Apple TVとIMAX ENHANCEDの関係

Apple TVとIMAX ENHANCEDの関係

初めに

僕のこの映画のレビューサイトでは、しばしば「Apple TV IMAX ENHANCED」と言うキーワードで訪問される方がいる。該当ページは、カテゴリーとしての「Apple TV 4K」か、Disney+で配信されているマーベル・シネマティック・ユニバースの映画のレビューページになる。

ただ、キーワードとしての「Apple TV IMAX ENHANCED」が上記ページできちんと説明できているのか、と言う疑問は前から持っていた。それで、このページを使って、Apple TVとIMAX ENHANCEDとの関係を僕が知っている範囲で説明したい。

厳密な意味での「IMAX ENHANCED」とは

厳密な意味での「IMAX ENHANCED」とは何かというと、IMAX社が認定したAV機器を使って、IMAX社が認定したコンテンツを再生することをいう。IMAX社が認定したAV機器にしろ、コンテンツにしろ、ロゴとして「IMAX ENHANCED」が付与される。

IMAX社が認定したAV機器では、IMAXモードが搭載されるのが常である。テレビで言えば、65型以上の大画面であることが前提にあって、65型以上の大型テレビでIMAX ENHANCEDの認証を受けると、画質の調整モードにIMAXモードが追加される。IMAXモードは色の再現性が劇場のIMAXに似たような再現を目的にしている。イメージとしてDOLBY研究所のDOLBY VISIONのIMAX版だと思ったらいいかもしれない。

AVアンプの場合、IMAXモードが搭載されると、サラウンドデコードモードはdts:Xに設定され、なおかつ低音が従来のdts:Xよりもブーストされるモードになるようである。IMAX ENHANCEDではDOLBYの音響は対象外になっていることに気づいてほしい。

コンテンツは画面のアスペクト比が従来のワイドスクリーン2.39:1ではなく、IMAXの1.90:1に上下が広がるのと、音響がdts:Xになるという前提がある。

この前提を行った上で、Apple TVについて確認したい。

Apple TV 4KはIMAX ENHANCED認定機器ではない

前述の厳密なIMAX ENHANCEDの要件に照らし合わせると、Apple TV 4KはIMAX ENHANCED認定製品ではないことがわかると思う。Apple TV 4KはDOLBY DIGITALやDOLBY ATMOS、AACの再生には対応しているが、dtsには全く未対応だからである。これはApple TVだけの問題ではなくて、AmazonのFire Stick TVやGoogleのChromecast TVも同様にdtsに全く対応していないので、ストリーミングデバイスは厳密な意味ではIMAX ENHANCED未対応機器になる。

Disney+のIMAX ENHANCEDは妥協の産物

前述のようにApple TVやその他のストリーミングデバイスはIMAX ENHANCEDに未対応なのだが、実際問題、Disney+で配信されているマーベル・シネマティック・ユニバースの作品の多くはIMAX ENHANCEDと称している。この場合のIMAX ENHANCEDとは、単に画面のアスペクト比が1.90:1に拡張したものを提供しているだけの妥協の産物であることに留意する必要はある。ただ、2024年内にはDisney+はdtsによる配信を予定しているというので、dtsによる配信が始まったら、妥協の産物からIMAX社の定義するIMAX ENHANCEDに準ずるコンテンツになる可能性は高い。

Apple TVがIMAX ENHANCED認証機器になる可能性は薄い?

Disney+がdtsによる配信を始めると、IMAX社の定義するIMAX ENHANCEDに一歩近づくのだが、ではその時にApple TVがdtsのデコードに対応した新製品を出すのか、その際にIMAX ENHANCED認証機器になるのか、と聞かれると、よくわからないが可能性は薄いのではないかという気がしている。AppleはDOLBY研究所とは割と良好な技術交流を続けていて、iPhone 12 Pro以降動画撮影時にDOLBY VISION方式を採用していることからDOLBY研究所の技術は採用しやすいように思うが、dtsというサラウンドフォーマットを有するdts社はベンチャー企業でもあるし、一旦は映画産業から撤退した会社でもあるので、Appleとしても交流しようとするメリットをあまり感じていないのではないかという気がする。また、どのストリーミング配信サービスを見ていてもdtsのサラウンドで配信を行っているサービスがないこともメリットを感じられない理由の一つである。さらに、Disney+がdtsでの配信を始めても、現状のDOLBY ATMOSでの配信も継続するということなので、IMAX社の認証を受けずとも、最低限1.90:1のIMAXのアスペクト比だけは対応できていて、問題は少ないのではないかと考える。

結論

ここまで書いてきたことのまとめに入りたいと思う。

  • Apple TVはIMAX ENHANCED認証機器ではない
  • IMAX ENHANCED認証機器になるには、画質でIMAXモードを搭載することと、dtsの再生が不可欠になるが、今後のApple TVで対応する可能性は薄い。dts社との交流が現時点でないから。
  • Disney+のIMAX ENHANCEDは現状画面がIMAXの1.90:1で再生されるだけなので、妥協の産物でしかない。ただし、2024年中にdtsサラウンドによる配信を予定しているので、その時にはIMAX ENHANCEDの認証を受けた配信になる可能性は高い。
  • ホームシアターでIMAX ENHANCEDを真面目に取り組もうとすると、相当ハードルは高い。テレビが65型以上であることや、IMAX ENHANCED対応AVアンプを導入する必要がある。コンテンツも現時点ではかなり限られている。

以上のまとめから、現時点(2024年3月)におけるIMAX ENHANCEDとは、単に画面のアスペクト比が1.90:1になって2.39:1よりも上下の領域が拡大表示されるだけのものを指していることが多いのではないかと考える。これに対してはApple TVは対応しているので、IMAXの迫力はそれなりに楽しめるが、厳密な意味ではIMAX ENHANCEDには未対応というのが実情である。

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