IN THE MOOD FOR LOVE(Blu-ray/CRITERION)/花様年華/輸入盤DVDで観た映画のレビュー

IN THE MOOD FOR LOVE(Blu-ray/CRITERION)

WORLD OF WONG KAR WAI Blu-rayジャケット 邦題 花様年華
レーベル CRITERION COLLECTION
制作年度 2000年
上演時間 98分
監督 ウォン・カーウァイ
出演 マギー・チャン、トニー・レオン、スー・ピンラン
画面 1.66:1/SDR
音声 dts-HD MA 5.1ch 広東語
字幕 英語

あらすじ

 1962年の香港。クーの経営するアパートに、同じ日にスーとチョウが引っ越ししてくる。スーには夫がおり、夫は日本人の上司のもとで仕事をしていたため、スーとは滅多に会えなかった。チョウは妻がいたものの、母の世話をするので離れて暮らしていて、チョウとの生活はしていなかった。隣同士になったスーとチョウは、最初は顔馴染みになり、次第にお互いを意識し合うようになる。しかし、お互いに家庭があるため、一線は超えていなかった。それでも生活上のパートナーが不倫をしていることを悟った二人は、次第に親密な関係になっていく。隠れて交際を続ける二人だったが、その関係は周囲の知るところとなり、二人はもう会わないことにする。そして、1963年にチョウはシンガポールに仕事で赴任し、スーも子供を授かって、クーの経営するアパートからは出ていた。その後、チョウはカンボジアに行き、遺跡で一人佇む。

レビュー

 2000年に公開され、「欲望の翼」からの発展させたストーリーとして、直接の関係はないものの、舞台設定が同様な大人のラブ・ストーリーが、この「花様年華」です。カンヌ国際映画祭でトニー・レオンが主演男優賞を受賞しています。評価も高く、Rotten Tomatoesの批評家評価は90%、観客評価は94%と、極めて高い評価を得ています。

 直接の関係はないものの、1962年の香港を舞台にしたラブ・ストーリーとして、1961年の香港が舞台の「欲望の翼」のその後の展開を彷彿とさせる物語になっています。それは大人のラブ・ストーリーであり、それも主人公二人には人生の伴侶がいる中での恋愛物語として、静かな愛情が盛り上がっているのを感じさせるほろ苦い物語になっています。

 スーには日本人の上司のもとで働く夫がおり、スー自身も会社で秘書の仕事をしています。夫がいない時には、夕食を作らないで、屋台のそばを買い求めてそれを食べるという生活を送っています。夫とのすれ違いの生活をしていますが、それでもスーにとっては大切な家庭生活であるといえます。一方チョウは新聞社で働いていて、妻は母の看病で実家にいるために一緒に生活していないという状況にあります。チョウはその生活には不満を持っています。それが、引っ越しでスーとチョウの部屋が隣同士になったことから、二人の愛情が芽生えることになります。

 二人は次第に愛を深めていきますが、そうなる要因の一つに、二人の伴侶が不倫していたのではないかという疑念があり、それがもとで二人の愛情が深まるきっかけになっています。ただ、伴侶が不倫をしているとはいえ、主人公二人の愛情は肉体的なところまではいかずに、精神的愛情に昇華されているところが、この映画の魅力を伝えていると思います。

 物語が優れていると思うのは、主人公二人の愛情が実らずに、チョウはシンガポールに赴任し、スーも子供をもうけてアパートを出ていたことです。ドラマ的に主人公二人の愛情が実れば、充足感はあるかとは思いますが、実らなかったために逆に物語の完成度が上がっているといえます。そして、時を重ねていき、チョウはカンボジアの遺跡で何かを語り、そこで物語が終わるところが、良い余韻を残しているといえます。

今回試聴した「花様年華」は、CRITERION COLLECTIONの「WORLD OF WONG KAR WAI」というBlu-ray BOXセットでリリースされています。4KマスターからBlu-rayの2Kマスターを作っていますので、解像度は十分にあります。色彩もよく出ていて、映像の魅力に満ち溢れています。室内のシーンが大半ですので、コントラストがくっきりしているとはいえないのですが、それでも映像の魅力をよく表していると思います。音響はdts-HD MA 5.1chサラウンドで収録されていて、室内のシーンが多いのですが、登場人物のセリフを周囲に散りばめることで、サラウンド効果を発揮しているといえます。トレードマークの雨のシーンでは、雨にずぶ濡れになる感覚が味わえます。

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