ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(4K UHD/IMAX ENHANCED/Disney+)/Apple TVで観た映画のレビュー

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(4K UHD/IMAX ENHANCED/Disney+)

No Image 原題 BLACK PANTHER:WAKANDA FOREVER
レーベル MARVEL STUDIOS
制作年度 2022年
上映時間 161分
監督 ライアン・クーグラー
出演 レティーシャ・ライト、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ
画面 2.39:1&1.90:1(IMAXシーケンス)/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS 英語
字幕 日本語

あらすじ

アフリカの小国でありながら実は超文明国家であるワカンダの守護神であり、国王であったブラックパンサー/ティ・チャラが病気でこの世を去った。ワカンダ国民はティ・チャラの死を悼んだが、彼の身内の方がその死に対して心の傷を負ってしまった。特にティ・チャラの妹であるシュリの心の傷はティ・チャラの死後1年経っても癒えなかった。その頃、ティ・チャラの死後に対し、先進諸国から「ワカンダは国際協力に応じない」と非難されるが、ワカンダの国王に就任した母のラモンダは、「先進諸国がワカンダからしか産出しないヴィブラニウムを狙っている」と非難の応酬を繰り返す。その頃、アメリカはヴィブラニウムを検知する装置を使い、海底に埋もれているヴィブラニウムを発見するが、海底帝国タロカンの襲撃に遭い、調査隊は全滅する。タロカンの存在を知らないアメリカはワカンダの仕業だと非難する。ラモンダは親衛隊のオコエに、ヴィブラニウムを検知する装置を作った者を見つけるように指示する。シュリもオコエに同行し、ヴィブラニウムを検知する装置を作った学生、リリ・ウィリアムズに接触し、ワカンダに連れて行こうとするが、FBIに取り囲まれ、脱出を図る。FBIの襲撃を交わしたかに見えたが、タロカンの攻撃を受け、シュリとリリは連れ去られてしまう。タロカンでシュリはタロカンのリーダーであるネイモアと出会い、ネイモアから話を聞いて同調するが、ネイモアが地上に住む者たちへの攻撃を考えていることを知り、躊躇する。ラモンダはワカンダから離れて暮らしていたティ・チャラの恋人ナキアに連絡を取り、シュリの捜索と奪還を依頼する。ナキアはそれを成功させるが、ネイモアはその行為がタロカンに対するワタンダの回答と判断し、ワカンダ攻撃を司令する。かくして、タロカンとワカンダの間で戦いが勃発する。

レビュー

マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ4の最終作になったのが、この「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」です。ディズニーがDisney+のサービスを開始して以来、「劇場公開から45日を経過した映画はDisney+で配信する」という取り決めを劇場側としていますが、この「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」は大ヒットを記録したためその取り決めをディズニー側が撤廃して、劇場公開から2ヶ月半後に配信という形になりました。評価も結構高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は84%、観客評価は94%と高水準を獲得しています。また、ワカンダの国王ラモンダを演じたアンジェラ・バセットはマーベル・シネマティック・ユニバースの作品の中で初めて演技者としてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされるという快挙を成し遂げています。

そんな評価の高いこの「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」ですが、この作品の一番大きな特徴はというと、前作「ブラックパンサー」で主役のブラックパンサー/ティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンがこの映画の制作前に癌でこの世を去ってしまったために、主役であるブラックパンサー/ティ・チャラが不在のままヒーロー物の物語が展開されるという異例の設定になっているところにあります。ブラックパンサー/ティ・チャラがこの世にいないという実感を観客に共有させるために、物語冒頭でティ・チャラが病気で亡くなるというシーンをあえて描いています。このシーンとマーベル映画のロゴでチャドウィック・ボーズマンの生前のフッテージを描写することで、チャドウィック・ボーズマンへの哀悼の意を表した作品になっているのが、この映画のポイントだと思います。

物語自体もブラックパンサー/ティ・チャラ不在のまま、ティ・チャラを失った悲しみを引きずっている身内、母であるラモンダや妹であるシュリたちの悲しみを描写しつつ、ワカンダにとって新たな脅威となる海底帝国タロカンとそのリーダー、ネイモアとの戦いを繰り広げるという内容になっています。

ただ、ワカンダの新たな脅威であるタロカンとそのリーダー、ネイモアが悪党かというとそうではない描写をされていて、ネイモアの思想にシュリ自身も同意するところもあり、単に思想の違いから対立するという設定になっていて、ネイモアが悪の根源であるという描写にはなっていませんので、物語的に悪を倒すスーパーヒーロー映画の範疇からは脱却している感触すら覚える作品になっています。

ネイモアが率いるタロカンとワカンダの対立は、タロカンに拉致されたシュリとヴィブラニウムの検知器を開発したリリ・ウィリアムズの奪還を目指したラモンダの行為に怒りを覚えたネイモアのワカンダへの攻撃が決定的なものとなっており、この両者の決着の行方がどうなるかは物語のキーポイントであると言えます。

シュリは兄であるティ・チャラを失い、ネイモアの攻撃で母であるラモンダも失い、ネイモアに対する復讐心を覚えますが、その復讐心をどう解放するのかは物語のキーポイントであると言えます。物語クライマックスでは新生ブラックパンサーが登場しますが、ブラックパンサーの戦いはシュリの復讐心の解放と繋がっていて、ネイモアに対してどう戦いの決着をつけるのかによって、ワカンダとタロカンの戦いの結末が変わってくるという心情的な話になっています。そのため、悪を倒して一件落着な話では決してなく、結構余韻の残る決着の付け方になっています。

映画自体にブラックパンサー/ティ・チャラが登場しないというのもありますが、主役であるワカンダ側の登場人物は戦いを補佐するエムバクをのぞくと主役級のキャラが全員女性というのもなかなか面白い試みであると思います。国王であるラモンダを始め、シュリ、親衛隊のオコエ、ティ・チャラの恋人であったナキアなど、女性が凛として活躍する作品に仕上がっています。また、ヴィブラニウムを検知する装置を開発したリリ・ウィリアムズも女性です。

リリ・ウィリアムズはこの作品が初登場ではありますが、マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ5のDisney+ドラマ版で「アイアンハート」の主役として、さらなるキャラクターの掘り下げが行われる予定なので、期待が持てそうです。「アイアンハート」自体が「ブラックパンサー」シリーズの影響を受けた作品になるという話もありますので、2023年秋の配信開始を楽しみに待ちたいと思います。

映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターデータが4Kですので、ネイティヴ4Kでの収録になっています。Disney+配信のこの作品は、IMAX ENHANCEDで配信されていて、いくつかのシーンでIMAX画角の1.90:1で収録されています。意外とIMAX画角のシーンは多くはないのですが、IMAX画角に広がったシーンでは見通しの良い広い画面が展開されていて、臨場感が増します。4Kの映像は高精細そのものであり、DOLBY VISIONによるHDRの効果は海底帝国タロカンの薄暗いシーンでも着実な黒レベルの描写に優れていて見やすくなっています。もちろん地上のシーンは光り輝くような光がきらめていており、HDR効果がわかりやすいと思います。

音響はDOLBY ATMOSで収録されています。音圧レベルは低いように感じますが、いまーシヴなサラウンドはきちんと提供されていて、物体が視聴者の前後左右上下を自在に移動する移動感で効果を発揮しています。映像に寄り添う三次元サラウンドなので、映像に没入する感覚を堪能させてくれるサウンドになっています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました