『ブレードランナー』LaserDisc(輸入盤)レビュー|1982年劇場公開版をCriterion盤LDで再発見。低解像度が生むフィルムの質感【SD / SDR / PCM】
1982年に公開され、その後のSF映画に多大な影響を与えたリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』。
公開当時は興行的に成功しなかったものの、ビデオ化によって次第にカルト的人気を獲得し、現在では映画史に残るSF映画の傑作として評価されている。
今回鑑賞したのは、1987年にThe Criterion Collectionから発売されたLaserDiscである。ヨーロッパ・アジア公開版を初めてワイドスクリーンで収録し、CAV方式による静止画再生や特典映像も備えた、当時としては画期的なディスクだった。
4K UHD Blu-rayが存在する現在、あえて低解像度のLaserDiscで鑑賞すると、意外にもフィルムライクな映像の魅力が感じられる。解像度の低さが特撮の粗を目立たなくさせ、むしろ作品世界への没入感を高めているのである。
また、劇場公開版に収録されたデッカードのナレーションやハッピーエンドを改めて評価するとともに、後年のバージョンで強調される「デッカードはレプリカントなのか」という謎についても、興味深い発見があった。
『ブレードランナー』輸入盤 LaserDisc 基本仕様
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邦題 | ブレードランナー |
|---|---|---|
| 原題 | BLADE RUNNER | |
| レーベル | The Criterion Collection | |
| 制作年度 | 1982年(劇場公開版) | |
| 上映時間 | 118分(劇場公開版) | |
| 監督 | リドリー・スコット | |
| 出演 | ハリソン・フォード、ルトガー・ハウアー、ショーン・ヤング | |
| 画面 | 2.35:1 / SD / Letterboxed / SDR | |
| 音声 | PCM 2.0ch 英語 | |
| 字幕 | Closed Caption 英語 | |
| リージョン | LD=Region Free | |
| パッケージ | LD 2枚(本編 + 特典) |
あらすじ(短縮版)
2019年のロサンゼルス。タイレル・コーポレーションが製造した人造人間「レプリカント」が、過酷な労働環境から脱走して地球に潜入する。
レプリカントを処分するため、引退していた捜査官デッカードが呼び戻される。捜査を進めるデッカードは、タイレル社で出会った女性レイチェルが、偽りの記憶を植え付けられたレプリカントであることを知る。
人間とレプリカントの境界が曖昧になっていく中、デッカードは逃亡したレプリカントを追い続ける。しかし、その追跡は次第に「人間とは何か」という根源的な問いへとつながっていく。
あらすじ(詳細)
2019年のロサンゼルス。タイレル・コーポレーションは、ネクサス6と呼ばれるレプリカント(アンドロイド)を製造していた。
ネクサス6は知力、体力ともに人間を大きく上回る性能を有していた。そのため、ネクサス6は過酷な労働環境へと送り込まれていた。
その過酷な労働環境から何体かのネクサス6が脱走し、地球に逃れてきた。ネクサス6を処分するため、ブレードランナーと呼ばれる特殊警察が駆り出されることになった。
ブレードランナーの一人が、ネクサス6のレオンに対してレプリカントか否かを判定するテストを行っていたところ、レオンに襲撃される。
そのため、ブレードランナーを引退していたデッカードが、ネクサス6の処分のために再び駆り出されることになった。
ネクサス6の特性を調べるため、デッカードはタイレル・コーポレーションに赴き、タイレルの姪とされるレイチェルをテストする。
実はレイチェルはレプリカントの試作品であり、タイレルの姪であるという偽りの記憶を植え付けられていた。
レイチェルはデッカードとの出会いの後、自分の存在意義について不安定になり、デッカードに救いを求める。しかし、デッカードもレイチェルに対する態度を決めかねていた。
過酷な環境から脱出したレプリカントのロイ・バッティとレオンは、レプリカントの目を製造している研究所に入り込み、誰がネクサス6を製造したのかを聞き出す。
製造したのはタイレルであり、タイレルに接近するにはJ・F・セバスチャンに近づくしかないことがわかる。
J・F・セバスチャンには、レプリカントのプリスが接近し、親しくなっていく。
