GUNHED/ガンヘッド/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

GUNHED

No Image 邦題 ガンヘッド
レーベル ADV FILMS
制作年度 1989年
上演時間 100分
監督 アラン・スミシー(原田眞人)
出演 高嶋政宏、ブレンダ・バーキ
画面 1.85:1/レターボックス
音声 DOLBY DIGITAL 2.0ch 日本語、英語
字幕 英語

あらすじ

近未来、人類はテクスメキシウムという未知の鉱石を手に入れたことにより、科学技術の進化が加速度的に進み、金よりもコンピュータチップやプラスティックなどが貴重品と呼ばれるようになっていた。大海の孤島 8JO に人類は人工知能が搭載された完全フルオートメーションのロボット工場カイロン 5 を初めて建設をしていた。最初の 20 年は何事もなく順調に過ぎていったが、西暦 2025 年 7 月 4 日、カイロン 5 は突如人類に対し宣戦布告を放つ。人類はカイロン 5 制圧のためガンヘッド大隊を送り込むものの 1 年以上に渡る戦闘のうえに大隊は殲滅され、同時にカイロン 5 も再び沈黙に入ってしまった。それから 13 年後、貴重品となっていたコンピュータチップを求め、バンチョー率いるバウンティーハンターがカイロン 5 に乗り込むが、メンバーはカイロン 5 によって次々と殺されてしまう。かろうじて生き延びたのはメカが得意なブルックリンと同時期に世界中で反乱を起こしていたバイオドロイドを追跡してカイロン 5 にたどり着いたテキサス・レンジャーズのニムだけだった。二人は反目しつつ、カイロン 5 で唯一生き延びてきた子供とともに脱出法を探すが、再度カイロン 5 が目覚めてその目的を知るとともに、ブルックリンがまだ完全に破壊されていなかったガンヘッドを見つけたことにより、カイロン 5 の目的を阻止すべく、それぞれの道で反撃に出る。

レビュー

1989 年というバブル絶頂期に日本の映画会社としてはナンバーワンだった東宝と「機動戦士ガンダム」などのロボットアニメで定評のあったサンライズ(当時日本サンライズ)がタッグを組んで世界初の実写版ロボット映画を作ったものの、映画評論家や一般客には黙殺され、特撮マニアからも酷評を受けまくってしまい、ごく一部の好事家(含む僕)にしか評価されなかったのがこの「ガンヘッド」です。

なぜこの作品が黙殺されたかといえば一言に尽きます。「ロボット物」だからです。今でもそうですが、「ロボット物」は子供が見るものだからで普通の観客は見にきません。また特撮マニアも自分たちが期待していたものと違っていたためにそっぽを向いてしまったと言うのが真相のようです。映画評論家は少し違った見方をしていたようですが、それは物語の構造自体がおかしいからで、それは僕も観ていて気付くところであります。

どう物語の構造がおかしいかといえば、一番に挙げられるのが世界観をきちんと説明していない点にあります。ロボット物とは言え近未来 SF 物でもありますから世界観を説明しないで様々な SF 物のガジェットを登場させるとストーリーが全く理解できなくなります。一応登場人物の一言二言で簡単に説明されていますが、多くの登場人物は冒頭 30 分で姿を消してしまいますので、観ているうちにそんなこと忘れてしまいます。

次におかしいといえるのが「この映画の主人公って誰 ? 」ということです。高嶋政宏扮するブルックリンに決まっているのですが、彼のバックグラウンドが何かはっきりしないので後半にならないと主人公らしくなってこないのです。「軍に入っていてパイロットをやっていたが事故を起こしてコクピット恐怖症になった。」という説明が語られますが、何のパイロットをやっていたかが分からないのです。ガンヘッドを修理してしまうぐらいですから実はガンヘッドのパイロットをやっていたのではとも思いますが、映画ではガンヘッドは無人で動いていることになっていたので、矛盾が生じます。また後半になると A.I. を搭載したガンヘッドのほうが主人公なのでは ? と思えるシーンが多くて彼の存在感があまり強くなかったりします。何せ A.I. の癖に「確率なんかクソくらえでしょ ? 」などといったり「私はウイスキーでも動きます。」とか妙に人間くさい所満載のロボットですから。クライマックスはカイロン 5 の最終防衛用ロボットであるエアロボットとガンヘッドの戦闘シーンが中心ですし。

さらに矛盾を生じているのがカイロン 5 の唯一の生き残りの子供たち、セブンとイレブンとブルックリンの関係です。この子達の存在意義ってストーリー上あまり必要ないんです。一見するとイレブンがカイロン 5 の目的、つまり全人類抹殺の最後の引き金を引くキーワードをしゃべるような演出になっていますが、実は違うのではないかな、と思わせるところがあって、それはブルックリンがエアロボットにガトリング砲を放つときに叫ぶ言葉「ジェロニモー ! 」が実は真のキーワードではなかったのかな、と思わせる演出になっているようにも見えます。つまりブルックリンの出生の秘密もよく分からないんですね。これもブルックリンの存在感のなさを生み出している要因の一つかもしれません。(その前に高嶋政宏の演技力のなさに最大の問題があるような気がしますが、あれはあれで別の味わいがあるのでまあいいかと。(笑)) キーワード自体はカイロン 5 の自爆シーケンスを促すものだったようですけれど。

そんな訳でこの「ガンヘッド」という映画は突っ込みを入れようとすればいくらでも突っ込みを入れられる映画なのですが、輸入盤の DVD をわざわざ買っているぐらいですから好きな映画です。ではどこがいいのかといえば、従来の邦画ではあまり見られない乾いた感じがする点に尽きるかと思います。ストーリーは破綻していたりもしますが、とにかくハリウッド映画的な映像をづくりをしようとしているためテンポも速く(早すぎて説明が全然足りないわけです)、かっこよさを追求した結果無駄に登場人物が日本語と英語をちゃんぽんでしゃべったり、ブルックリンはタバコじゃなくて人参をかじったりと、とにかく監督が遊びまくって作っているような映画ですから(何か噂ではテキトーに作っていたと言う裏話も聞こえていますが。セブンを演じていた子供は監督の息子さんだったりします。) そこにはまってロボット物が嫌いじゃなければ十分に楽しめてしまうわけです。ロックのここの詩の部分が好きだとかこのメロディのフレーズが気に入っているから全体的に好き、というのに似ているかと思います。

後はガンヘッドというロボットに拒絶感を持つか持たないかという面も多いかと思います。ずっとロボットと書いていますが、戦車の発展系ですからアニメみたいに二足歩行はしませんし、なんか現実に存在しえるかも、という兵器としての側面な部分が相当多いです。

また、冒頭 30 分に出てくる出演者は妙に豪華でミッキー・カーティスや、当時人気絶頂だった「劇団・夢の遊眠舎」の看板女優・円城寺あや、そしてまさかのブレイクを果たしてしまった川平慈英がでていたりするところもなんだか先物取り的な部分があってそこもポイントなのです。前述のようにあっという間に舞台から姿を消してしまいますけれど。ニム役のブレンダ・バーキもこの作品では美人度高くていいですね。(彼女はあとでスティーヴン・セガール主演の「暴走特急」に科学者役で出ていましたが、イメージ違っていました。(泣))

画質は残念ながらあまり良好とはいえません。監督の欄に書いてあるように架空の監督名アラン・スミシーを使っていることから、あまり質のいいフィルムを入手できなかったものと思います。(ちなみにアラン・スミシーとは、監督や制作者、映画会社との間でトラブルが起きて監督名を実名で使えなくなった時に替りに使う名前です。日本で言ったら山田太郎みたいなものでしょうか。) 解像度はまずまずですが、全般的に暗い緑に偏っていますし、時々ボケが生じたりしています。音響も DOLBY DIGITAL 2.0ch でのマトリックス・サラウンドですから、音に厚みがありません。ただし当時の邦画のサラウンドに対する意識を考えたら悪くはないでしょう。

蛇足ですが、「ガンヘッド」のサウンドトラックは 1990 年代にテレビ朝日系列の「ニュース・ステーション」でやたらと使用されていましたので、もしかすると作品を観たことがない人でも曲を知っている人はいるかもしれませんね。

GUNHED イメージ図

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