BATMAN(4K UHD Blu-ray)/バットマン/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

BATMAN(4K UHD Blu-ray)

邦題バットマン
レーベルWARNER BROS. HOME ENTERTAINMENT
制作年度1989年
上映時間126分
監督ティム・バートン
出演ジャック・ニコルソン、マイケル・キートン、キム・ベイシンガー
画面1.85:1/HDR10
音声DOLBY ATMOS 英語/DOLBY DIGITAL 2.0ch 日本語
字幕日本語、英語

あらすじ

 犯罪者の巣窟になっていたゴッサム・シティに、バットマンが現れ、犯罪者を始末し始めていた。警察もバットマンの存在を掴めずにいた。そのゴッサム・シティは市政200周年の記念を執り行おうとしていたが、犯罪者のボス、グリソムがそれを妨げていた。グリソムの片腕だったジャックは、警察がアクシズ科学との関連を突き止めつつあることを知り、グリソムの命を受けてアクシズ科学との関わりを記した資料の破棄を行おうとするが、それはグリソムの罠だった。警察がジャックとその部下を取り囲む中、バットマンも現れジャックの部下を次々に始末し、ジャックも酸の入った液体の中に突き落とす。しかし、ジャックは一命を取り留めるが、容貌が大きく変わってしまい、自らジョーカーと名乗り、グリソムを始末して犯罪者のボスの座に着く。そして、ゴッサム・シティの掌握を狙って新たな犯罪を目論む。それに対してバットマンはジョーカーの企みを読み解く。ゴッサム・シティの大富豪ブルース・ウェインは、著名な写真家ビッキー・ベイルと懇意になり、二人は互いに愛し合うようになるが、ブルースは一定の距離を置こうとする。ブルース・ウェインこそがバットマンだったからである。ジョーカーもビッキーの容姿を見て恋に落ち、彼女をモノにしようとする。かくして、ゴッサム・シティの平和とビッキーの身の安全を保つために、ブルースはバットマンとなってジョーカーに戦いを挑む。

レビュー

 現在まで続くアメコミスーパーヒーロー映画の先達をつけた、1989年公開のブロックバスター映画が、この「バットマン」です。1989年のブロックバスター映画ということで興行収入は大成功を収め、批評もRotten Tomatoesの批評家評価は73%、観客評価は84%と好意的に取られています。その後、「バットマン」シリーズは3作続編が作られ、2000年代に入ってからはクリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト」トリロジーが製作され、2010年代にはDCEUの作品で登場し、2022年には若き日のブルース・ウェイン/バットマンを描いた「ザ・バットマン」まで製作される人気ヒーロー映画になっています。

 この映画は当時、新進気鋭の映画監督だったティム・バートンが監督を務め、ティム・バートンとは「ビートルジュース」でもタッグを組んだマイケル・キートンがヒーローのバットマン/ブルース・ウェインを演じています。マイケル・キートンがバットマンを演じることについて、最初、映画会社からアナウンスがあった時には「ビートルジュース」でのマイケル・キートンのコメディ演技から、アメコミファンからブーイングが上がりましたが、完成した映画を見たアメコミファンの誰もが文句を言うことは無くなったと言う逸話があります。それだけ、マイケル・キートンが演じるブルース・ウェイン/バットマンに宿る狂気の演技に魅力を感じていたということの現れだと思います。

 また、この映画はジョーカーを演じたジャック・ニコルソンのオーバーリアクションな演技を堪能できるところも、作品の完成度を上げる要因になっていると思います。バットマン最大の宿敵ジョーカーの誕生秘話を描きながら、精神的に不安定な犯罪者であるジョーカーをその存在感を持って演じているジャック・ニコルソンの存在は、大変印象深いものがあります。犯罪を楽しみながら冒していくジョーカーの姿は、敵でありながらどこかユーモラスであると思います。

 アメコミスーパーヒーロー映画の先達をつけた映画であるとは書いていますが、DCEUやMCUをずっと見続けてきてから、改めてこの「バットマン」を見返しますと、どこかファンタジーの世界の映画という要素が強いと思います。最近のMCUなどでは現実の世界とリンケージする展開が強く、リアリズムを持ってストーリーが展開されていきますが、この「バットマン」は舞台となるゴッサム・シティがアール・デコ調の架空の都市という印象が強く、リアリズムが薄い感じがします。と言って漫画っぽいかというとそれも違い、やはり監督であるティム・バートンの演出力が反映された独特の世界観の上に成り立っている作品であると思います。1989年の劇場公開時やレーザーディスク、DVDで鑑賞した時にはかなり陰鬱な作品であると感じたものですが、その後のスーパーヒーロー映画を色々見た上でこの「バットマン」を見返しますと、思ったほど陰鬱ではないという印象を受けます。

 この「バットマン」が独特の世界観を持っているのは、バットマンがまだゴッサム・シティの正義のヒーローという認知をされていない時期でのバットマンとジョーカーの死闘を描いた物語になっているからだと思います。スーパーヒーロー映画といえば、ヒーローが既に大衆に認知されているという前提があるのだと思いますが、この「バットマン」ではバットマン自身が悪を退治していく姿を警察も大衆も認知しておらず、孤高の戦いを強いられているところがあると思います。

 また、バットマンの誕生秘話が描かれるのは、この作品が最初ではないかと思います。もちろん漫画では描かれていたのでしょうが、バットマンを生み出したのは若き犯罪者であったジャックであり、ジャックがブルース・ウェインの両親を殺害した事からそのトラウマから逃れられずにバットマンになって悪を退治するという繋がりになっています。そしてバットマンがジャックを酸の液体に叩き込み、ジョーカーを生み出すという繰り返しの連鎖が繰り広げられるところに、彼らのつながりの業の深さがあると思います。

 物語のもう一つのポイントは、女性写真家ビッキー・ベイルをめぐってバットマンとジョーカーが争うという展開も含まれているところにあります。ヒロインをめぐっての一種の恋愛争いの映画として見ることもでき、そこは興味深いです。ブルース・ウェイン/バットマンはビッキーと恋愛関係になりますが、ブルースのバットマンとしての活動との兼ね合いから、恋愛を深めることに対して一定の距離を置こうとします。それに対してビッキーもブルース・ウェイン/バットマンの二面性に対して苦しむ関係になります。その一方で、ジョーカーのビッキーに対する恋愛は一方的で、それも変質的です。ビッキーはジョーカーの行動を全く理解できないでいますが、それでもジョーカーはビッキーに執着していきます。その変質的な二人の間に置かれたビッキーの立場を描いた作品ととることもできます。

 映像は4K/HDR10で収録されています。マスターは35mmフィルムであり、それを2019年に4Kマスターでデジタル化していますので、ネイティヴ4Kの映像になっています。解像度は35mmフィルムがマスターということもあってか、高精細というわけでもないですが、細部の描写は優れていると思います。HDR10による色彩効果は抜群で、これまでレーザーディスクやDVDで感じていた陰鬱な映像が印象を改めるほどに明るく、暗いシーンでも暗部をきちんと見せる映像に仕上がっています。DVD化された時にはテレシネに失敗してしまい、画面が絶えず上下に揺れ動くという状態になっていましたが、この4K UHD Blu-rayでは画面が安定して描写され、落ち着いて映画を鑑賞することができます。

 音響は劇場公開時やレーザーディスクではDOLBY STEREOでの収録になっていましたが、この4K UHD Blu-rayでは、DOLBY ATMOSにリミックスされ直されています。DOLBY STEREOの時のサラウンド感は限定的で、自分の前方でのみ音が広がる感覚が強かったのですが、DOLBY ATMOSにリミックスされた4K UHD Blu-rayではその制限が取り除かれ、視聴者の周囲を音が取り囲む空間サラウンドが最大限の効果を発揮していて、まるで最新作の映画のDOLBY ATMOSのような感覚を味わえます。オブジェクトもあちらこちらに配置され、まさにリニューアルといった感覚が味わえます。

 この4K UHD Blu-rayは輸入盤ではありますが、世界共通ディスクになっています。そのため、4K UHD Blu-rayの本編だけは日本語字幕と日本語吹き替え音声が収録されていて、プレイヤーの言語設定を日本語にしておくと、メニュー画面から日本語仕様の設定に変わります。そのため、視聴はかなり楽です。残念ながら、Blu-rayの特典映像には日本語字幕も吹き替えもついてはいません。

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