THE BIG BOSS(4K UHD Blu-ray UK)/ドラゴン危機一発/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

THE BIG BOSS(4K UHD Blu-ray UK)/ドラゴン危機一発/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

ディスク仕様

THE BIG BOSS 4K UHD Blu-ray UKジャケット 邦題 ドラゴン危機一発
レーベル Arrow Video UK
制作年度 1971年/1983年
上映時間 99分
監督 ロー・ウェイ
出演 ブルース・リー、マリア・イー、ジェームズ・ティエン
画面 2.35:1/DOLBY VISION
音声 dts-HD MA 1.0ch 標準中国語、英語、広東語
字幕 英語

あらすじ

香港の田舎出身のチェンは、叔父の案内でタイに出稼ぎに出てきた。タイではシューやその仲間たち、チャオ・メイが待っていてくれて、チェンを製氷工場で働けるように取り計らってくれた。その製氷工場では、労働者たちの不可解な失踪事件が起きていた。シューの仲間も失踪してしまい、シューたちは工場長を問い詰めるが、工場長とその親分は「警察に連絡した」というばかりだった。実はその製氷工場は氷の製造の他にヘロインの密売も行っており、失踪した労働者はその事実を知ってしまったがために抹殺されていたのである。そして、シューも失踪した仲間の行方を探すうちに親分の手下どもに殺され、姿を消す。シューをも失った労働者たちは工場長を問い詰め、親分の手下どもたちに襲われて大乱闘になるが、母の言いつけ通りに争い事に巻き込まれないようにしていたチェンも母との約束を破り、乱闘に参加して親分の手下どもをあっという間に片付ける。その姿を見た工場長はチェンを昇進させ、労働者の監督にして、かつ親分もチェンを抱き込もうとする。しかし、仲間にシューたちの行方を探すと約束していたチェンは親分に抱き込まれたためそれも叶わず、仲間からはそっぽを向かれる。そして、仲間たちは親分の手下どもに襲われて絶命し、チャオ・メイも拉致されたことを知ったチェンは、復讐を誓う。

レビュー

ブルース・リーの没後50周忌に当たる2023年にイギリスのArrow Videoからブルース・リーがゴールデン・ハーベスト社で製作した映画6作品をボックスセットにした「BRUCE LEE at GOLDEN HARVEST」がリリースされたので、その中から4K UHD Blu-ray化された「ドラゴン危機一髪」を鑑賞しております。ブルース・リーの主演第1作に当たり、1970年代に世界中で大ヒットを記録した映画であります。このバージョンは1983年にホームビデオ化された時のマスターフィルムを元にしていて、実は香港劇場公開時のバージョンから10分程度短いバージョンであります。映画批評も好意的で、Rotten Tomatoesの批評家評価は69%、観客評価は73%と比較的水準の高い評価を得ています。

物語は、香港からタイに出稼ぎにきたチェンという若者が、タイの製氷工場で暗躍するヘロインの密売と遭遇し、仲間を失いながら、そのヴィランを追い詰めて行く、という割と単純な話です。ただ、物語前半はチェンよりもチェンを仲間として迎えるシューの方が主役的な描き方をしています。チェン自身は冒頭で叔父や母から「争いは避けるように」と諭され、その誓いのペンダントを首にかけていることからも、争い事が起きてもその戦いに参戦することなく、もっぱらシューが体を張って戦うという展開になっているのが印象的です。

その分、物語中盤からラストに至るまでシューは姿を消し、チェンが主役に躍り出て得意のカンフーアクションを披露していきます。チェンを演じるブルース・リーのカンフーアクションは見事なもので、シューを演じたジェームズ・ティエンのカンフーアクションと比較してもその差は歴然としています。また、結構血糊が飛び散るシーンが多く、残虐なシーンが散見されます。その辺はリアル感があり、戦いをすれば人は血を吹き出して死ぬ、という点が強調されていると思います。

他のブルース・リーの映画にも共通するのですが、ブルース・リーが扮するチェンがヴィランを倒せばそれで終わりということもなくて、人を殺めればその報いはチェン自身にも降りかかるという現実の世界では当たり前の描写をこの映画でも描いているのが他のアクション映画とは違う点ではないかと思います。この「ドラゴン危機一発」でも、ヴィランの親分を倒した後、チェンはタイの警察に捕まるというオチをちゃんとつけていますし、単にカンフーアクションでヴィランを倒してそれで終わり、という形になっていないのは、ブルース・リーの映画に共通するポイントではないかと思います。

その一方でチェンとチャオ・メイとのほのかな恋心を描いているのも、この映画の特徴ではないかなと思います。本当に微妙な関係で、恋愛ですらなく、ほのかな恋心というところが憎い演出で、この二人の関係を描いていると思います。だから、チェンがヴィランに抱き抱えられ、売春宿で一夜を過ごしてしまい、慌てて売春宿から出てくるところにチャオ・メイと遭遇するシーンは、二人の関係性の破局を意味しているように思えます。その後、チャオ・メイがヴィランに拉致されることでチェンがヴィランと対決する決意を固める要因の一つになるわけです。

オリジナルの標準中国語で鑑賞しましたが、ブルース・リーを代表する怪鳥音がこの作品では使われていないので、多少違和感を感じるところもあります。他のトラック、英語音声や広東語音声で見ていないので断言できませんが、オリジナルフィルムの音声トラックでは怪鳥音は使われていないのではないかと思います。そのため、優れたカンフー映画として鑑賞することはできましたが、ブルース・リーの映画としては若干インパクトに欠けるかなと言ってもいいかと思います。

映像は4K/DOLBY VISIONで収録されています。ディストリビューターのArrow Videoがオリジナルネガから4Kスキャンを施し、HDR処理を加えているので、ネイティヴ4Kでの提供になります。オリジナルネガの状態が良いのか、4Kスキャンの時のプロセスが丁寧なのか、フィルムグレインもごく僅かであり、精彩感のある映像に仕上がっています。1971年のフィルムとは思えない安定した映像を提供していますが、クライマックスのヴィランとの戦いのシーンだけ多少映像に荒れがあり、晴れたシーンなのに雨が降っているかのようなノイズが混ざっています。DOLBY VISIONによるHDR効果も抜群で、暗闇のシーンの黒の沈み込み方の素晴らしさや、タイの晴れた昼間のシーンの鮮やかさ、フィルムらしい色調で魅力的な映像を提供しています。

音響はdts-HD MA 1.0chの標準中国語です。1.0chのモノラル音声なので当然サラウンドはしませんが、1971年の映画の音声にしては割と綺麗な音で、ワイドレンジっぽい感じのするサウンドになっています。BGMや効果音も歪んでおらず、映画の音としては文句のない状態になっています。

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