西部戦線異状なし(2022)(DOLBY VISION/Netflix)/Apple TVで観た映画のレビュー

西部戦線異状なし(2022)(DOLBY VISION/Netflix)/Apple TVで観た映画のレビュー

配信仕様

No Image 原題 IM WESTEN NICHTS NEUES
レーベル Netflix
制作年度 2022年
上映時間 148分
監督 エドワード・ベルガー
出演 フェリックス・カマラー、アルブレヒト・シュッフ、アーロン・ヒルマー
画面 2.39:1/DOLBY VISION
音声 DOLBY ATMOS ドイツ語
字幕 日本語

あらすじ

1917年、第一次世界大戦の最中、ドイツ人のパウルは友人と共にドイツ軍に志願し、戦場に出撃する。パウルは友人と共にフランスの領土である西部戦線に配属された。しかし、その西部戦線は激戦区であり、数多くのドイツ兵たちが戦死していた。パウルも理想とは裏腹の地獄のような戦場に理性を失い、戦場の狂気に駆られていく。戦いを通じて、仲間は戦死し、生き残った仲間とは食事を通して繋がりを保ち、時には農家から鶏を盗んで食べたりしながら、戦いを生き抜いていた。事態は膠着し、ドイツ軍の劣勢が明らかになる中、ドイツ軍上層部は連合国軍に対して休戦協定を申し出るが、連合国軍の休戦に対する条件はドイツ軍には受け入れ難いものだった。それでも、これ以上ドイツ軍兵士を失うわけにはいかない上層部は、休戦協定にサインをする。しかし、上層部の一部は連合国軍に対して一撃を喰らわせるべく、休戦協定が発行する11時までに連合国軍に対して反撃をするよう兵士たちを鼓舞する。そして、休戦協定が発行されるわずかな間のあいだにドイツ軍の攻撃が始まる。

レビュー

Netflixオリジナル作品として制作・配信されたドイツ制作の映画が、この「西部戦線異状なし」です。エリッヒ・マリア・レマルクの原作小説の3度目の映像化作品であり、原作者の出身地であるドイツで初めて映像化された映画になります。1930年に制作された映画版は第3回アカデミー賞で作品賞・監督賞を受賞していますが、今回の映画版は英国アカデミー賞で作品賞を含む7部門を制覇し、第95回アカデミー賞でも国際長編映画賞を含む4部門を制覇し、予想外の健闘に映画ファンを沸かせました。当然、評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は89%、観客評価は90%と高評価を得ています。

物語は、1917年の第一次世界大戦の最中、ドイツ軍に志願したパウルという若者が、当時の西部戦線であるフランス量に配属され、そこで起こる戦闘に対して次第に正気を失い、夢も希望も失っていく、という展開です。

この映画を見ていてすごいと思ったのは、その戦争の悲劇をかなり淡々と描いているところにあると思います。主人公はパウルであり、当然彼の視点から戦場を描いているのですが、カメラワークが実はパウルからの視点ではなく、意外と広角で戦場を俯瞰したシーンが多く、戦闘シーンをどこか冷徹な目で見ているシーンが多いことが、そういう淡々とした印象が強い要因かと思います。もちろん、戦争映画なので、兵士たちが負傷すればその負傷具合がどぎつい描写で描かれるのですが、それでもどこか冷めた描写になっていて、それが際立つようになっています。また、戦闘シーンではないところでは、ヨーロッパの広大な風景が静かに広角で撮影されるシーンが多く、それらのシーンもこの戦争映画の特徴になっています。

また、この映画で印象的だったのは、パウルを中心とした仲間や兵士たちが物を食べるシーンがかなり多い、という点です。それも戦闘シーンの途中で物を食べたり、農家から鶏や卵を盗んで調理して食べたりと、かなり異状な状態での食事シーンが多いのも特徴で、兵士たちが食事をする=生きている、という証のようなシーンになっていたかと思います。

そんな中で、パウルの仲間の一人は負傷してしまい、動けなくなったことから自殺を試みるシーンがあったり、パウルと共に農家に鶏や卵を盗みに入ったカットという兵士が農家の子供に殺されるシーンがあったりと、かなりショッキングなシーンが多いのもインパクトあると思います。戦闘そのもので死ぬというより、戦闘とは無関係なところで無駄死にしていくシーンは、戦争の不条理をよく表していると思います。

そんな現場とは裏腹に、ドイツ軍上層部は優雅な生活をしているところがまた、不条理をよく表していると思います。現場で大勢のドイツ兵が戦死しているにもかかわらず、連合国軍との休戦協定に対して色々注文をつけ伸ばし伸ばしするところとか、休戦協定が結ばれた後も休戦協定発行時刻前に少しでも自国領土の拡張を図るべく、わずか15分の間でドイツ軍兵士たちに連合国軍に攻撃を仕掛けるよう指示するところなど、現場の疲弊をわかっていないところが如実に現れています。

パウルも休戦協定発行前の15分の間の戦闘に駆り出され、その戦いでパウルは戦死してしまうのですが、戦死したのが休戦協定2分前あたりというのが皮肉という感じがします。さらにラストの字幕で、「1914年の開戦から1918年の休戦協定までの間、西部戦線の領土はほとんど動きがなかった」という事実は、パウルやその他の兵士たちの戦いが全くの無駄であったことを意味し、戦争の愚かさがよく出ているラストだと思います。

映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。マスターデータは4Kで保管されているため、ネイティヴ4Kでの配信になっています。ネイティヴ4Kでの配信のため、映像の精彩感は素晴らしいものがあり、映像に没入するかのようなリアリティ感があります。戦闘シーンのみならず、ヨーロッパの大自然の描写でもその高精細感は見事に描写され、インパクトを与えるものになっています。DOLBY VISIONによる色彩管理も素晴らしく、輝度の効果や、色彩の鮮やかさで魅力を放っています。戦闘シーンはどことなくモノトーン気味ではありますが、それでも他の戦争映画に比べると色彩豊かであり、臨場感を与えています。

音響はDOLBY ATMOSで収録されています。DOLBY ATMOSによるサウンドフィールドは素晴らしいものがあり、パウルたちが隠れている塹壕の視点で音が奏でられているので、頭上を飛行機や砲弾、銃撃音が飛び交い、まさに自分が塹壕の中にいるかのような感覚を味わえます。その他にも、登場人物が話をするシーンでカメラワークに沿って声の位置が視聴者の周囲をぐるぐる回るオブジェクトの要素も多用され、これまたDOLBY ATMOSならではの効果上げています。

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