一方、デッカードはレオンが滞在していたホテルを訪れ、レプリカントが潜んでいる場所や名前などの情報を少しずつ調べていく。
その間にも、精神状態が不安定なレイチェルと次第にロマンスの関係になっていく。
見どころとテーマ
映画史に残るカルトSF映画の代表作であり、Criterion盤の名を有名にした作品
ビデオ化されているだけでも5つのバージョンが存在する、カルトSF映画の代表作。
ヨーロッパ・アジアで劇場公開されたバージョンを、初のワイドスクリーン仕様、シーンごとに静止画再生が可能なCAV仕様、映画をより深く知ることができる特典映像付きのLaserDiscとしてリリースした。
初期のThe Criterion CollectionのLaserDiscとして人気を博し、好セールスを記録した有名な作品である。
原作とは大幅に異なる設定、展開でありながら、「人間とは何か?」というテーマを共通して描く哲学作
原作はフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であり、本作はその映画化であるが、キャラクター設定やストーリーは大幅に異なっている。
しかしながら、テーマ自体は共通しており、「人間とは何か?」「人工知能が人間と同じ思考をするならば、人工知能を人間として認知できるのか?」という哲学的テーマを、どちらも描いている。
そして、AIが進化している2026年においては、映画が製作された1982年よりも、テーマ的にはふさわしい時代になっている。
東洋が西洋を侵食するディストピア的未来都市の描写
2019年のロサンゼルスを舞台にしているが、街は東洋の文字で埋め尽くされており、西洋の面影は薄く、東洋文化が西洋文化を侵食している様子が見て取れる。
また、絶えず雨が降り続き、太陽が出てもスモッグで光が遮られているところなどは、環境汚染を疑わせる設定になっており、絶望的な未来像を提示している。
それが2026年の現代にも適合している。
劇場公開版でも「デッカードはレプリカント」を示唆する描写がある
『ディレクターズ・カット』や『ファイナル・カット』では、監督のリドリー・スコット自身が「デッカードはレプリカントである」と発言しており、それを示唆するユニコーンの描写も挿入されている。
しかし、劇場公開版でも、写真にこだわるレプリカントの描写の一つとして、デッカードの自宅のピアノの前に家族の写真がいろいろと飾られている。
そこから、「デッカードもレプリカントである」という示唆が提示されているように感じられる。
ハリソン・フォードのナレーションはアリだが、ハッピーエンディングには違和感あり
改めて劇場公開版を視聴して、映画そのものをフィルム・ノワールとして見た場合、ハリソン・フォードによるナレーションはアリだと感じた。
しかし、スタンリー・キューブリック監督が撮影した映画『シャイニング』の未使用映像を流用したハッピーエンドは、作品の世界観を破壊していると改めて思う。
LDの解像度だからこそ可能な特撮の粗の隠し方
1982年製作の映画なので、特撮には粗があちらこちらに見られる。
しかし、LaserDiscの解像度がかなり低いため、特撮の粗が実質的に見えづらく、むしろ映画の世界観を再現するうえで、良い方向に働いている感がある。
Blu-rayや4K UHD Blu-rayでは解像度が高いため、CGで特撮の粗を修正した『ファイナル・カット』版を製作する必要に迫られたが、劇場公開版もLaserDiscであれば、その粗は目立たない。
LaserDisc 映像レビュー【480i / Letterboxed / SDR】
本LaserDiscは、1987年にThe Criterion Collectionからリリースされたものである。
ディスク2枚組のCAV仕様で、『ブレードランナー』のビデオとしては初めてワイドスクリーン・フォーマットで収録されている。
4:3のNTSC信号の中に、2.35:1のレターボックス形式で収録されている。
4Kテレビ側の表示を「ズーム」にして鑑賞したため、画面いっぱいに表示できる代わりに、実効解像度は4:3のフル表示よりもさらに低下する。
1987年製作のアナログビデオマスターということもあって、解像度は低く、色乗りも鮮明とは言い難い。
しかし、映画全編を通して見た場合、8mmか16mmのフィルムで映画を見ているかのような感覚に襲われ、解像度の低さや色乗りの悪さは、あまり気にならなくなってくる。
むしろ、解像度の低さや色乗りの悪さが特殊効果の粗を目立たなくさせており、映画に集中できる環境が整っていると言える。
マニア向けにCAV仕様で収録されているので、シーンごとに静止画として表示することが可能であり、製作スタッフが作り上げた凝った映像を細かくチェックすることができる。
