
- 二人の主人公: 被害者遺族の父と、元テロリストの政治家。加害/被害の線引きを曖昧にする構図。
- 北アイルランド問題の影: 過去の闘争が現在進行形で政治を侵食する、欧州のリアルな文脈。
- サバイバル運用の妙: 罠、機転、地の利を活かす“静の戦い”が緊張を持続させる。
- マーティン・キャンベルの職人性: 派手さより輪郭のシャープな実戦アクションと堅牢な語り口。
映像レビュー【HD / SDR】
2.40:1のアナモルフィック画。HDR非対応でも、ロンドン/ベルファストの冷えた色温度と曇天の拡散光が雰囲気を形成。コントラストは抑えめだが、室内や森のロケでの陰影は十分。ディテールは放送〜配信HDの中では良好で、粒状感は控えめ。全体に“地に足の着いた”ルックが作品トーンと合致する。
映像スコア:78点
音響レビュー【Dolby Digital 5.1ch】
ロスレスではないものの、会話の明瞭度は良好。銃撃・爆発・足音・林の環境音などがサラウンドに適切に回り、要所で包囲感を確保。LFEは控えめだが、爆破と近接格闘のインパクトは過不足ない。BGMは過度に煽らず、サスペンスの張力を支える設計。
音響スコア:75点
総評
老練のジャッキーが体現する“痛みを伴う復讐”と、ブロスナンが纏う“政治の影”。二本柱で引っ張る実直なサスペンス・アクションだ。
北アイルランド紛争の背景を織り込みつつ、ハリウッド流の娯楽にまとめた点に価値がある。
興行的には大ヒットには至らなかったが、シリアスなジャッキー映画として特異な位置づけにあり、Netflixで手堅く楽しめる一本。
総合スコア:77点

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