『ドアーズ』4K UHD Blu-ray(輸入盤)レビュー|ジム・モリソンの破滅と詩情を描く、オリヴァー・ストーン流ロック伝記映画【Dolby Vision / Dolby Atmos】
1960年代を代表するロックバンド、ドアーズ。そのリードボーカルであり、詩人でもあったジム・モリソンの生き様を、オリヴァー・ストーン監督が描いた伝記映画が『ドアーズ』である。
本作は、ジム・モリソンを単なるスキャンダラスなロックスターとして描くだけではない。幼少期に目撃した死のイメージ、ステージ上での暴走、パムとの関係、そして詩人としての側面を通じて、ジムという人物の本質に迫ろうとしている。
今回視聴した4K UHD Blu-rayは、2019年に再編集されたTHE FINAL CUT版。4KリマスターとDolby Atmos化により、1960年代の熱狂と混沌を、映像と音響の両面から再体験できるディスクになっている。
『ドアーズ』4K UHD Blu-ray 基本仕様
|
邦題 | ドアーズ |
|---|---|---|
| 原題 | the doors THE FINAL CUT | |
| レーベル | Lionsgate Entertainment | |
| 制作年度 | 1991年(劇場公開版) / 2019年(完全版) | |
| 上映時間 | 141分(劇場公開版) / 138分(完全版) | |
| 監督 | オリヴァー・ストーン | |
| 出演 | ヴァル・キルマー, メグ・ライアン, ケヴィン・ディロン | |
| 画面 | 2.39:1 / Dolby Vision | |
| 音声 | Dolby Atmos 英語 | |
| 字幕 | 英語, スペイン語 | |
| リージョン | UHD=リージョンフリー, BD=A,B,C | |
| パッケージ | UHD 1枚(本編 + 特典)/ BD 1枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
UCLAで映画を学んでいたジム・モリソンは、仲間たちとロックバンド、ドアーズを結成する。詩的な歌詞と過激なステージングでバンドは人気を獲得していくが、ジムは生と死への強迫観念、アルコール、麻薬、そして自らの破滅衝動に飲み込まれていく。
あらすじ(詳細)
幼少期のジム・モリソンは、家族と共に原野を車で移動している途中、交通事故を目撃する。その事故では、ネイティヴ・アメリカンのシャーマンが犠牲になっていた。その光景は、ジムの脳裏に深く刻まれる。
成長したジムは、UCLAで映画を学んでいた。しかし、自作の詩を刻んだ映画は周囲から不評で、彼はUCLAを辞めることになる。それでも、ジムの書く詩を高く評価する人々が現れ、彼は仲間たちと共にロックバンド、ドアーズを結成する。彼の詩は、ロックのリズムに乗せて歌われるようになる。
ジムはビーチで見かけたパムという女性に惹かれ、彼女の後を追い、積極的にアプローチする。やがてジムとパムは付き合うようになり、その関係は長く続いていく。しかし、ジムがスターダムにのし上がるにつれ、二人の関係性も次第に変化していく。
ジムがリードボーカルを務めるドアーズは、人気を高めていく。しかし、幼少期に目撃したネイティヴ・アメリカンのシャーマンのイメージは、絶えずジムにまとわりつき、生と死について考えさせる。
その影響もあり、ドアーズのステージは次第に暴走していく。警備員との揉め事、熱狂的なファンの過激な行動、予定にない詩の朗読。ジムは酒を飲みながら歌い、ステージ上で自らの衝動を解放していく。
やがてジムはステージ上での行為によって逮捕され、公衆の面前での飲酒も含めて刑罰を受けることになる。その頃のジムは麻薬にも手を出し、かつてのロックスターとしての鋭さを失いつつあった。
見どころとテーマ
- 伝説のロックバンド、ドアーズとジム・モリソンを描く伝記映画
『プラトーン』で知られるオリヴァー・ストーン監督が共同脚本も手がけ、1960年代に人気を博したドアーズと、そのリードボーカル、ジム・モリソンを描いた伝記映画。本作は2019年に再編集されたTHE FINAL CUT版である。 - 生と死に取り憑かれたジム・モリソンの暴走