また、CAV仕様のため、LaserDiscが持つ映像性能を十分に引き出しているのも特徴である。
画質に定評のあるThe Criterion Collectionがリリースした作品として見ると、LaserDiscの性能限界はあるものの、映画を鑑賞するという点では、意外なほど没入できる映像になっている。
映像スコア:78点 —— SD解像度と色彩表現には時代的な制約があるものの、フィルムライクな質感と特撮の粗を目立たなくさせる効果が、作品世界への没入感を高めている。
音響レビュー【PCM 2.0ch / Dolby Surround】
劇場公開時にはDolby Stereoだった音響は、このLaserDiscではDolby Surround 3-1chのサラウンドサウンドをマトリックスエンコードしたPCM 2.0chで収録されている。
AVアンプのDolby Surroundモードでデコードして視聴すると、臨場感豊かな音響が鳴り響く。
サラウンドチャンネルへの音の割り振りはそれほど多くないのだが、AVアンプのDolby Surroundが天井方向まで含めた擬似三次元サラウンド再生に対応しているので、LaserDiscに収録されたDolby Surroundも、シーンによっては天井方向に音が広がる。
そのため、映像を立体的に補完するサウンドデザインになっている。
特に雨の降る音や雷鳴、デッカードが持つ銃の発射音などは三次元的に音が広がり、臨場感がかなり高い。
音質も、1987年のLaserDiscのデジタル音声である16bit/44.1kHzという制限を踏まえても、かなり良い。
低音の響きこそあまりないものの、音が伸びている印象は強い。
有名な日本語のSEである「誰か変なもの残していったぜ」や「誰かからのプレゼント」といった効果音も明瞭に聞き取れる。
このあたりも、本作を鑑賞する楽しみの一つである。
音響スコア:85点 —— 1987年のPCM音声とは思えないほど明瞭な音質。Dolby Surroundによる空間表現も効果的で、現代のAVアンプによって作品の臨場感がさらに高まっている。
総評
『ブレードランナー』は、少なくとも5つのバージョンがビデオ化され、そのバージョンごとに監督であるリドリー・スコットの意向が反映されたり、されなかったりと、ファンの間でも議論を巻き起こしている作品である。
最初の劇場公開時にはヒットこそしなかったものの、ビデオ化されたことで、次第にカルトSF映画として人気を博していくことになった作品である。
今回視聴したThe Criterion CollectionのLaserDiscは、『ブレードランナー』のビデオとしては初のワイドスクリーン仕様であり、マニアが細かく画面をチェックできるCAV仕様でもある。
また、アメリカでは上映されなかった暴力シーンがきちんと収録されている、ヨーロッパ・アジア公開バージョンでもある。日本では、ビデオ化の際に「完全版」と称していたこともある。
The Criterion Collectionは、独自のテレシネ技術によって、LaserDiscとしては高画質・高音質で映画を提供することに力を注いでいたレーベルである。
この『ブレードランナー』もご多分に漏れず、LaserDiscとしては高画質・高音質で提供され、人気を博している。
映画はフィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作にしているが、設定やストーリーは大きく異なっている。
しかし、作品が持つ「人間とは何なのか?」という問いには、真正面から向き合っている哲学的な映画である。
そして、『ディレクターズ・カット』以降、監督が主張している「デッカードはレプリカント」説は、このヨーロッパ・アジア公開版でもいくつかのシーンで示唆されており、すでにその説を裏付ける要素が内包されている。
LaserDiscなので、4K UHD Blu-rayと比較すると画質や音質に制限はあるものの、映画として鑑賞した場合、作品を十分に堪能できる点は評価したい。
特に、低解像度であることが特撮の粗を目立たなくさせ、かえって作品世界への没入感を高めている点は、現代の高解像度メディアでは得難い魅力である。
総合スコア:90点 —— 映画史に残るカルトSFの傑作を、1987年のCriterion盤LaserDiscで再発見。映像・音響には時代的制約があるものの、劇場公開版ならではの魅力と、フィルムライクな映像の質感を存分に堪能できる貴重なディスク。
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