幼少期に見た交通事故の記憶が、ジムの精神に深く刻まれている。彼は私生活でもステージ上でも型にはまらず、生と死のイメージに突き動かされるように暴走していく。 - 1960年代アメリカンカルチャーの表現
ベトナム戦争以降のアメリカ文化、反体制、ドラッグ、ロック、精神的解放といった時代性が、ドアーズとジムを通じて表現されている。 - バンド内でも浮いた存在であるジムの孤高
ドアーズの他のメンバーが比較的まともに見える一方、ジムだけは孤高の存在として描かれる。彼はバンドの中心でありながら、同時にバンドからも浮いた存在である。 - 詩人としてのジム・モリソン
本作は、ジムをロックバンドのボーカリストとしてだけでなく、詩人として再評価する意味合いも持っている。彼の歌詞や朗読は、単なるロックの装飾ではなく、作品全体の精神性を形作っている。
4K UHD Blu-ray 映像レビュー【4K / Dolby Vision】
劇場公開時のオリジナルは35mmフィルムであり、本作は劇場用4K DIとしてリマスターされたマスターを基に4K UHD Blu-ray化されている。そのため、ネイティヴ4K収録である。
フィルムベースの画質ではあるが、フィルムグレインはさほど多くない。解像度も極端に高精細という印象ではないが、全体としてはフィルムらしいトーンで貫かれている。
Dolby Visionによる色調は、1960年代を意識したためか、赤みを帯びたトーンが優勢である。鮮やかさを前面に押し出すタイプではないが、その分、時代の空気やサイケデリックな雰囲気に合った色彩設計になっている。
ライブシーンやクラブの場面では、照明の色や暗部の階調が効果的に表現されている。派手なHDRデモ映像というより、時代性と人物の精神状態を支えるためのDolby Visionという印象だ。
映像スコア:86点 —— 派手な高精細映像ではないが、1960年代の空気感とフィルムトーンを生かした良質な4K化。
音響レビュー【Dolby Atmos】
2019年に4K DIを制作し、THE FINAL CUTとして再編集された際、劇場公開時のDolby Stereo SR 4chサラウンドはDolby Atmosへ再ミックスされた。本4K UHD Blu-rayにも、そのAtmosトラックが収録されている。
Dolby Atmosによる空間表現はかなり効果的である。ドアーズの楽曲がBGMとして流れる場面では、ジム・モリソンのボーカルやドラムの響きが、意識的に頭上方向にも配置される。
環境音の使い方も面白い。鳥の鳴き声が前方上方から聞こえたり、雷の音が頭上全体に広がったりと、立体的な音の配置が作品の幻想性を高めている。
ライブシーンでは、各楽器の音が複数の位置に定位し、観客の声援やブーイングが三次元的に広がる。単なる音楽映画としてではなく、ジム・モリソンの精神世界を音響で表現するようなAtmosミックスになっている。
音響スコア:92点 —— ライブ感、環境音、精神世界の表現が見事に融合した、非常に優秀なAtmosミックス。
総評
1960年代を代表するロックバンド、ドアーズと、そのリードボーカルであったジム・モリソンを描いた本作は、スキャンダラスな逸話ばかりが語られがちなジムの実像に迫ろうとする伝記映画である。
ネイティヴ・アメリカンの事故がジムにまとわりつくという設定は、創作的な部分も感じられる。しかし、世間のルールからはみ出し、生と死の境界を見つめながら暴走していくジムの生き様を説明するには、重要なモチーフとして機能している。
また、ジムを単なる破滅型ロックスターとしてではなく、詩人として再評価しようとする姿勢も本作の大きな特徴である。彼の言葉、歌、ステージでの振る舞いは、すべて詩的衝動の延長線上にある。
ラストで実際のジムの墓を映し出す描写も含め、本作はジム・モリソンという誤解の多い人物の本質に迫ろうとした作品として評価できる。THE FINAL CUT版の4K UHD Blu-rayは、映像面以上にDolby Atmos音響の効果が大きく、ドアーズの音楽と時代の熱狂を再体験するには魅力的な一枚である。
総合スコア:89点 —— ジム・モリソンの破滅と詩情を、映像とAtmos音響で再構築したロック伝記映画の良質な4K版。
コメント